なぜ治療家がエビデンスベースの治療に移行しようとしないのか?
このブログではこれまでにさんざんこの業界(鍼灸、整体、マッサージ界)が嘘まみれであるかを紹介してきました。例えば以下の事柄は痛みや病気との因果関係は非常に低いとエビデンス上証明されいます。
しかし私がどれだけこのブログや本家ブログ(note.com/fascia)で紹介してきても多くの一般の方々はこう思うのではないでしょうか?
「お前は嘘つきだ!多くの治療家がそのようなこと(上記の事)を
Webサイトで謳っているし雑誌の記事などでも紹介されている!」
まあ、いいでしょう(笑)。それは一旦横に置いておいて、なぜ治療家達がエビデンスを無視し、科学的に考えたら全く嘘である理論なのにそれを用いて「ワシが治したる」「俺があの患者を治した」と悦に浸りつづける傾向にあるのか?それはズバリ患者さんの言葉
「良くなりました!」
「楽になりました!」
に惑わされているからです。そして「エビデンスなんて知らんわ!俺の患者はみんな俺の治療で治っとる!」って思い込んでいるからです。
しかしその言葉を治療家は真にうけてはいけません。なぜなら以下の理由を考えれば明らかです。
1、施術直後の患者さんの「楽になりました!」
これは治療効果を判定するのには全く不適切です。なぜなら痛みは感覚であり、常にいろいろな状況、環境で左右されるからです。(詳しくは本家ブログを参照) 例えばあなたの近くに肩こりの人がいるとしましょう。その人にもっともらしい言葉(例えば、このツボは肩こりに効くよ!など)を言いながらその人の人差し指を10秒ぐらい揉んでみてください。よっぽど疑い深い人以外は直後に「あれ?少し楽になったなあ。」と言うと思います。感覚(痛み)とはそんな程度でも変化してしまうのです。あるいはホリデーでビーチに寝そべっているときにその肩こりは同じように感じているでしょうか?その状況に左右されるという意味で最たるものが治療院という「セッティング」です。患者さんで流行っている治療院に行き、評判のいい治療師だと信じ、清潔感あふれる治療室で、心地の良い応対をしてくれ、気持ちのいい手技で体を触ってくれ、日常の雑踏の中から抜け出しベッドの上に30分から60分程度横たわるだけで通常誰でも「直後は」楽になることは明らかです。問題はその症状が明日、明後日、次週、2週間後、1ヶ月後どうなっているかです。
2、次回来院時の患者さんの
「あの後、楽だったのですがまた凝ってきました
(痛み出した)」
これも超あるあるで、その言葉を治療家は「そうですか・・・。やはり私の治療を定期的に受けないといけないとまた悪くなるかもしれませんね。できるだけのことはしますので一緒に治しましょう!」といって患者さんを延々と(治るまでと称して)治療院に通わせます。ではここで、一般的な骨格筋痛(肩こり、腰痛、膝の痛みなど)の予後(だいたいどれぐらい治るのにかかるか)を本家ブログから引用します。
上で紹介している症状をお持ちの方で、治療院に週に1−2回、半年以上通っている人も多いのではないでしょうか?多分それって治療院に通わなくてもそのぐらいの期間で治っていた可能性も高いのです(笑)。実はこの骨格筋の平均的予後についてちゃんと認識し、患者さんに説明している治療家は私の知る限り「私のまわりには」一人もいません(笑)。
ちなみに数ヶ月前に発表された論文では治療家にとってとてもとても都合の悪い事実を浮き彫りにしてしまいました。それは
多分あなたの肩こりや腰痛や膝痛は、痛みについてご自身で勉強し(私のブログ記事が参考になるかも)、慢性痛と深い関わり合いのある事柄を解消し(私のブログ記事参照)、ポジティブな気持ちで痛みに向き合っていけば長くかかっても上にあげた予後ぐらいの期間で治るはずなのです。
3、さらに次回来院時、患者さんから同様の言葉を聞く・・・
4、以下同文(笑)
まあ、そういうことです。鍼灸整体マッサージ院では通常上のような会話が成立していて、患者さんは「治療に通わないとまた悪くなるかも?!」という恐怖を植え付けられているのです(笑)。そしてそれが鍼灸整体マッサージ師の一番いけないことなのです!(このことについては次回以降のブログで書きます)
って、書いてきましたが、日々の臨床で一発で治ることもたまにはあります。そしてこのブログを読んでいる人でも「俺は誰々先生に痛みを一発で治してもらったぞ!」と反論してくる人も多々いるでしょう。また特殊な例として他のいろいろな治療院に通ったけど全くよくならなかったのに私の所で一発、というケースも稀ですがあります。そう言う時はたいてい
1、「トリガーポイント」が効いた
2、「たまたま私の治療方針と施術がすごく気に入った」
3、「たまたま治る時期だった」
などが考えられます。
1のトリガーポイントについてはまた別の機会に説明しますが、トリガーポイントの存在は医学的には認められていないし、治療効果も証明されていません。しかし効く時は効くのです(←これはマジ)。だいたい私の場合だと10%ぐらいがトリガーポイントの治療で劇的に改善すると感じています。
2は過分にプラセボ効果が強いと思います。3は誰にも正確にはわかりませんがそういうこともあり得るという話です。
まとめ
治療家がエビデンスで効果の認められている治療法を実践せず、プラセボ以上の効果がないとされている各種徒手療法(鍼灸整体マッサージなど)にこだわり続けるのは、患者さんからの言葉「治った」をそのまま言葉通りに受け取り、「俺が治した!」と悦に浸っているだけなのです。そしてまた来院してくる患者さんを「俺の治療が効いているからまた来てくれているんだ!」と思ってしまうのです。それが「一時的に症状が良くなった」だけなのかもしれないのに。そして挙げ句の果てには「俺の治療を定期的に受けなければまた痛くなるよ!」ということを患者さんの前で仄めかす傾向にあるのです。冷静な目で客観的に患者さんの痛みがその治療師の治療でどうなったのかを調べることができる人ならば、もっと患者さんにとって効果があり、また患者さんにとって費用が少なくて済む方法を提案していくと思います。
最後に本家ブログで紹介した痛みの科学の最先端で研究している著者の本で紹介されている「痛みの治療に役立つ71ナゲット+追加ナゲットの計77ナゲット!」の中からいくつか今回のブログに関連したことをここで引用しこのブログの締めといたします。