デジタルの時代、マクロ撮影においてどれだけ大きく写るかは、レンズの撮影倍率だけでなく、dpi的な数字が必要なんじゃないかと思ったので色々書きます
しばらく塩漬けにしていたこの投稿ですが、今日、ちょうど良い記事を目にしたので、これを機会になんとか書き上げてリリースすることにします。
デジカメWatchの記事
カメラ用語の散歩道
第17回:像倍率と撮影倍率(後編)
豊田堅二 2023年5月2日 08:00
撮影倍率の定義から、そのとおりでしょう。
しかし画面サイズという表記は語弊があると思います。撮像面の大きさというのが適切ではないかと思います。
前編を読んでいないのでわかりませんが、前編で定義について触れたに違いありません。従いまして、ここでは撮影倍率の定義については述べません。
写真を扱う際に、フルフレームを適切なサイズで鑑賞するという考え方があると思います。そのような場合、撮像面の大きさは重要ではないでしょうか。
画面サイズでは混乱しますので、撮像面のサイズと読み替えたいと思います。
どこまで近づけるか、も間違いではないと思います。
例えば、50mm 標準レンズ。今の時代、これを標準と言って良いかわかりませんが、NIKKOR の 50mm レンズを比較してみようと思います。
NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
最短撮影距離:16cm、最大撮影倍率:1倍
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
最短撮影距離:40cm、最大撮影倍率:0.15倍
近づけばよいというものではないと思いますが、どこまで近づけるかは、焦点距離が同じ場合には、どれだけ大きく写せるかを判断する材料になるでしょう。つまり、マクロ性能を売りにするカメラの場合は、謳い文句として使えるだろうと思います。
近づいても大きく写らないレンズなんか、あるのでしょうか。
クレームを言ってきたユーザーは、前に使っていたレンズと比べて、より近づかないと思った大きさに写らない、とか、そんな意味で言ったのではないかと思います。
インナーフォーカスレンズの場合、全群繰り出し方式のレンズと比べて、レンズ本体が長くなりがちと思いますので、そのように感じてもおかしくないと思います。
インナーフォーカスレンズは、ワーキングディスタンスが短くなりがち、ってことですかね。
実際、ある 60mm マクロと インナーフォーカス式の90mm マクロの1:1撮影時のワーキングディスタンスは、それぞれ、8.2cm と 9.3cm です。
1cm くらいしか違いません。60mm から 90mm で、1.5倍とはならないのです。
露出倍数に関しては、そのようなものがあるというのは知っていますが、記事を読んで混乱しています。
言っていることが理解できないと思ったのですが、これ↓が正解でしょうか?
レンズを繰り出した分撮像面が遠ざかる。
レンズを繰り出したときに遠ざかるのは、光源ではなく撮像面ではないかと思います。「光源」ではなく「被写体」。
また、被写体を光源と考えると良いという話から光源という表記になっていますが、直前で被写体に戻っていますので、ここは被写体と言わないと読者は混乱しますよね。
最近自分がよく使っているマクロレンズは、インナーフォーカス方式ですが、近接撮影時には、F値が大きくなります。
インナーフォーカスレンズでは、露出倍数をかける必要はないと言っていますね。
夢のようなレンズです。
インナーフォーカス式マクロレンズの露出倍数
例として、M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO をとりあげようと思います。
このレンズには、撮影距離範囲別に3つのモードがあります。
・S-MACRO
・0.25-0.5m
・0.25m-∞
S-MACRO とそれ以外の実効F値には、次のような違いがあります。
(3つのモードに共通の撮影倍率だけ取説からピックアップ)
撮影倍率 S-MACRO それ以外 露出倍数
0.25x F5.0 F3.5 0
0.5x F5.6 F4.0 +1/3
1x F6.3 F4.5 +2/3
露出倍数と書きましたが、メーカーは露出補正段数と言っています。
このレンズの場合、無限遠から0.25倍の近接撮影までは露出倍数を気にしなくて良いとわかります。
それを超える倍率ではどうでしょうか。
露出倍数の公式は↓
露出倍数=(1+撮影倍率)の二乗
1xのときを計算してみます。それ以外という項についての計算です。
セオリーどおりであれば、
露出倍数=(1+1)の二乗
2の2乗なので、4です。
倍数で4は、2段に相当します。というか、(1+1)そのままですかね。
実際には、+2/3段、F4.5となっています。
F値と段数の関係式
F:F値
n:段数(F1.0基準の段数)
$$
n=\log_2(F^2)
$$
$$
F=(\sqrt{2})^n
$$
2段絞るという場合は、計算が複雑になります。
元のF値をF1.0基準の段数に変換して、2段の2を加えます。それを冪指数としルート2を底とする冪乗を計算すれば、それが絞ったF値となります。
何を言っているかわからないでしょうから、LibreOffice Calc で作りました。
間違っていたら言ってください。黙って修正して使っても構いません。
無責任モードです。
このレンズは、開放F値が3.5なのですが、S-MACRO の場合は、F5.0と暗くなります。
切り替えたとき、あたかも内蔵のエクステンダーが挿入されたような感じを受けます。全く別のレンズになったかのような印象です。
