欅坂46は返ってきた答案用紙だった
自分がいいと思ったもの、
「これはすごい!」とか「この人素敵!」と思ったら人にいいたい。
それは、ある種の人間の欲求だと思う。
欅坂にハマッた私は、当然それを言いたくなったわけだが、
人によってはドン引きされるかもしれない。
欅坂がどうとかじゃなくて、
若い女性アイドルグループにハマってると言ったら
ドン引きされるかもしれない。
言いたい。でも言ってドン引きされるのは困る。
でも言いたい。
そんな私の感情は二律背反。アンビバレント アバゥ。
そんな時、友人Cにランチに誘われた。
彼女とは20代の時に仕事で知り合ったのだが、
彼女とは年齢や出身地が近いうえに気があったので、時々こうして会っていた。
彼女も長い不妊治療を経験していて、授かった子どもを育てながら仕事をしていた。私はやめてしまったが、彼女は不妊治療の先輩だった。
「最近どう?」
彼女の問いかけに、私はこう返した。
「今ね、欅坂46にハマってる」
「欅坂46? どうしてまたアイドルに?」
「アイドルなんだけどね、アイドルっぽくないの。
不器用でがむしゃらで、あの子たちを見ているとね、
些細なことで悩んでた昔の自分を思い出すの。
彼女たちを応援しているうちにね、
『あの頃の自分も悪くないなあ』って思うようになったんだよね」
すると、耳を傾けてくれていた友人Cが言った。
「などほど。私の周りでもアイドルにハマった人がいるけど、
今の話を聞いてちょっと理解できたよ」
そして、こう言った。
「ウラちゃんにとっての欅坂って、
『昔受けたテストの答案用紙が今になって返ってきた』
みたいな感じなんじゃない?」
「答案用紙? それってどういうこと?」
首を傾げる私。友人Cの解説はこうだ。
テストを受けている最中は、
自分の出した答えが合っているかわからない。
その時の自分の心と頭で出した答えを書くしかない。
それが今、返ってきた。
「こんなことと書いてたんだな」なんて思いながら答案を見返すと、
合っていたものもあるし、間違っていたものもある。
でも、どれもその時の自分が出した最良の答えだった。
なるほど、と思った。
私にとって欅坂は、友人Cの言うように、
「思春期の私」が受けたテストの、
「返ってきた答案用紙」だったのだと思う。
肝心の点数は…まあ、それはいっか。
もしかしたら。
欅坂46の彼女たちも、この先しばらく経ってから
そして欅坂46という「答案用紙」の返却を受ける日が来るのかもしれない。