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ウマ娘で学ぶ競馬史 #30 渇望の果てに (2010)

みなさん、ウマ娘やってます?
デアリングタクトのウマ娘化、地方競馬場の実装、ワンダーアキュートおばあちゃん概念、数々のネタが投下されていますね。ワクワクですわ!

ワクワクですわといえば、夏イベは美人ゴルシとマックイーンの日常(?)とナカヤマが好評でしたね。
美人ゴルシは漫画『STARTING GATE』からの逆輸入でしょうかね。元ネタくんも動かなかったら美男ですからね。解釈一致です。
それにしてもナカヤマの女性人気がすごい気がしてるんですが、気のせいでしょうか。


何を隠そう今回はナカヤマ回。筆者的にも大好きなウマですが、史実を知ると更に5兆倍好きになれます。
その生涯には、ウマ娘にもなった“あの馬”との意外な関連性があるのです。


それでは本編の前にちょっとした小ネタ解説から。

ウマ娘がもっと楽しくなる余談

結論から言いますと「今回と次回の競馬史はエイシンフラッシュの育成シナリオを見てるとより楽しめるぞ」ということです。
引いてない方はおニュイ(VTuber)の実況とか見て。俺も引けなかったから見たよ。泣いてもいいかな


現在、ウマ娘という媒体の中で史実が再現された、もしくはされる予定となっているのは、

  • オグリキャップ時代(シンデレラグレイ)

  • TM対決(アニメ2期)

  • ブルボンとライス(同上)

  • BNW(アニメとアプリシナリオ)

  • ブライアンとマヤノ(一部。アプリシナリオ)

  • ローレルと古馬三強(ローレルコミカライズ)

  • エルグラスペ最強時代(アニメ&アプリシナリオ)

  • 99世代牡馬三冠とオペトプロ古馬(アニメ)

これだけです。1988〜2000年まではだいたいウマ娘で学べます。(ダンスインザダークとかバブルガムフェローは抜けるけど)

残りの時代はアプリにて各ウマ娘の育成シナリオでやんわりと学び、それを補填するようにこの競馬史シリーズを読むか、wikiを探るか、YouTubeやサイトを探るかしないといけません。


でもなんか妙に解像度の高い育成シナリオが点在してるんですよね。例を挙げるならキタサンブラックとかカワカミプリンセスとか。

キタサンはドゥラメンテ(ブリュスクマン)という影と戦いながらみんなの愛バになる物語、カワカミはスイープがぶち壊した牡馬と牝馬の壁を乗り越えて“女王”として君臨するための物語。

どのシナリオも「時代の風潮」や「馬の立ち位置」を暗に示しながら、それを打ち砕き頂点を目指すサクセスストーリーになってます。で、だいたいのシナリオでキングヘイローの株が上がります。なんで?


エイシンフラッシュの育成シナリオはそういうのとはベクトルが違うのですが、解像度の面だけならHDです。

フラッシュのシナリオには数多くの有名(?)ウマ娘たちがレースに登場。
「これだけハイレベルな戦いを前にすると、いても立ってもいられなくなってね」という文脈で色んなウマ娘が参戦します。スペ、カフェ、ロブロイなど多数。

こちらがシナリオに出てくる女帝さんなんですが…なんか変なスキル付いてますよね…
この他にも追込マックや追込フジキセキなど、謎の魔改造を遂げたウマ娘たちが続々登場。

これは端的に言えば「何者かの代役」としての出走です。なにはさておきフラッシュ育成推奨。


ってことでナカヤマ&フラッシュ回、始めます。


2010年の中央競馬は、これから始まる全盛期の前触れのような年であった。

翌年は“アレ”のせいで売上がガクッと落ちるため、純粋なバフ/デバフ無しの売上だと過去最低の年になるが、それでも内容はこれからの希望に溢れていた。
長い長いトンネルは、ようやく終わろうとしている。


ディープインパクト初年度産駒のデビュー年。そんなアイコニックな出来事も吹き飛ばすほどの名場面の連続。
なんせこの年のクラシック世代は…

“最高”の世代

過去最高にハイレベルな世代」であると云われた。
GIをいくつ勝ってもおかしくない、素質馬だらけのクラシック戦線。
後世になってそれが茶化されることも無く、真実として残っている。

本稿で紹介するのは、その証拠の断片である。


阪神JF

トニービン、ブライアンズタイム、サンデーサイレンス。90〜00年代前期はこの「種牡馬御三家」の産駒が暴れ回った。それぞれ代表馬を挙げるならエアグルーヴ、ナリタブライアン、スペシャルウィークあたりになるだろうか。
しばらくしてサンデーの一強時代になり、残り2頭は母の父として血統表に名を残す形に。

そして10年代は「新・種牡馬御三家」が現れる。
それがキングカメハメハ、ディープインパクト、ハーツクライだ。(※個人的に提唱してるだけなので常識だと思わないよう注意)

ステイゴールドを含めて四天王、ダイワメジャーも入れて五傑にしてもいいが、クラシック戦線はだいたい三強の間で競り合う形になるし、時々ステゴ産駒が問答無用で殴り込んでくる。

新御三家も旧と同じく、初年度産駒のデビュー年がややズレている。08年キンカメ、10年ディープ&ハーツ。(そして05年ステゴ、07年ボリクリ、08年ネオユニ、11年メジャー)

