毒を捨てることは出来るのだろうか
金曜日です.一週間お疲れさまです.さぁ,リクエスト企画第5弾.感謝しかありません.今回はペンギンさんより『毒』というテーマをリクエストいただきました.ありがとうございます!『毒の寄せ集めセット』をご提案しましたので,毒をテーマに色んな短文エッセイを寄せ集め形式でお届けしたいと思います.
毒の定義は「生命活動に不都合を起こす物質の総称」だそうな.
さて,参ります.
***1:毒を生む***
人間とは非常にやっかいな生き物で
自分で作った毒は誰かに受け渡さないと生きていられないらしい
毒が生まれるきっかけは人それぞれで
毒の受け渡し方も人それぞれである
受け取った毒の感染力は強く
生んだ時よりも酷い毒になって人を蝕む
「あの人,なんだか毒気が無くなったよね」
そう見る人はまだ知らないのであろう
受け渡した毒が自分の中にも残り続けていることを
その毒を小さくできても完全に消すことはできないことを
***2:毒の鱗粉***
意外にも毒の鱗粉を持つ蛾はいないらしい
体毛に毒があり,刺さることで症状が出るらしい
鱗粉にはそもそも毒があるケースは少ないらしい
「毒蛾の鱗粉」と見ると毒を撒き散らかして飛んでいるイメージがある
誰がそんな勝手な蛾のイメージを作ったのだろう……
人の方がよっぽど「毒蛾」のイメージ通りに生きている
毒の鱗粉を撒き散らかして生きている人はまさに毒蛾だ
「毒を吐く」という表現は毒蛇によく似あっている
人の毒には具体的な「致死量」はないけれど
その毒が原因で人が死ぬことはある
これを毒殺と言わずに何と言うのだろう.
種の生存競争から解き放たれたにも関わらず
身に着けてしまったその力は
一体何の役に立っているのだろうか
***3:呼吸***
マスクをつけないと生きていけない世界
初めて見たのは「風の谷のナウシカ」の腐海の世界だった
その腐海と共に生きる彼らは
今生きる誰よりも生命に満ち溢れていた
世間はマスクをつける人が増える季節になった
乾いた空気を吸いたくない人
穢れた空気を吸いたくない人
菌を吸いたくない人
素顔を晒したくない人
死にたくない人
生きたい人
これらが生命活動に不都合を起こす物質なのであれば
世界のありふれた空気は腐海の毒と大きく変わらないのだろう
それでも呼吸し,命は続いていく
たとえ身体が毒されようが,その毒と共に生きていくしかないのだ
***おしまい***