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制作プロセス(5):大阪マラソン公募 最優秀賞W受賞 メインビジュアル公募で考えたこと
今回の記事は5年前に大阪マラソン2019メインビジュアル公募で引野が最優秀賞をとった時に書いたプロセス記事です。またこのプロセスを応用し佐々木も来年の2025メインビジュアル公募で最優秀賞を頂きました。二人で最優秀賞をW受賞したので、再現性のあるメソッドなのではと思い、noteにも掲載しました。
基本の公募内容は変わっていないので、もし来年の大阪マラソンメインビジュアル公募があれば参考になると思いますので、応募を検討される方はぜひ参考にご覧下さいませ。
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以下から過去掲載分の記事になります。
今回は大阪マラソン2019メインビジュアル公募作品について書きました。
幸運にも昨年大阪マラソンメインビジュアル公募で最優秀賞を頂き、
2019年大会のイラストを担当させて頂くことになりました。
今回はイラストを描くプロセスというより、
その前段階で考えたことが主な内容になります。
ながーーいので、さらーっとお読み頂ければと思います。
募集要項を読み解く
まず募集要項を読むところから始まります。
ここをどう解釈するかで8割方の方向性が決まってくる大事なポイントです。
募集要項の中でも特に大事にした項目が
(1)大阪マラソンとは
(2)テーマ
(3)作品サイズ
の3項目で、注目した部分は太字にしています。
以下抜粋しますが、全文記載のpdfはこちら。
(1)大阪マラソンとは
大阪マラソンは、国内外からの32,000人のランナーが駆け抜け、コース沿道には130万人を超える群衆の熱い声援が飛び交う国内最大級のイベントです。
大阪の都市魅力の発信を主目的に開催しており、御堂筋や中之島の中央公会堂周辺などの観光名所を巡るコースです。特に今回のトピックスとして、ゴール地点をこれまでの南港から大坂城公園へ、いわゆるセントラルフィニッシュ(都心ゴール)を採用したコース変更を行います。これに伴い、あべのハルカスや四天王寺、造幣局などの名所付近も巡る、大阪の見どころ満載の42.195kmとなります。
「みんなでかける虹。」をスローガンに、ランナーをはじめ、観客の皆さん、ボランティアスタッフ等、多くの方々にチャリティに参画する機会を提供するなど、チャリティ文化の普及をめざしています。
大阪のまち全体がお祭りのように盛り上がり、大阪の魅力を発信できる「世界一の市民マラソン」をめざしています。
(2)テーマ
次の点をイメージできるものであること
元気とホスピタリティ(おもてなし)にあふれた大阪をイメージできること
走る人(ランナー)、応援する人(観客)、支える人(ボランティア)、みんなが主役の大阪マラソンをイメージできること
都市の新しい「祭り」である大阪マラソンをイメージできること
(3)作品サイズ
A3判縦位置(297mm×420mm)
(なお、ポスター、募集要項、大会告知用のパンフレットとしてサイズ調整する場合がありますので、ご了承ください。)
注目ポイント
⚫︎ビジュアルの方向性を短く言語化
まず大事にしていたのが、
方向性を出来るだけ短い文章で言語化することです。
「(1)大阪マラソンとは」と「(2)テーマ」から思い浮かべたのは
“みんなが主役のお祭りマラソンで、楽しく参加・応援しているイメージ”。
こんな感じで自分の中で短くまとめておかないと、
あっちこっちに考えが散らばって後々迷走することになります。
長い募集要項をそのままにするのではなく、
描く前に道筋を立てることが大切です。
⚫︎実際のポスターになったときの印象
そして次に考えたのが
ポスターを見る人の顔や受け取った印象・想いを考えること。
今回のイラストがポスターになったとき、
それを見た人にどんな気持ちになって欲しいかを考えました。
今回は
“見た人が何か楽しそう、自分も参加してみたい”
と思ってもらうことをゴールとしました。
ここまで来るとだんだんビジュアルの方向性が絞られてきました。
ぼんやりとガチャガチャと賑わって楽しそうなイメージしたので、
募集要項に書いてある要素を全て入れ込もうと描くものを
ザザッとリスト化しておきました。
⚫︎別媒体に展開したときの使いやすさ
次に注目したのが
「(3)作品サイズ」の所に書いてある
別媒体に使用するために「サイズ調整する場合があります」という文言。
これ、僕が地味に大事だと思った部分です。
ポスターは「縦長」ですが、
他の媒体に展開するとき「横長」という場合も多いにあります。
例えば、Webサイトなどです。
縦長でしか成立しないビジュアルだと、
Webサイトのように横長のメインビジュアルに置いたとき、
横長を想定して作られていないので、
本来のインパクトが弱まってしまいます。
そういうのを想定すると、
横長にも対応できるビジュアル・データの作りが必要だと考えました。
加えて、タイトルやキャッチコピーを入れて成立しやすいことも重要です。
なので、デザイナーさんが取り扱いやすように
ある程度イラストをレイヤーに分け、デザインが成立しやすいように描く
ということを前提にしました。
過去の大阪マラソンのビジュアル調査
募集要項をいろいろと読み解きましたが、
それが終わったら、次は過去大会のメインビジュアルの調査です。
第1回大会から見返しましたが、
特に大事なのはやはりメインビジュアル公募が始まった第7、8回だと思い、
その2作品を重点的にみることにしました。
第8回大阪マラソン
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第7回大阪マラソン
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はっきりと傾向が違うところが面白いなと思いました。
第8回は秀吉をモチーフにしたキャラクター単体のビジュアル。
第7回は大阪マラソン全体の楽しさを描いたビジュアル。
単体で描くのか、全体を描くのか
というハッキリとした違いがあると個人的には感じました。
そして、自分の向き、不向きとしてはどちらを描こうかと考えましたが、