初年度からGI馬を2頭も出したネオユニヴァースに続くかのように、この馬の産駒がついに栄光を掴む。

キングカメハメハ産駒、アパパネ
ついに2年目でGI馬が誕生した。

4コーナーで外を回り、大きく空いた内を狙って抜け出す好騎乗。ドリームジャーニー、マツリダゴッホ以来のGIとなった蛯名正義。年末に強いのかもしれない。


ちなみにアパパネとはハワイに生息する赤い鳥らしい。馬主の金子さんがハワイで「キングカメハメハゴルフクラブ」なるものを立ち上げてから、馬名がハワイ語に傾倒し、次第に珍馬名に寄っていく。


ここからは余談になるが、この馬を管理するのは国枝先生。
アパパネはシャドーロールを付けているが、別にナリタブライアンのような理由はない。
曰く、「付けてたら分かりやすいからね」とのこと。
たぶん管理馬全てにシャドーロールを付けている。
海外で研修中にシャドーロール付けてる馬を見て、見分けが付きやすかったことから「これはいい」と思ったのだそう。で、普段から付けさせて本番出るまでに慣れさせてるらしい。

ちなみに、国枝さんとタイキシャトル、グランアレグリアを管理してた藤沢和雄先生はどちらも美浦の名伯楽で仲が良く、二人揃って声がほっそい。風にかき消されるレベルで細い。そういう特徴がある。(謎情報)




桜花賞

00年代後期は地方騎手全盛期。
08年などは特に、重賞見たらいつも勝ってるのはアンカツ、ウチパク、岩田。時々小牧、柴山、赤木。
JRAの重賞なのに勝利ジョッキーの顔は地方で見た事ある、みたいな状況がずっと続いていた。

10年代はその転換点。地方騎手枠を外国人が取って代わる。(何の解決にもなっていないけど)

チューリップ賞は1番人気アパパネを兵庫リーディングの木村健騎手とショウリュウムーンが打ち倒したが、本番はそう上手くはいかない。
国枝先生の本気仕上げが火を噴く。

阪神JFとは間逆の、内の好位から外に出して伸びる競馬。そしてレコード勝ち。
先頭で粘りに粘ったオウケンサクラ。名前が名前なだけに何としても勝ちたいタイトルだったに違いない。それをわずかに抑えて1着。2歳女王は3歳の春も変わらない輝きを放った。




オークス

そうなるともちろんオークスでも1番人気なのだが、ここで不安になってくるのが距離。アパパネの母ソルティビッドも馬主から厩舎まで全て同じで、蛯名を鞍上に阪神JFも出たことがあった素質馬だったが、一言で言えば「短距離の早熟馬」だった。

もちろん距離不安は拭い切れない。
されど国枝厩舎は桜花賞と調教をガラッと変えポリトラック追いを中心に。オークス向きの馬体を作り上げた。体重も絞り切った。

あいにくの雨。稍重発走。勝負の行方は…

以上が「2分ちょっとで全部わかる2010年オークス」である。

福永祐一(オークス3勝)曰く「3歳春はまだ馬体が出来上がってないから距離はある程度誤魔化せる(意訳)」らしい。古馬になるにつれて筋肉が付き短距離向きの体型になったりする。(でもエピファネイア産駒は2歳GIの時点でムキムキである)

アパパネも本質はマイラー。それをなんとか2400に合わせたのは陣営の努力。稍重馬場だけが誤算だったが、概ね力は出し切った。


そんなことより気になってしょうがない事があるだろう。電光掲示板に表示される「同着」の文字。

そう、これは日本競馬史上初、そして最後になるかもしれない、「GIでの同着優勝」の歴史的瞬間だった。

しかも圧倒的外枠不利の東京2400で8枠2頭決着。
何から何まで記録づくめ。

サンテミリオン

父 ゼンノロブロイ 母父 ラストタイクーン

18戦4勝[4-0-1-13]

主な勝ち鞍 オークス(同着) フローラS

10世代

もう一頭の勝ち馬、ロブロイ産駒サンテミリオン。
ネオユニやタキオン、カフェのように、種付け初年度は有力牝馬と配合されたロブロイ。
しかし産駒のクセが強く、思ったより活躍馬も出なかったため、次第に種付け数は減少していった。

なのでこのシリーズでは最初で最後のロブロイ産駒のGI馬である。それが同着て。


勝利騎手インタビューではニコニコノリさんが蛯名さんに抱きつくシーンも見られた。同着でオッズが下がって萎えてた馬券師も思わずニッコリの名シーン。


ところで、「GIでの同着勝利はこれが初」とは言ったが、「GI級競走での同着勝利も初」とは言っていない。

ここでかる〜〜〜く触れたが、92年帝王賞でも1着同着があった。勝ち馬はナリタハヤブサとラシアンゴールド。
衝撃の事実だが、これの鞍上もノリ&蛯名Jなのだ。
歴史は繰り返される。



さて、ここまできたらもう三冠確定だろ、と思われた矢先、アパパネに暗雲が立ち込める。

国枝厩舎には伝家の宝刀「栗東留学」というものがある。美浦は茨城の美浦村、栗東は滋賀の栗東市。
筆者は栗東からそこそこ近い場所に住んでいたのでわかるが、JRの駅がある(しかも両隣が新快速停まる)、名神高速すぐ乗れる、ちょっと車で走れば都会(田舎比)と、生活に何不自由なく、交通の便がかなりいい。
対して美浦はね…うん…

それに加えて栗東の方が施設が整ってるため、西日本でのレースが多い牝馬クラシックでは、輸送の負担軽減と調教の効率化のため、有力馬はレースの2〜3週間前から栗東に滞在させていた。(あくまで国枝さんの場合)

