「ともだち100人いるかしら」(原作:童謡『一年生になったら』)
(大人の理屈っていうか、もう迷信だと思うんだわ。友達が多くて元気で明るい子イコール良い子ってのが)
(それな)
(本気で100人いたらめんどくせーな。3日に1回は誰かの誕生日じゃん)
(多分昔はさー、連絡手段が乏しくて。口コミや噂が情報源だったりコネとかも大事で。だから友達つうか人脈って意味じゃねーの)
(今の時代、情報ならネットでいいし)
(別に友達ゼロでもやってけるよな。いてもいいけど量より質だろ。数いても邪魔)
(うちの親もさぁ、ママ友とか言ってキャアキャア付き合っておきながら、一人が輪から抜けるとすぐその人の悪口。同じ口で『お友達とは仲良くしなさい』っても説得力ねぇ)
(あっはっは。おもしれー。そっか、お前兄ちゃんいるんだっけ)
(俺より4つ上な)
(ねー、何話してんの)
(なんだよ、女が割り込んでくんじゃねーよ)
(いっけないんだー。ジェンダー差別は時代遅れですよー。聞いてたけどぉ、何二人ともイキってんの。友達って多い方が良くない?)
(そうかー?)
(あたしなら友達がさーって作ってから、要るのと要らないの選別する。やっぱあたしみたいな可愛い子だけでグループ作りたいもん)
(おま、自分で可愛いって)
(目鼻立ちハッキリしてるって言われるしぃ〜)
(てか女って大体ツルんでるよな)
(本能じゃない?群れて身を守ろうとするの。だってか弱いから〜)
(生命力バチクソ強ぇくせに)
三人の会話はまだまだ続く。
その母親たちは・・
「ふぅ。今日は随分動くわぁ」
「うふふ、そうですね」
「みんな同い年になりますね。保育園とか考えていらっしゃる?○○教育ならA園が、●●式ならB園がいいそうですよ」
「やっぱり教育は早い方がねぇ。こちらの胎教スクールで皆さんと知り合えて良かったわ。ご近所では意識の低い方ばかりで」
「分かります分かります。公民館とかの教室では、ねぇ」
おほほほほ・・・
互いに褒め合いながら内心バチバチと火花を散らす妊婦たち。笑いながらも相手の服装のブランドチェック、乗ってくる車のランク付けは抜かりない。
(あー、この調子じゃ俺ら絶対お受験コースだなー)
(しょうがねぇよな、生まれる家は選べないし。互いに頑張ろーぜ)
(どっちかが将来出世したら、玉の輿に乗ってあげよっか。もしくは玉の輿紹介してよ)
(お前がモデル級の美人になったら考えんでもねーけど。てか自分で稼げや)
(それな。ジェンダーとか言うならよ)
(フン、稼げる女になった上で玉の輿に乗るつもりよ)
(へーへー。あ、時間かな。またなー)
(じゃーなー。お互い元気に産まれようぜー)
(バイバーイ)
胎児は、胎児にしか聞こえない声で会話をする。
だがまぁ、大抵はこんな声で産まれてくるものだ。
「おぎゃあ」