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いつまでも輝くあなたに。

2年ぶりの現場のお話。

コロナ禍で中断されていたダンスの祭典。
私は長年、そちらでメイクを担当させていただいている。ダンスにもいろいろな種類があるが、こちらは社交ダンス。私も大昔にプロの先生と踊っていたものだ。

社交ダンスといえば、年配の方が楽しまれているもの、みたいなイメージをお持ちの方もいると思う。しかし実際は、大学生で本格的に競技として取り組んでいる方がいたり、小さなお子さん達が真剣に取り組まれていたりなどかなり幅広い層の方が楽しんでいるもの。そして私もかつては楽しんでいたひとり。ダンスシューズを履かなくなって既に10年以上が経ってしまったけれども。。

踊る側から魅せる側へ。通っていたお教室の先生から
「うちのパーティーのメイクをやってみない?」
とお声掛けいただいたところからはじまり、いろいろなお教室のメイクを担当させていただいたり、大きなイベントのメイクを担当させていただいたりしてきた。お客様の中には私のメイクを気に入ってくださる方もいて、県内のあちこちで開催されるイベントに指名をいただいて出向いたりもする。
社交ダンスはいくつになってもチャレンジできる、楽しめるスポーツ。
そしてメイクをする前とあとでは大変身。
皆さんが本番できらきら輝くこの現場が本当に好きだった。

2020年の2月終わり頃から、コロナの影響で人と接するこのダンスも影響を受け始めた。毎年3月に開催される祭典、イベントが軒並み中止に。そこから一気にイベントやパーティー、発表会などがなくなった。

「どう過ごされていますか?」
仲の良かった先生や生徒さんとやり取りをした。皆さんレッスンに通えなくなり、太っちゃったよ、とか、生きがいがなくなっちゃったよ、などと話していた。そうか。。ああ、悲しい。。
みんなダンスを生きがいにしていたのだ。
普段は腰が曲がり気味の方も、曲がかかるとシャキッと背筋が伸びる。表情がキリっと変わる。そう、このダンスには切り替えスイッチみたいなものが入る瞬間があって、皆さんは「演じ手」に変わるのだ。

そんなところから約二年ぶりの現場。
前日は嬉しくて嬉しくてよく寝れなかった。道具をひとつひとつ、丁寧に磨いて、本当に久しぶりに会える皆さんの顔を思い浮かべた。

「おはようございます!」
メイク道具を両手に抱えながら地下のリハーサル室に入る。
「あら~、お久しぶりです、先生♪」
わ~。。先生、と呼ばれるのも二年ぶりだった笑。
現場はソーシャルディスタンスを意識しながら賑わっていた。
皆さん久しぶりのパーティーで本当に嬉しそうだった。
そんな皆さんの笑顔を見ていたら、なんだか私まで嬉しくなる。

「さあ、こちらにどうぞ」
いつもご指名くださる方、はじめましての方。
「ドレスはどんなお色ですか?種目はなにですか?」
おひとりひとりに尋ねる。ドレスのお色、出る種目、そしてその方の雰囲気やまなざし、「はじめて出るんですぅ」と恥ずかしそうな姿、いろいろな角度からその方が舞台にあがる姿をイメージする。
スポットライトを浴びて、その方が一番輝く瞬間。。それを自分の中に落とし込むのだ。

そわそわしながら椅子に腰かけていたお顔がみるみる変化してゆく。
背筋が伸び始める。緊張や疲れでくぼんでいた頬や瞳が輝きはじめる。
鏡を見つめる表情が変わる。ああ、この瞬間いつも感じること。
女性はいくつになっても女性なのだ。
そして女性はいつまでも美しいのだということ。。

「私、今年でもう80歳になっちゃうのよ」
いつもご指名いただく女性からの一言。当然ながらとても80歳になる方とは思えない美しさ。。
ご本人いわく、なんでも70歳くらいまでは病気を繰り返し、だれが見ても本当にお婆さんだったそうだ。それが社交ダンスと出会い、人生が180度変わったと話してくれた。
「お孫ちゃん達が見に来てくれるからきれいにしてね」
嬉しそうだ!社交ダンスをはじめてから変化したお婆ちゃんが好きだとお孫ちゃん達が言ってくれるそう。そしてそんなお孫ちゃん達も、楽しそうなお婆ちゃんを見てダンスを始められたと話してくれた。
そんなお話を伺うことができるのも、この仕事をしていて最高の時間。。

「いつも通り美しくさせていただきますよ」
私はそうお伝えして、ブラシを持つ手に想いを込める。
アイラインのペン先に願いを込める。
もう逢えなくなってしまった方々もいる。
いろんな想いを抱きながら、皆さんの人生にこうしてこの瞬間に彩を添えられるお手伝いができることに、深い感謝の想いを込めながら。

人はいくつになっても輝くことができる。
そして輝き続けることができるのだ。
チャレンジは自分自身にも、周りの人々にも、輝きと至福の時をもたらせてくれるもの。
さあ、今日はどんなチャレンジをしてみようか。

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