アパパネももちろんそうで、美浦所属ながら今回もローズS→秋華賞→エリザベス女王杯の3戦を栗東で過ごしたが、初戦は思わぬ形で足をすくわれた。

なんとアパパネさん、食欲旺盛すぎて草をドカ食いしてしまい、オークスから24kgも太った状態で出走したのだ。この見た目で大食い属性持ち。
もちろん負けて4着。


秋華賞

本番は負けられぬ。4kg絞って490。後の彼女のベスト体重ともいえる数字。
また7枠と外からの発走になったが、二冠馬には軽すぎるハンデだった。

序盤、いつも通り行きたがる素振りをみせるのをぐっと抑え、中団を追走。3コーナーから4コーナーにかけてペースが緩まるタイミングで進出を開始。
外外を回してこの末脚。

「アパパネは正攻法でやってくる」

可憐な翼を大きく広げて。

真紅の翼

アパパネ

父 キングカメハメハ 母父 ソルトレイク

19戦7勝[7-1-3-8]

主な勝ち鞍 牝馬三冠 ヴィクトリアM 阪神JF

主な産駒 アカイトリノムスメ

10世代

堂々のレースで三冠目も制覇。
オークス同着のような珍事こそあったが、なんとか牝馬三冠を手にしたアパパネ。

国枝先生は「2.5冠だね」などと謙遜したが、その実力は確かなものであった。


勝利騎手インタビューは年を取るごとに若返っていく蛯名さん。彼が最後に発した「かわいい!」の一言で、名前も相まって「かわいらしい三冠牝馬」という印象になった。

そしてこの瞬間、馬主の金子さんは史上初の三冠馬と三冠牝馬の両方を所有した馬主となったのだった。
ここからも快進撃は止まらず、やがて「リアルダビスタ」「リアルウイポプレイヤー」と崇められていく。




伝説の新馬戦(再)

一方そのころ、牡馬はというと…
競馬には往々にして(以下略)今回も伝説の新馬戦だ。

ここでもまた後のGI馬が顔を合わせた。

1着2着ともにこの後すぐ紹介することになるため、触れないで次に行こう。


朝日杯FS

新馬戦1着馬は東スポ杯を快勝し、ストレートで朝日杯に殴り込んだ。

後のGI馬やGI2着馬らを退け、堂々戴冠。
薔薇一族の夢が叶った瞬間だった。

薔薇帝国

ローズキングダム

父 キングカメハメハ 母 ローズバド

25戦6勝[6-2-3-14]

主な勝ち鞍 ジャパンカップ 朝日杯FS 他GII2勝

10世代

昔から、社台グループは良質な繁殖牝馬を多数輸入していた。中にはダンス一族の祖となったダンシングキイや、ディープ、ブラックタイドの母でゴルトブリッツ、レイデオロの先祖にあたるウインドインハーヘアなどもいた。

同じ流れで輸入したのがローザネイという牝馬だったのだが…
子のロゼカラーが秋華賞ファビラスラフインの3着。
ロサードはオールカマーを勝つもGIでは不振。
ヴィータローザはセントライト記念を制覇。同上。
そんな中、ロゼカラーから生まれたローズバドという馬が強く、オークス、秋華賞、エリ女2着。特にエリ女はトゥザヴィクトリーとハナ差。
バドの弟のローゼンクロイツは菊花賞でディープの3着、金鯱賞制覇。

いや一族みんな強いけどいつGI勝てんねん、という時にローズバドの子がようやく朝日杯を制覇した。
ロゼカラー誕生からGI制覇まで実に16年。長かった。

ちなみに薔薇一族は今でも健在で、22年オークスでスターズオンアースの2着になったスタニングローズなどがそうだ。そんなとこまで似なくていいから…
追記:おめでとう…スタニングローズおめでとう…!


2歳GIはどちらもキングカメハメハ産駒に軍配。

レジネッタでチャンスを掴んだ小牧太は、この馬でもまた大きな勝利を掴んだ。
とにかく乗りやすい馬だったというローキン。小牧はこの馬でクラシックを目指す事となる。


ラジオNIKKEI杯

一方新馬戦2着馬も順調に勝ち進んでいた。

武豊を鞍上に、1〜4着馬までが後にGI1着または2着を経験することになるハイレベルレースを制覇。
馬の名はヴィクトワールピサ


続く弥生賞も後のGI馬エイシンアポロンを振り切って勝利。世代トップはこの馬だと誰もが確信していた。


毎日杯

そんな期待も束の間、日本競馬史にも残る最悪の出来事が起こった。

「ザタイキ」という馬がいた。
THEタイキ。大樹ファームの最高傑作とすら噂された1頭。年末デビューで3戦目でGIII2着。ここまではそこそこ順調に来ていて、ここの結果次第でNHKマイルかダービーかを判断する、重要な1戦だった。

元々藤田伸二が騎乗していたが、この日は武豊に乗り替わり。もちろん豊さんはヴィクトワールピサとダービーを目指すので、この馬はNHKマイルを目標にしていたのかもしれない。


レースは粛々と進んだ。道中は4番手で2番人気リルダヴァルを見ながらタイミングを測り、最後の直線へ。
前を塞がれ手応えが怪しかったザタイキ。
鞭を1発、2発入れる。

その瞬間、なんの前触れもなく

ザタイキは前脚から崩れ落ち…

競走を中止した。


勝ったのは出遅れた上に他の有力馬を鞭すら入れず簡単に差し切ったダノンシャンティと安藤勝己。
最初は「いつもの落馬だろう」と思って見ていたが、いつまで経っても起き上がらない武豊を見て不安を感じたという。