S-MACROでも0.25倍や0.5倍のレンジでの撮影が可能ですが、通常のモードの方が明るいので、撮影距離に合わせて切り替えるのが得策と思われます。
S-MACRO の1.5倍と2倍については割愛します。
詳しくは、取扱説明書の JP 5 ページ(date of issue 202.10)を参照してください。
以上のことから、インナーフォーカスレンズだからといって露出倍数をかける必要はないと言えるのではないでしょうか。
マクロ撮影の拡大性能は、使用するカメラとの組み合わせで考えたい
冒頭に貼った記事の筆者は、「要は撮影倍率なのだ。」などと言っています。しかし、自分は、レンズの撮影倍率だけではなく、カメラのスペックも考えに入れる必要があるのではないかと思っています。
要は撮影倍率なのだ、と言えたのは、フィルムの時代ですよね。今は、デジタルの時代です。画像データはスケーラブルであり、形のあるフィルムに定着した像とは違います。昔とは見方を変える必要があるのではないでしょうか。
まずは次の要素を考えたいと思います。
・レンズの撮影倍率
・撮像フォーマット(フルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズ)
・画素数
撮像フォーマットと画素数は、合わせて画素密度とも言えるでしょう。
そこで、指数として
レンズの撮影倍率×画素密度
のようなものを定義したいと思います。
倍率という観点では、
レンズの撮影倍率×鑑賞サイズ(表示倍率)
でも良いかもしれません。
もっとも、モニターに表示すれば顕微鏡レベルの数百倍といった倍率での鑑賞も可能です。そのように言ってしまうと混乱しますので、ここでは、鑑賞サイズではなく、あくまでも画像データを同じドットピッチで比較することを考えようと思います。
画素密度を計算してみる
画素密度は、要するにdpi的な数字になります。
dpi は "dots per inch" の頭字語です。inch が国際単位系ではないので使うのを躊躇します。そこで、mm を単位としてみました。
ある2000万画素クラスのマイクロフォーサーズカメラの場合
水平方向の17.4mm に5184画素が並んでいますので、
5184 ÷ 17.4 ≒ 298(px/mm)
あるメーカーの4500万画素超えのフルサイズ機の場合
35.9mm に8256画素が並んでいますので、
8256 ÷ 35.9 ≒ 230(pix/mm)
この数字がセンサーの画素がどれだけ細かく並んでいるかを表します。
これにレンズの倍率を掛けた数字で表すのがよいのではないかと思います。
等倍なら、上の数字そのままです。2倍なら、2を掛けます。
その数字をなんと呼ぶべきかは、アイデアがありません。思考停止状態です。
写真から被写体の大きさを求める
上で述べた画素密度がわかれば、被写体の大きさは次の式で求めることができます。
被写体の大きさ(mm)=被写体の画素数÷画素密度
フィルムは実体のあるものなので、フィルム面上の被写体の寸法を直接物差しではかることができます。そこに撮影倍率が与えられれば、それを掛けることで被写体の大きさがわかります。
しかし、デジタルデータの場合は、物差しを当ててもそれが実際の寸法かがわかりません。撮影倍率がわかっても、どんなカメラを使ったかの情報がないとわからないのです。
メタデータから何か情報を得ることが可能でしょうか。
イメージサイズ、イメージのDPIという項目がありました。
DPIは350ピクセル/インチとあります。これは印刷用のDPIですね。
他に使えそうなのは、製造元、機種名、レンズ名でしょうか。
しかし、肝心のセンサーサイズがありませんので、どこか別なところから情報を入手する必要があります。
そもそも肝心のレンズの撮影倍率もありません。
よって、写真から被写体の大きさを求めようとする場合には、倍率を固定して撮影してそのことをメモしておくことになりそうです。
被写体の大きさを計算する元になる指数をデータとして添えることができれば、被写体の大きさを求めるのが便利になるだろうと思います。
もちろん、デジタルデータは、手軽に加工することができますので、拡大縮小やトリミングの加工を施した場合には、その旨を、画像に添えるべきなのかなと思います。
でも、現状、それは面倒臭いと思います。
リサイズしたときに、画像処理ソフトがメタデータに埋め込んでくれると良いのですが。
と、ここまで考えて、撮影範囲でも良いと思いました。むしろ、その方がよい気がします。
画面の水平方向が何ミリであるかが写真に記録できたらよいのではないでしょうか。
マイクロフォーサーズの場合は、1:1で撮影したら、17.4 mmとなるわけです。
もうこうなったら、スケールを写し込む。それが一番楽かもしれません。
以上、結局、撮影範囲がわかれば良いという話になりました。
いや、そういう話ではありませんでした。
マクロ撮影の拡大性能を評価するには、レンズの撮影倍率だけではダメだという話でした。撮影範囲が分かっても、そこにどれだけの画素数が含まれているかわからないといけません。ドット・バイ・ドットという同じ基準で見たときに、どれだけ大きく写るかが重要です。
見出し画像について
見出し画像は、マルトビムシです。
最大倍率で撮影しました。
この記事の趣旨から外れますが、画素密度を計算してみます。
5184 ÷ 17.4 × 4 ≒ 1192(px/mm)
トリミングしただけで、拡大・縮小はしていません。水平方向が 1280 px あります。
マルトビムシは、お尻が切れてしまっていますが、大体、見出し画像の幅くらいの大きさでした。
画素密度を見たら体長1 mmくらいとわかります。
t.koba