僕の今までの傾向として全体を描く方が得意なので、
第7回大会のように全体を描いて大阪マラソンの楽しさを表現しようと決めました。
第7回ビジュアルの分析
「第7回大会」のように全体で見せる絵にすることに決めたので、
次はイラストを細かく分析していくことにします。
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左は、採用当初の作品
右は、ポスターになった作品
ここでは最終的にどう修正されたかに着目します。
なぜかというと、
その修正点に、大会側の要望としてこれは外せないものがそこにあると考えたからです。
細かくいろいろ変わっていますが、
特に気になったのは、追加された2つのモチーフ
●虹
●車椅子ランナー
七色の虹は大阪マラソンのスローガンが「みんなでかける虹。」なので必須で、
車椅子ランナーの方も、「みんなが主役」の大阪マラソンとしては入れておきたい項目。
この2つは大阪マラソン全体を描くときに気をつけたいポイントだと考えました。
全国のマラソン大会ビジュアル調査
ここまでは大阪マラソンを重点的に見てきましたが、右全国のマラソンのビジュアルはどんな感じなのかも調査しました。
ただ、全部載せるとながーくなってしまいますので、端的に文章で紹介します。
東京マラソン
一番比較対象になる東京マラソン。
調べてみるとやはりグラフィカルでスタイリッシュなビジュアルが多いような気がしました。こうみると大阪マラソンは観光しながら走る要素が強いので、施設などもきちんと描こうと考えました。
神戸マラソン
こちらも調べてみると細かなイラストを過去は使ったビジュアルのようでしたが、近年は「神戸マラソン3色の大会テーマカラー」を使ったコンセプトありきのビジュアルにしているようです。
阪神・淡路大震災からの復興が根底にあるので、そこはビジュアルに大きな違いがありますね。
京都マラソン
こちらも調べてみるとやはり京都は「和」が印象に残るビジュアルです。
近年は浮世絵風のイラストにしていますね。
大阪国際女子マラソン
こちらも調べてみるとなかなか大御所のイラストレーターを使っているようです。
浦沢直樹さん、JUNICHIさんなどなど、名の知れた方々を起用してインパクトを出しています。同じ大阪のマラソンでもシンボリックなビジュアルで全然方向性が違う気がしました。
全体を描くか、単体で描くで言えば、単体でバシッと描いているなと。
この他、ローカルのマラソン大会のビジュアルも見回りましたが、他と比べることでやはり大阪マラソンは「大阪でっせ!」と楽しさ・賑やかしさを主張するビジュアルが合っているな〜とハッキリと方向性が見えてきました。
調査に基づいてラフラフ作成
そして、これらの調査に基づいて描いたラフのラフがこちら!
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これまでの調査の説得力が吹き飛んでしまうようなラフでございます。。
僕の場合は大まかな構図だけ決めて、あとは描きながら詳細を詰めるという流れが多いです。
ラフが出来たらパーツ作り
ラフを元に次はイラストのパーツ作りです。
僕の作り方の特徴としてはイラストパーツを描けるだけ描いてから最後にレイアウトするという方法を取っています。
老若男女のランナー、通る施設など、描くものを全てリスト化して全部描いていきます。
B5のコピー用紙14、5枚くらい描いたと思います。
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これらをスキャンしてphotoshopでレイアウトしていきます。
作ったイラストをレイアウト
イラストを軽く組み合わせて、先ほど見せたラフ2案どちらが良いか決めます。
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上のラフが実際のイラストを組み合わせることで下のように。
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凄くざっくりですが、どちらで組んでいった方が良いかなーと検討します。
両方とも上下に文字など入れるスペースを確保しつつ。
①も良いけれど、視線が左に寄りすぎて惹きつけるインパクトが弱くなりそう、、
ということで②の正面を向いた構図を採用しました。
このイラストのランナーが正面をしっかり向いていることで、ポスターになったとき道ゆく人の視線を惹きつけられそうと思いつつ、詳細を詰めていきます。
ここまで構図を決めてイラスト素材もバッチリあればあとはバランス良くインパクトがあるようにレイアウトしていくだけです。
イラスト仕上がり
そして詳細詰めて仕上がったのがこちら。
大阪マラソンの楽しさや賑やかさを演出するために
紙吹雪、風船、光などを加えました。
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制作期間は調査から含めるとちょうど一ヶ月くらいでした。
仕事の合間に少しずつ進めていた感じなので、
実制作期間はもう少し少ないかと思います。
実際審査員の方々がどのようなプロセスで評価して頂いたかは分かりませんが、僕の考えとしてはこのようなプロセスを経て作りました。
つらつらと書きましたが、今後何かの参考になれば幸いです!
私の書いた記事は2019年時点の記事なので、応募を検討される方は、それ以降に採用された作品もみながら検討されると良いと思います!
おまけ -佐藤オオキさんのコンペ論-
長々と大阪マラソンメインビジュアルコンペについて、その制作プロセスをつらつらと書きましたが、その100倍参考になるものがあります。
それが世界的デザイナー nendo佐藤オオキさんのコンペ論です!
下記の動画からお聞きいただけます。
作り手としても一流ですが、世界のコンペなどでも審査員をされており、審査する側の視点でいろいろと語られております。
自分はどのタイプでコンペに参加するのか、テーマは見てはいけないとか、審査員の誰に刺さるようにするかなどなどとても参考になると思いますので、是非ご覧くださいませー!
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