ザタイキは前脚の開放骨折で予後不良。
タキオン産駒だった。

この時代のタキオン産駒の故障率は群を抜いており、今まで紹介したタキオン産駒も必ずどこかで重度の故障で戦線を離脱している。条件馬ならなおさら。
それを補って余りある能力値の高さが売りだったのだが、さすがにこの前後の世代の故障率が高すぎて下火になっていく。

この事故も完全に運の尽きだったのだが、それにしてもノーモーションで崩れ落ちたために被害は避けられなかった。


投げ飛ばされた武豊は、左肩の関節を破壊された
プレートを埋め込み手術をしたが、術後は極端に可動域が狭くなったという。
もうダービーも諦めるしかなかった。

競馬に乗れない無力感と戦いながらリハビリをしていた武豊。彼が不在の戦場で彼のぶんも頑張ってたのが、同期であり親友の蛯名騎手だったのだ。



皐月賞

主役不在の劇場でも、スターには事欠かなかった10年代クラシック。出走馬18頭中13頭が後の重賞馬5頭がGI馬だった。

1番人気ヴィクトワールピサは岩田康誠に乗り替わり。ダート馬フェラーリピサでの重賞制覇の縁もあったためだろう。
2番人気はもちろんローズキングダムだったが、スプリングSを3着と微妙な臨戦過程。
3番人気はそこで1着になったボリクリ産駒アリゼオ。ノリさん騎乗。
他にも朝日杯2着→弥生賞2着と好成績の池添騎乗エイシンアポロンや、毎日杯3着でタキオン産駒にしては故障しながらも長い活躍を見せてくれるリルダヴァル、若駒ステークスで既に有力馬を負かしてきたカフェ産駒ヒルノダムールなど、知ってる人なら「名馬しかおらんなあ」と感嘆しているであろうラインナップだった。

レースはこれぞ岩田という感じの強烈なイン突きでヴィクトワールピサの勝利。
ヒルノダムールが2着に入り込み、この時は伏兵だったエイシンフラッシュが鋭い末脚で3着。ローズキングダムは4着に敗れた。




NHKマイルカップ

皐月賞の裏で、伝説のレースがまたひとつ生まれた。

馬番13番をひたすら凝視していてほしい。
この劇的な追い込み。ディープスカイのような大外一気。そして衝撃のタイム。1:31.4

これがどれくらい速いのかというと、当時の安田記念のレコードタイムより0.8秒速かった。もう訳が分かんねえ。

鬼のような脚で駆け抜けた8ハロン。
NHKマイルカップのレコードには、未だに彼の名前が刻まれている。

最速の軌跡

ダノンシャンティ

父 フジキセキ 母父 マークオブエスティーム

8戦3勝[3-1-1-3]

主な勝ち鞍 NHKマイルカップ 毎日杯

主な産駒 スマートオーディン

10世代

GI6勝シングスピールの甥という超が付くほどの良血馬の覚醒。
これがダノンにとって初のGI。以降、なぜかマイルGIに強いダノンブランドが確立されていくことになる。

(もちろん言うまでもなくウマ娘フラッシュのシナリオに出てくる追込フジキセキの元ネタはこの馬である)


ここからダノンシャンティは最強マイル王として世代トップに君臨し、後の龍王やらメジロの末裔やらと並んで最強馬と評価される予定だったのだが…

厩舎がマツクニなので意地でもダービーと変則二冠を達成しようとし、レース前日に骨折が判明した。
そりゃこんな異次元なタイムで走りきったらそうなるよ…

ということで、この年のダービーは17頭立てだ。



“史上最高”の日本ダービー

17頭でも超豪華ダービー。せっかくなので、先に有力馬達を紹介していきたいと思う。


ゼンノロブロイ産駒、名門藤沢厩舎の送り出す怪物、ペルーサ。青葉賞1着からの臨戦過程だ。
(青葉賞から来てるってことでもう結果はお察しだとは思うが)

キングカメハメハ産駒、同じく名門角居厩舎の怪物ルーラーシップ。角居厩舎はヴィクトワールピサと2頭出し。この馬はあのエアグルーヴの子ということで期待がかかっていた。
(ただアドマイヤグルーヴよろしく、エアグルーヴの血は子世代になるとどうも気性面が荒っぽくなるらしい)

キンカメ産駒、池江厩舎の素質馬トゥザグローリー
トゥザヴィクトリーの子。母が勝てなかったクラシックを狙う。青葉賞2着からの参戦。

これに加えてヒルノダムールやアリゼオなどの皐月賞組、いつも通り参戦するレーヴ一族のレーヴドリアンなどがいた。
超豪華なので例年なら出られるレベルの馬が出られなかっただろう。


ピサの二冠か、ニューヒーローの誕生か。
第77回日本ダービー。最強世代と言われし7000頭の頂点を決める対決が幕を切った。

ペルーサは出遅れました。
もちろん出遅れました。これが平常運転です。


アリゼオが乗り替わったクレイグ・ウィリアムズ騎手を背に逃げるが、そのペースが凄かった。
800〜1400mまでの600mの通過タイムが40秒弱。例年より約3秒遅い。気が狂うほどスロー。この時点でペルーサは詰み、後方待機の馬もしんどい展開。

