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自分を更新する

 鼻がシュッと高いバービー人形にも、こぼれんばかりの大きな瞳を持つブライス人形にもなれない。そんなことはもう10年以上前から知っている。

「わたしの顔ってこんな感じ」という自分なりの理解も進み、自分比「最近悪くない」。アラサーになったこの顔は我ながらいい感じに仕上ってきた。モデル時代はランニングにキックボクシング、乗馬、ファスティングに糖質制限……ありとあらゆるダイエットをしたし、8年通う骨格矯正、エステに皮膚科、歯のホワイトニングに酵素浴、とありとあらゆる課金もしてきた。最近は自分の顔と理想に折り合いをつけて、わりと機嫌よく生きている。

 でも、なんだかふと、「自分が実現できる範囲の」理想に飽き飽きしてしまった。例えば、抜けるような白い肌だったら。もっと下睫毛がふさふさだったら。小さな鼻が彫刻のようになったら。アイメイクをするときになんとなく邪魔な蒙古襞がなかったら。いくらでも思いつくけど「私はもうそういうのはやめたの」と格好つける私と、「もっと目がおっきかったらいいのにナァ」とため息をつく正直な私、両方を心に棲まわせている。

 ずっと格好つけた私のことを優先させてきた気がする。しかし、今の自分は過去の自分へのアンチテーゼとして生きていると言って過言でない今日この頃。一線を超えたら、もっと気分良くいられるかもしれない。

 なにもこのつぶらな奥二重を、今更ぐりぐりの大きな平行二重にしたいわけではないけど、あと2ミリほど。矯めつ眇めつ、久しぶりに自分の顔を眺めてわくわくして、夕方には美容整形外科に電話をかけていた。予約は明日のお昼時。勢いが大事だ。

 ドアをくぐるとプールみたいな消毒液の匂いがした。ここが病院の入ったビルだからではなく、きっとコロナ対策なんだろうなと思い当たったところでエレベーターが閉じた。

(カウンセリングから、ばちぼこにお金の話なので有料にします🔑)

 カウンセリングに進み、目頭切開お願いします!と元気よく伝えると、「なるほど……気になるのはまぶたと鼻筋ですけどね」と返される。なるほど、これが整形のカウンセリングか。

 私はモデルを目指していた段階から、モデルだった時代まで、いやというほど穴があくほど自分の顔を眺め倒したから、こんなジャブには「そういう視点もありますね?」くらいに流せるけど、顔にコンプレックスをもって整形に臨むメンタルの人はずたずたにされそう。みんな私くらい強いメンタルで臨んでほしい。結構このちっちゃい鼻先だけツンとした鼻、可愛いですけど?

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