
【火星】ギリシャ神話のアレスとローマ神話のマルス
占星術では火星は土星と並ぶ凶星(マレフィック)。火星は争いと不調和、土星は試練と困難をもたらすとされています。
火星は「バビロニアでは死と病の神、エジプトやローマでは軍神、中国では人心を惑わせる星」とある本に書かれていました。
※歴史を揺るがした星々-天文歴史の世界-(作花一志/福江純・恒星社厚生閣)
火星はギリシャ神話ではアレス、ローマ神話ではマルス。ギリシャ神話のアレスに対応するのがローマ神話のマルスですが、このふたりの印象はかなり異なります。
ギリシャ神話のアレスはゼウスとヘラの子。アフロディーテの愛人として知られますが、あまりよいエピソードがありません。戦いの神アレスは、戦闘時の狂乱を神格化したものとも伝えられ、父ゼウスからも知性に欠けるとうとまれていたらしいです。ゼウスのお気に入りは戦略の神アテナ(占星術ではパラス)です。都市の守護者アテナの戦いは都市の自治と平和を守るためのもの。一方の軍神アレスは血生臭い暴力が主体で、かなり好戦的。偉大な哲学者を多数輩出したギリシャ人たちはこのような荒ぶる神を野蛮として好まなかったようです。
一方のローマ神話のマルスは軍神であるとともに農耕の神。勇敢な戦士、雄々しい若者として主神ゼウスと同等に崇拝され、愛されました。
実はマルスは古くからイタリア全域で知られた最も偉大で重要な軍神でした。紀元前6世紀頃にホメロスの世界がローマに伝わり、ローマ神界の最高神はユピテル(ゼウス)になりました。さらに紀元前3世紀頃から始まるギリシャ文学の翻訳により、ギリシャで不人気なアレスの影響を受けたと思われます。
ローマ建国神話では王政ローマの初代王ロムルスは軍神マルスとウェスタの巫女シルウィアの子。建国までには、双子の兄弟レムスとの権力闘争、養父ファウストウルスの死、ロムレス自身によるレムスの殺害と色々あり、紀元前753年4月21日に新都ローマが誕生したとされています。ロムルス18歳の春のことでした。
※ウェスタはギリシャ神話のヘスティア。占星術ではヴェスタ。
ローマ暦の新年は農耕の始まる3月に置かれていて、3月Marchiはマルスの月が由来とされています。Martial(戦争の、軍人らしい、勇敢な)もマルスが語源とのことです。