直線に向いてどの有力馬も脚を余してるのでみんな上がり3ハロン33秒台。
爆速の末脚合戦の中、ただ1頭「特別な力」を秘めた馬が先頭を駆け抜けた。


使える脚は僅か一瞬。
されどその刹那、誰よりも疾く。
上がり32.7秒
豪脚一閃、府中を裂いた黒き光。

その光の名は…

黒き閃光

エイシンフラッシュ

父 キングズベスト 母父 プラティニ

27戦6勝[6-3-7-11]

主な勝ち鞍
日本ダービー 天皇賞(秋) 毎日王冠 京成杯

主な産駒 ヴェラアズール オニャンコポン

10世代

2010年3月、藤原厩舎はザタイキを見送った。
そして5月29日、金鯱賞でもタスカータソルテを見送った。脱臼だった。

5月30日、藤原厩舎のエイシンフラッシュは予後不良になったタスカータソルテと同じ枠番で出走し、勝利した。
藤原先生は「タスカータが後押ししてくれたのかな」と語った。

開業からほぼ毎年重賞を勝ってきて、タスカータソルテで札幌記念、エイジアンウインズでGI、サクセスブロッケンでJDDを制覇した藤原厩舎。その3頭が故障し苦しい状況だった厩舎に、弔い合戦としてなんとかダービーの冠を持ち帰ってきてくれたエイシンフラッシュ。この経験が活きたのか、今では故障馬もあまり出さない名門厩舎となっている。



1着フラッシュ、2着ローキン、3着ピサ。終わってみれば皐月賞と似たような着順となったダービー。
その中でクビ差4着に入り込んだゲシュタルト池添は、翌年への大きな布石となる。


余談:馬体詐欺師エイシンフラッシュ

エイシンフラッシュほど異端な馬もいない。
秒でバテるけど最速級の末脚を使える、言うなればチーターみたいな馬で、それが上手くハマる時はハマるし、ダメな時はとことんダメだった。
ダービーの上がり32.7は未だにダービー史上最速だ。

それだけではない。フラッシュには「馬体詐欺師」の渾名が付けられている。

これがフラッシュの馬体。いかにも走りそう。毛艶がいい。かっこいい。フラッシュが曲者なのは、「調子悪くても毛艶がいい」所だ。

↑これは有志の方が上げていたフォトパドックのブログ。フラッシュの項を見て欲しい。

他の馬が撮る時期によって腹回りがボテっとしてたり、筋肉の付き方やしまりが悪かったりするのに対し、フラッシュはほとんど変化がない。
「いつの見てもええ!!脳死で軸にせえ!!」と心の中のノブが叫んでいる。

の割に競走成績はかなりムラがある。
藤原厩舎の究極仕上げの甲斐もあって、馬体重の増減も少ないから買い時がマジでわからんのがフラッシュ。でも来ない時は本当に来ない。なので詐欺師と言われたのだ。


神戸新聞杯

夏を越え神戸新聞杯では🌹ローズキングダムが叩き合い🤜🤛を制した。ダービーの無念を晴らした。


菊花賞でも二強対決かと思われた矢先、藤原先生がフラッシュの後脚の微妙な腫れに気付く。
レースに支障はないレベルの腫れだが、先生は馬主の平井さんを必死に説き伏せて菊花賞を回避した。

有力馬を2頭亡くしている。慎重になって当然だ。



菊花賞

なのでローズキングダム一強ムードが漂っていた菊の舞台。しかしここで一波乱。

意外な展開になった。

実は8月1日に復帰していた武豊。
復帰したはいいものの、まだ痛みや違和感を伴ったまま。

↑例外としてこういう非人間的な再生力で復活してくる超人(これで毎年地方リーディングなんだから怖い)もいるが、どんな超人も超人である以前に人間だ。


豊さんは思うように追えず、微妙に差しきれずに2着。
勝ったのはまさかの川田将雅。ラッキーすぎる勝利だった。

ビッグウィーク

父 バゴ 母父 サンデーサイレンス

26戦5勝[5-5-1-15]

主な勝ち鞍 菊花賞

10世代

マックイーン、ビワハヤヒデ、キタサン、タイトルホルダー。最強の菊花賞馬を決めるのは難しいが、最弱はと聞かれた時に真っ先に名が挙がるのがビッグウィークだ。

ウオッカの馬主さんの所有馬で、スペシャルウィークみたいな感じでダービーを見据えて付けたであろう名前。ダービーは逃したが、菊は勝てた。

しかしその後がひどく…
菊花賞勝利から3年間、一度も掲示板にすら入着できなかった。

そして、史上たった2頭しかいない「障害転向した菊花賞馬」になった。クラシックホースが障害レースに出るなんて異常事態、もう二度とないかもしれない。

ちなみにもう1頭はこちらで紹介したキーストンのライバル、ダイコーターである。

でもビッグウィークの勝利に意味がなかったということではない。むしろビッグウィークがここで勝てなかったら日本競馬は大きく変わっていた。


ビッグウィーク自身は種牡馬にはなれなかったが、彼の活躍のおかげで父のバゴは種牡馬を続けられた。
不良馬場の凱旋門賞を制したバゴは色々あって日本に輸入されてきたが、一時期成績が落ち込み種牡馬引退も考えられた。
ここでビッグウィークがいなかったら間違いなく終わっていただろう。ビッグウィークとオウケンサクラがある程度の結果を残したから首の皮一枚繋がった。

