アサラトの音量と演奏速度の関係性(追記)
先日、アサラトの演奏速度と音圧変化についてのレポートをまとめたが、再計測が必要な部分が見つかったので、新たな考察とともに少し加筆する。
前回の計測データの問題点
まず、先の記事に添付した表を今一度ご確認いただきたい。
上記の表にまとめるデータを取る際、計測時には全く気にしていなかったのだが、実に初歩的で重大なミスを犯していたことに後日気が付いた。
表の一番右、デンデンの欄に注目してほしい。
一目瞭然、他の二つの奏法に比べ明らかに音圧が大きいことが簡単にわかるだろう。
しかし、この結果は正しく測定されていないが故に導かれた、間違ったものであった。
どういうことか説明すると、この計測の目的は“三つの奏法の速度と音圧の変化を、同一条件下で演奏し比較することによって、その差を明らかにする”というものだったにも関わらず、デンデンだけ違う速度条件で計測を行ってしまったのだ。
具体的には、フリップフロップでの演奏時は付点8分音符の間隔で鳴るアタック音を計測したのに対し、デンデンは8分音符の連続で計測してしまっていた。
これでは同一テンポで演奏しても音価が違うので、当然ながら球の往復運動速度も変わってしまい、正しい比較ができない。
考えなしにこんな単純なミスを犯してしまい、ただただ慚愧に堪えないところではあるが、過去を恥じているばかりでは何も進まないので、悔い改めつつも早速、比較に適したデータを再計測することにした。
音圧データの再測と結果・考察
フリップフロップとデンデンの演奏による音圧の違いを正しく比較するためには、各奏法の音価を全く同じに揃える必要がある。
その為には実際にどの様にすればいいか、先の誤った計測を元に考えると、フリップフロップ(付点8分音符)とデンデン(8分音符)の間には1.5倍の速度差があるので、フリップフロップを1.5倍速いテンポで演奏するか、デンデンを2/3の速度に落として演奏することで正しく比較することが可能になる。
では、どちらの方法がより適当か、私の演奏スキルも考慮した上で比べた結果、高速でのフリップフロップよりも、デンデンをスローにする方が容易かつムラの無い演奏が可能であると判断し、今回は演奏速度をBPM=80(8分音符)に落としたデンデンでのプレイを再計測をすることにした。
無論、その他の要因は前回と全く同じとする。
以上の条件の下、もう一度測定し直した結果、デンデンでの演奏時の音圧は平均80.5dBを計測し、フリップフロップの平均80.4dBと限りなく近似の値が指し示された。
これはつまり“フリップフロップとデンデンは完全に同一テンポ(音価)で演奏した場合、音量もほぼ同一である”ということが証明されたということになる。
フリップフロップとデンデンでは演奏する際の手首や指の使い方が異なるが、それでも尚、純粋な球の速度に依存して音量が決められる事実を明らかにできたことは、一つの定理を実証できたという点からも意味があったと言えるだろう。
ついでに、少し研究テーマからは外れてしまうが、この定理をプレイヤー目線に落とし込んで考えると“同一音価のフリップフロップとデンデンとの(記譜上での)差異は、アタック音に付随するシェイク音の有無だけである”と言い換えられ、もし二つの奏法を(同じ音価のまま)自由自在に行き来できるようになれば、音楽表現の幅がまた一つ広がるのではないかと私は考える。
どうしてもデンデンに切り替えるタイミングでリズムがヨレてしまったり、ハングを入れる際に手首をコントロールしないと前のめりになってしまったり、想像するよりもいくらか練習のし甲斐があるかと思うので、興味のあるプレイヤー各位は日々の練習メニューに加えてみてはいかがだろうか。
これからの課題と計画
さらに前回は調査しなかったが、計測データを元に各奏法ごとの音圧と速度の上昇倍率の相関も計算してみた。
しかしこちらに関しては、人力での演奏を計測している以上(演奏力の欠如も影響し)バラつきが大きいこともあり、残念ながら実用性のある結果が得られなかった。
もちろん、いずれ改めて正しく数値化し、何か得られるものがないか考察したいと考えてはいるが、計算に必要な公式等の数学的知識であったり、力学や物理学の基本的な法則等が理解できていない為に、現状のままでは求める成果を得ることが難しいと判断し、一旦この研究テーマを保留することにした。
まったく、学生時代の不勉強を心底後悔するばかりだが、今からでも各分野の知識を少しづつでも身に着けられるよう最大限努力するつもりである。
また、並行して違う視点でのアサラトの研究もスタートさせる予定でいるので、そちらもまとまり次第レポートにしたいと思う。
最後までお読みいただきありがとうございました。