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中世編020-04:帝都防衛隊(04)

非常にグロい殺害シーンや屍姦などがあるため、
一般の趣味のお方にはお勧めできません。

※※※ 性犯罪とその残虐描写がありますが ※※※
※※※ 犯罪助長をするものではありません ※※※

   今回は、エログロシーンも僅少なため、
       無償公開と致します。

第1話:帝都防衛隊(01)
 https://note.com/uraent/n/n96445b9041d0
第2話:帝都防衛隊(02)
 https://note.com/uraent/n/n0e56cfcdf114
第3話:帝都防衛隊(03)
 https://note.com/uraent/n/n19e15fe35762

の続きとなります(有償記事です)。全部で8話程度になりそうで、色々と長い話がありますが、リョナグロロリ殺害系は今回もありません。ちょっと残酷なシーンがある程度です。

中世編のJらを派遣した大陸大帝国の顛末記になります。

色々と長い話がありますが、リョナグロロリ殺害系は今回もありません。ちょっと残酷なシーンがある程度です。

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【守城戦二日目朝】
 東西の門での戦闘は双方に多大な損害をもたらした末、終わった。チーナ側の戦死者150名、負傷者・行方不明者が300名、敵側の負傷者は不明だが東西それぞれの門の城壁近辺にアーヌ・ダハンの兵の死体が東西で数千の死体が転がっていた。

 チーナ側も1万の兵員の5%が失われた。だが、敵側も10万余の6%程を喪失した勘定になる。アラクゴは実質的な勝利と考えていた。何と言っても敵の目的である東西門突破を防いだ事が大きい。
 そして、損失兵力の比較も勝利とする要因だ。籠城側はほぼ全員が戦闘要員だが、敵は旅団編成で4割は輸送・支援の非戦闘要員、実質6万の戦闘要員の一割を倒した事になる。負傷兵もチーナ側と同比率だとさらに敵の戦力喪失は増える。

 東西の門の展開も守備隊配置に戻し、朝食の時間だ。ゼノビアが他の将官を宮殿大食堂に招集し状況確認会議がてらの朝食会が始まっている。

「東西に分けて貰えて助かったな」ゼノビアがラハブに語りかける。
「そうですね。敵軍がほぼ半分に別れてくれましたね」ラハブが不思議そうに答える。
「東西門、どちらかに集中されていたら面倒でしたね、抜かれていたかもしれません」マリーも不思議そうだ。
「北方民アーヌとチセン半島のダハンではソリが合わなかったのでしょう。元から対立されていましたし…」ゼノビアが苦笑しながら推測する。
「で、アラクゴ殿は?」ゼノビアがアラクゴの不在に気付く。
「大隊の再編成と補充兵の担当換えでお忙しいのでわたくしが代理で…」アラクゴの筆頭副官サミアが頭を下げながら応える。
「ああ、終わった戦闘の片付けと次の備えですわね」マリーが理解を示す。
「しかし、敵兵6000も倒して退けたのは勝利と言ってよいでしょう」ゼノビアとしては満足な結果と認識している様だ。
「で、他の隊の損害は?ラハブ殿の弓兵にも被害はあったのでは?」マリーが心配そうに聞く。
「我が隊の者も幾人か倒れましたが、補充兵で陣形は維持できます」
「そうでしたか、損害も軽微でしたね…… 。ところで、次の迎撃戦に向けて弓兵だけではなく投擲兵も出せます?」ゼノビアがラハブに投擲兵器での防戦の意図を伺う。
「はい、先ほど、城下中央広場に展開を命じました」
「北大門の北方5kmに敵の戦闘馬車が10両展開してましたわね」アグリスが敵の陣列を示す。
「ソヴィーの攻城戦主力部隊で正面突破か…兵力が圧倒的に勝る側としては当然の作戦だな」ゼノビアが自嘲気味に呟く。
「小賢しい真似をせず、勝てる正攻法を選んでますね」マリーも少し落胆気味だ。
「ホーキン城も北方領主の城も戦闘馬車で潰されましたね」
「もう少し愚かな将軍を敵にしたかったな。敵は選べないものだな」ゼノビアが苦笑する。