繋がった先で生まれたのがクロノジェネシスとステラヴェローチェだ。彼らがいるのはビッグウィークのおかげと言ってもいい。



皐月賞、ダービーの割には盛り下がった菊花賞。
それにも理由があるので、古馬路線を見ていくとしよう。

“世界”の壁

10年代、日本競馬は変わる。
外国人騎手の台頭、激化する海外挑戦…

その度に思い知らされる壁。
それを打ち壊すまでの物語が、今も続いている。


高松宮記念

まずはスプリント路線から。

10年代に入ると、距離区分、コース適性がより顕著に出てくる。スプリンターならスプリンター、マイラーならマイラー。その区分を超えて制覇できる馬は一流。そういう流れになっていく。

育成の質、馬場の変化など理由は様々。
その時代の象徴とも言える存在がこの馬だ。

大接戦となったゴール板前。先んじて抜け出たフジキセキ産駒キンシャサノキセキが粘って辛勝。
今までも散々スプリントGIで善戦してきた才能がようやく開花した。7歳だった。


スプリンターズステークス

しかし秋は疝痛でセントウルSを使えず。直行で挑むも、思わぬ馬に穴を開けられてしまう。

ウルトラファンタジー。成績を調べればわかるが、なんでこれで勝てたの?と言いたくなる。
やっぱり香港の短距離馬は強い。



日経新春杯

それではマイル〜王道距離の解説。
ドリジャで有馬勝ってすぐ、池添はまた強い追い込み馬にまたがっていた。

その名もメイショウベルーガ。牝馬だ。
テイエムプリキュア&スプマンテ大運動会で5着。そしてここで重賞初制覇。

スイープ以前の時代だったら相当騒がれていたであろう末脚でもって完封勝利。エリ女に向けて視界良好。
しかも管理するのは池添兼雄調教師。GI親子制覇を狙う。

天皇賞(春)

ベルーガは阪神大賞典でも好走しちゃったため、ここにも出た。さすがに牝馬に3200は厳しかったが、何より1着2着の力が抜けすぎていた。

前年の覇者マイネルキッツをかわして勝ったのは、なかなか勝てない素質馬だった。

ジャガーメイル

父 ジャングルポケット 母父 サンデーサイレンス

34戦6勝[6-6-2-20]

主な勝ち鞍 天皇賞(春)

07世代

ジャンポケ産駒ジャガーメイル。
例のスクリーンヒーローのアルゼンチン共和国杯2着から香港ヴァーズに飛び出し3着、その後も目黒記念2着、京都記念2着と微妙な結果を残し続けてきたが、ようやくGI馬に。
クレイグ・ウィリアムズ騎手は外国人初の天皇賞(春)制覇、天皇賞全体で見てもペリエ以来2人目の快挙となった。
外国人騎手が春GIを2勝。時代の変化だ。



ヴィクトリアマイル

もちろんこんなレースはブエナビスタの独壇場なのだが、ここからのブエナは世紀のクソローテに囚われ続けることになる。

年明け、京都記念でジャガーメイルを倒したブエナはドバイに飛んでいた。
ドバイシーマクラシックにて、ウオッカでは辿り着けなかった境地へ至る。

ギリギリまで踏ん張ったが、結果はダーレミの2着。惜しかったけどいいレースを見せてくれた…で終わるはずだったのだが…

なんと、鞍上ペリエの凡ミスでブエナが他馬より0.5kg重い斤量を背負っていたことが判明。不利を背負ってたため降着とかはなかったが、もちろんそれがなかったら勝ちも有り得る内容だった。

関係者はこれにキレて、以降社台系の馬はライアン・ムーアとクリストフ・スミヨンが乗るケースが多くなる。ペリエはたぶん干された。

この判断が日本競馬の歴史を歪めてしまうとは、この頃は誰も知らなかった…。



で、帰国後ブエナはVMを勝利。

そりゃまあ余裕よ。有馬2着の馬が負けていいレースじゃない。
そしてブエナは宝塚へ挑む。


安田記念

安田記念ではリーチザクラウン、トライアンフマーチら4歳世代が人気になったがどちらも撃沈。
エアジハード産駒ショウワモダンがレースを制した。

鮮烈な勝ち方だが、この後一気に低迷し種牡馬入りも叶わず。この時代のマイル路線は不遇な馬が多い。

マイルCSは尺と見どころの関係上カット。ダノンシャンティが出てたら圧勝してたんだろうな…という感じのレース展開になっていた。




宝塚記念

京都記念→ドバイSC→VM→宝塚という距離もなんもかんもバラバラのローテで頑張り続けるブエナビスタ。
それでも1番人気。デビューからずっと1番人気。
(他に対抗出来る馬がいなかったともいえる)

ゲート入りからご覧いただこう。

09世代の逆襲。これだけゲート入りを渋っていた馬がこうも完璧なレースをしたケースは珍しい。

ドリジャはスタート後大きく外に膨れてロス。ブエナは有馬同様先行でレースを進めたが、ものすごい脚に差し切られた。


思わぬ形で伏兵にしてやられたと思い込んだ世間。
本当にそうだろうか。彼の目は、彼らの目は、女王より遥か彼方の未来を見据えていた。

一擲乾坤

ナカヤマフェスタ

父 ステイゴールド 母父 タイトスポット

15戦5勝[5-3-0-7]

主な勝ち鞍 宝塚記念

主な産駒 バビット ガンコ

09世代

ウマ娘のナカヤマフェスタには「先生」と呼ぶほど慕う存在がいる。世界を目指すのも、もとは先生との関係があったからだとか。

ナカヤマフェスタのオーナー、和泉信子さんは宝塚歌劇団とパリをこよなく愛していた
家族でフランス旅行にでかけたり、何かとフランス贔屓で、いい思い出もたくさんあったという。
しかし、信子さんはフェスタを残して亡くなった。食道がんだった。


