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#2 エクソシストに670体の悪魔を祓ってもらった話
悪魔祓いが始まりました。
わたしは先生と向かいあった状態で座って、
何となく目を閉じました。
自分の意思でなのか、自分以外の何かが
そうさせたのかは分かりませんが、
最初に閉じたその目はお祓い中ずっと、
開くことはありませんでした。
先生「なぜその者に取り憑いておる!?理由を言え。」
先生が悪魔に問いかけます。
わたしはうめき声をあげながら泣いています。
ー先生の声がさっき話してた時と全然ちがう!
声色も口調も、呪術廻戦の両面宿儺の雰囲気だ!ー
いくら自分よりも格下の悪魔が相手だとはいえ、
先生にとっては命懸けの仕事です。
そんな状況にもかかわらず、
先生の声が両面宿儺だ!なんて思っていられるぐらい、
わたしの頭の中はいたって平和でした。
これはお祓いが終わってから知ることになるのですが、
先生はわたし自身にダメージが行かないよう、
力を微調整しながら悪魔を祓ったそうです。
わたしがお祓い中にここまで
気持ちに余裕を持っていられたのは、
先生の技術と配慮の賜物だったのではないか
という気がしてなりません。
全ての悪魔を祓いきるまでにだいたい
30分〜40分程度かかったのですが、
わたし自身へのダメージを一切考えなければ、
おそらく瞬殺だったことでしょう。
先生「わしに勝てると思っとるんか?早く答えろ。」
繰り返される先生の問いかけに悪魔は答えることなく、
泣き叫んだり沈黙したりを繰り返します。
ーねえなんか言ってよ悪魔。
なんで憑いてるのかわたしも知りたいんだけどー
わたし自身も、
わたしの意識の中で悪魔に問いかけてみました。
そんなことができるほどに意識ははっきりしています。
泣いたり、体をフラフラ動かしたりしているのは悪魔です。
私の意思では、そのような言動はコントロールできません。
そして、悲しい、怖い、苦しい。
そんな感覚も確かに感じます。
そしてこれらは、自分自身の感覚ではない。
という認識も同時にあります。
ですがその一方で、
能天気に先生の声が両面宿儺だなんて
考えているわたしの意識が確かに存在していました。
そこに制限はありませんでした。
どんな気持ちになるのも完全に自由です。
1人の人間の肉体の中に、
わたしと悪魔が共存しているという、
本当にふしぎな感覚でした。
ここまでで10分は経ったでしょうか。
いつまでも口を割らない悪魔に対する、
先生の問いの雰囲気が変わりました。
先生「いつまで粘るつもりか。大人しくこっちへ来い。」
すると悪魔は急に笑い出しました。
悪魔「あはは えへへっ あはぁー ははははは
あははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははは
あーっはっはっは ははははははははははははははははははははははは」
ーえっなにこれ。ホラーすぎる...ー
意識の中のわたし、完っ全にドン引きです。
慣れ親しんだ自分の声が、
知らない誰かの笑い声になって不自然に響きます。
声帯や喉、口の中や頭蓋骨に響く音の感じ。
全てに違和感。気持ち悪い。
その笑い声は徐々に変化していきました。
悪魔「かっかっかっかっかっかっかっかっかっかっかっかっ」
文字で表現するにはどうしても限界がありますが、
いかにも悪役っぽい、不気味で乾いた笑い声です。
そうして悪魔が笑っている間にも、
先生の問いかけは続きます。
ずっと目を閉じていたので、
先生が何をしているのかは見えていないのですが、
このあたりで場の空気が変わったのを感じました。
何かのセリフで、
「奥歯ガタガタいわせたろか!」
みたいなフレーズがあるじゃないですか。
今まで生きてきて知らなかったのですが、
奥歯って、本当にガタガタいうんですよ。
ついでに言うと奥歯だけじゃなく、前歯もです。
突然あご全体が小刻みに激しく動いて、
ガタガタと音をたてはじめました。
さっきまでご機嫌に気持ちよく笑っていたのに、
急にひとりブラックホールに放り込まれたような、
底なしの不安と恐怖を感じました。
ーもしも呪術廻戦の世界が実在して、
五条先生の無量空所をくらったらこんな感覚なのかなー
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