フェスタは父親の信一さんが継ぎ、再出発することになった。信子さんに届けた最後の勝利は、セントライト記念だった。


フェスタはステイゴールド産駒。その中でも飛び抜けて気性が荒く、同時に能力も高い。
まともに調教も出来ないままにセントライト記念を制してきた。

しかしどういうわけか、4歳春からその精神に落ち着きを見せた。
そして、あれよあれよという内に宝塚を制覇。
娘が勝たせてくれたのかもしれない
信一さんはそう思ったという。


そうなったらやっぱりフランスにも凱旋門賞にもフェスタを連れていきたい。当然の事だろう。

夢見るだけでは何も叶わないが、これは無策の遠征ではなかった。

フェスタの所属は二ノ宮厩舎。1999年、エルコンドルパサーを凱旋門賞に連れていった厩舎だった。
そして、凱旋門賞には蛯名正義騎手で挑む事が正式に発表された。
そう、モンジューに負けたあの時と同じチームだ。

娘の夢と、あの時やり残した夢と、日本競馬の夢。
様々な思いを乗せ、ナカヤマフェスタはフランスへ飛び立った。



ナカヤマフェスタはヴィクトワールピサと共に日本を発った。
ピサは武豊を乗せニエル賞から、フェスタは蛯名を乗せフォワ賞から凱旋門賞へ挑む。
この時はピサが大本命。勝つならピサだろうと思われていた。

だがピサはニエル賞4着、フェスタはなんと2着と善戦する。
それも蛯名は余力を残した追い。徐々に希望が見え始める。


凱旋門賞

メルボルンを制しても、香港やドバイを制しても、日本馬には未だ高かった凱旋門賞の壁。

この年はモンジュー産駒のフェイムアンドグローリー、ルメール騎乗のベガバッドなど有力馬も揃っており、間違いなくディープの年よりハイレベルだった。

日本の夢を乗せて、ゲートは開く。

レースは混戦で、馬群はこれでもかというほど凝縮。身動きが取れない。
ピサは後方で詰まり、フェスタは4コーナーで追い出した際、かなりの不利を受けた。

それでもフェスタは伸びた。そして、先頭に躍り出た。勝てるかもしれない。そう思ったのも束の間。
内から馬群を割って伸びてきたのは3歳馬ワークフォース
フェスタか、ワークフォースか。
フェスタか、ワークフォースか。

まるで99年の再演かのように、2頭の叩き合いはゴールまで続き…

ワークフォースの勝利で終わった。
アタマ差だった。これ以上無いほど僅差だった。


この一件もまた、日本競馬の未来を大きく変えてしまった。

本当はワークフォースは馬群を豪快に割りすぎて審議の対象になっていた。動画でいう3:00前後だ。
しかし、逃げ馬の方を降着させた。

不利がなく、相手の馬群割りがもう少しごちゃついてさえいれば、日本馬は凱旋門賞にもっと早く勝てていた。


なまじ今まで不振続きだったナカヤマフェスタが2着になってしまったせいで、「ナカヤマフェスタで善戦できるのなら」と、なぜかステイゴールドではなくディープ産駒を出走させ、その度ボロボロになって帰国の流れが数年続く。正直しんどいがこれも歴史なので取り上げると思う。


ナカヤマフェスタの敢闘は素晴らしいものだった。
陣営にとっても思ってもみない2着だっただろうし、日本馬にとって最も凱旋門賞勝利に近づいたのがこの年だった

これは運ではなく実力だった。宝塚〜凱旋門賞の走りが本来のフェスタだった。
(その後はまた気性の悪さが出て言うことを聞かなくなったらしい)


その結果がどうしてこんな「呪い」みたいな感じで今も語られているのかは、今年の凱旋門賞を観ると分かるかもしれない。
(タイトルホルダーに勝って欲しいけどぶっつけ本番は正直厳しいと思っている。でも勝ててもおかしくはない)




天皇賞(秋)

この年の菊花賞がやけにしょぼく感じたのは、ここにペルーサ、アリゼオ、エイシンアポロンが出走したからである。

90年代後半、スタミナ一辺倒の長距離馬が長距離も走れる中距離馬に脅かされ、やがて姿を消した。
そして00年代後半から使い分けが加速し、菊花賞は距離適性的に無理だと判断されたクラブ馬は、問答無用で天皇賞に殴り込む流れが出来たのだ。
天皇賞のレベルは段違いに高くなったが、菊花賞はそのぶん…というわけでもなく、例年勝ち馬は一線級だ。この年が底値。

実力のある3歳馬が秋の盾に挑んだが、よほどの事がないと古馬相手にその勝負は厳しいということは、これまでが証明している。

この年も古馬ブエナビスタがスミヨンに乗り替わり、中団からいとも容易く抜け出し勝利。
3歳代表ペルーサが豪脚で2着に飛び込んできたが時すで遅し。これでGI4勝目となった。



エリザベス女王杯

一方のエリ女は三冠馬アパパネか、 京都大賞典をまたしても追い込みで勝ったメイショウベルーガかで票が割れていた。

とりあえずレース動画を見てみよう。

直線向いて誰が抜け出すかな〜って時にカメラの端っこで映る謎の馬。

す〜〜〜〜んごい脚!!

で抜け出して突き放してゴールイン。

衝撃の来訪者

スノーフェアリー

🇬🇧外国調教馬

父 インティカブ(ロベルト系)
母父 チャーンウッドフォレスト(マンノウォー系)

主な勝ち鞍
🇮🇪愛チャンピオンS 🇭🇰香港C
🇬🇧オークス 🇮🇪オークス 🇯🇵エリ女連覇

10世代

勝ったのはなんとイギリスからやってきた外国馬スノーフェアリー。
勝ち鞍を見て分かる通り、バケモノです。多分もうファインモーションとかの比じゃないレベルの大バケモノ。
なんで京都でGI勝って翌年の凱旋門賞で3着になれるのかが分からん。



ジャパンカップ

そんな衝撃もつかの間、こちらはまたブエナビスタが1番人気。
そしてどうせブエナビスタが勝つだろう。
そう思われていたのに、ここでも一波乱。

降着。まさかの降着。
ブエナビスタとローズキングダムの順位が入れ替わった。

スミヨンは「日本のルールに従うけど、これは欧州ならセーフだろう」と言った。さっきの凱旋門賞見てると確かにそう思うが、スミヨンも中々に荒っぽい騎乗をしてはいる。
この件に関しては不利を与えたのはブエナビスタよりヴィクトワールピサのギュイヨン騎手な気もするが。


疑惑の判定だが、武豊としては釈然としない復帰後初GIとなった。


ところでエアシャカールの時も書いたが、神戸新聞杯→菊花賞→ジャパンカップローテはかなりハードなのでその後の馬のメンタルやパフォーマンスに大きく影響する。

ローズキングダムはこの後有馬に出ようとしたが疝痛で出走取消。ここで歯車が狂ったのだろう。一気に走らなくなった。


引退後は種牡馬入りするもあまりいい馬は出せず。
その後は牧場で暮らしており、タイキシャトルと仲が良かった。現在はタニノギムレットの舎弟になっている。



有馬記念

昨年オールカマー三連覇を達成した中山の鬼マツリダゴッホもおらず、ドリームジャーニーもやや不調。
ローズキングダムが回避して15頭立て。
それにも関わらず、史上最高レベルのメンバーが集ったこの年の有馬記念。

ブエナビスタ、ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ドリームジャーニー、エイシンフラッシュ、ルーラーシップ、トーセンジョーダン、オウケンブルースリ、メイショウベルーガ、ダノンシャンティ、レッドディザイア
これが1〜11番人気。全頭紹介済みなはずだし、他もトゥザグローリーや、紹介してないだけで菊花賞2着&長距離で鬼のように強いダンスインザダーク産駒のフォゲッタブルとか、例年ならこれで2回に分けて有馬記念出来るぞってレベルの豪華メンバーになった。

まあ先に言っておくと、ここから2014年くらいまではずっとこのレベルが続くのだが。期待していてほしい。

レースを見ていこう。

ペルーサ贔屓実況のように聞こえるが、その通りだ。
ペルーサ贔屓以外の何物でもない。
だが、それくらいペルーサが愛されキャラだったという事も同時に分かる。

レースはかなりスローで落ち着いて、途中で掛からないようピサが進出し、前の方でもう一度折り合いを付ける。乗り替わったミルコ・デムーロが稀にやる乗り方だ。それに釣られてルーラーシップとルメールも進出。

最後の直線で先頭に立ったピサ。
例のように後方から差しに行くブエナ。

届くか、届くかという所でゴールイン。
1着ピサ、2着ブエナ、3着トゥザグローリー。



勝利ジョッキーインタビュー。デムーロは涙した。
まだ久留米人じゃなかった頃の貴重なインタビュー。

このレースにかける熱い想いが、陣営の努力が、襲いかかる悲しみが、翌年、大きな花を咲かせることをまだ誰も知らない。

ナカヤマフェスタによってもう一度こじ開けられた世界への夢は、かたちを変えながら少しずつ実を結んでいくことになる。




2010世代は「最強世代」と呼ばれた事もあった。
それは真実で、この世代がいたからこそ後の競馬が盛り上がった。

だが、私は敢えて“最高”の世代だと書いた。

2011年。そして2012年。
この2年間の間にターフを駆けた優駿達が、その最強の布陣を易々と超えていったからである。

ある者は最速を、ある者は万能を、ある者は爆発力を。
そしてある者は、日本競馬全ての夢を背負って立つ英雄へと。

10年代前半は、最強世代ではなく、最強たちの時代であった。そう表現しておきたい。


中でも、無尽蔵のスタミナと頑健さを武器にする彼は多くの者を虜にし、日本競馬内にある種の一大ムーブメントを起こした。

その馬の名は…

と、いうわけで今後の競馬史は
「ゴルシちゃん初出走編」
「ゴルシちゃん優等生編」
「ゴルシちゃん反抗期編」
「ゴルシちゃん大暴走編」
「ゴルシちゃん大団円編」
の5本です。嘘です。

ウマ娘から入った人にむけて、ゴルシだけじゃねえんだぞっていうのはもう充分伝わってるとは思いますが、ゴルシのいた時代って最高だったんだぞという事を同時に伝えていきたいと思います。よろしくお願いします。


あとがき

ついに来てしまった…競馬史も残すところあと僅かです。もう後はオルフェとゴルシとキタサンとアーモンドアイで終わり。その途中でキズナとエピファとサトダイと…ってやってると年跨ぐんで本当に早く終わらせたい。欲を言うなら動画化したいけどこれを動画にするのって至難の業なので頭を抱えています。

YouTubeの編集に詳しい人募集中。Twitterまで連絡ください。

それでは。


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