「敵の戦闘馬車が北大門に向かって動き始めました」伝令係が駆け込んでくる。

 一瞬司令部の中がざわつくがラハブが立ち上がり「北大門後ろに弓兵隊と投擲隊を展開!」と発令、続いてマリーも「剣兵も北大門へ展開せよ」と北大門重点の指示。司令部が一気に活気を帯び、それは城郭内の各部隊に伝わっていく。アグリスは副官ヒルダとともに司令部を辞去し北大門へ向かう。


【前線作戦司令部】
 4km四方の城壁に囲まれた帝都の城下街中央にある教会礼拝場に設えられた前線作戦司令部。城下警備隊隊長のアラクゴを囲んで10人ほどの各大隊長と伝令係が忙しげに動き回っている。
「敵の隊列は2列、各列5台の戦闘馬車で北大門に進行中です。敵戦闘馬車の先頭は北大門から4kmにて南下中」伝令係が伝えた通りに戦況図に10個のコマが置かれる。

「2列編成?」マーガスが驚き混じりの声をあげる。
「攻略なら5台並べて弓兵が撃つ態勢では?」ミリアムも隊列の奇妙さに驚いている。
 戦闘馬車は12頭立て馬車を4台を連結した長さ30m幅20m程の移動トーチカだ。それに弓兵を乗せて侵攻するのがこれまでのソヴィーの戦闘馬車の使い方だ。2列編成だと後列の戦闘馬車の射程が確保出来ない。

「敵の随伴兵は?」アラクゴの問いに伝令係が「戦闘馬車群の後方1kmに隊列がありました。騎馬5千騎に歩兵が多数、3万越えます…」と返す。
「戦闘馬車だけで北大門に突入する態勢に見えますね」大隊長のサーニャがアラクゴに問い掛ける。アラクゴは首を傾げる。
「あんなものがぶつかっても門はビクともしない」マーガスも同意する。

 2列縦隊の意図が掴めず司令部に「?」の表情が並ぶ。馬車の速度を活かして5列編成で前衛弓兵と後衛補給で急襲…というのが、これまでのソヴィーの戦法だった。
「隊列の意図が判らないな」アラクゴがサーニャとサミアに問い掛ける。
「北大門の外側はほぼ更地かテント、横展開に地形制約はない……筈ですね」サミアも不思議そうに戦況図を眺めている。

「敵の進軍速度は?」サミアが伝令係に問う。
「速度は…現在の処、30分で200mから300m、極めてゆっくりと前進を続けています」伝令係が補足する。

 展開速度の遅さに司令部の「?」表情が増えて濃厚になる。
「敵の進軍速度がずいぶんと遅くありませんか?」戦闘馬車は大型だが使われている馬も多く普通の兵装・軍兵なら1時間で6kmは進める筈だ、だが1時間600m進軍は遅い。
「ソヴィーの連中、威嚇しているつもりかもね」ミリアムが戦況図の敵隊列を嘲る。
「いや、威嚇なら横に並べて威風を示し進撃も速い筈……」サミアが異議を唱える。
「低速なのは馬車の中に何か隠しているのかも…」サミアが続ける。
「通った後の轍(わだち)は?深さと幅が知りたい」マーガスが伝令係に聞く。
「轍は…後続の兵の歩幅からすと30cm程の幅で10cmは沈んでいたかと…」
「そんなに沈んでいたのか?」
「はい、確認出来たのは先頭2台だけですが、4本の轍がそれくらいでした」
「あと、戦闘馬車の高さは?」
「えーと……目測では4m近いかと記憶しております」

「4mの高さで10cmの轍…… 何かありますね」サミアが呟く。
「鉄の塊でも運んでいるのかしら?」ミリアムが不思議がる。
「轍の深さからするとレンガ造りの家とかもありそう」

「それもあるが……」とアラクゴは戦況図を見詰めている。

「この遅さだと、あと6、7時間は掛かるわね」マーガスがうんざり顔だ。
「ご到着はお昼すぎ、夕方に差し掛かるかしら?」サミアがおどけた表情で「ちょっと早いですが食事にしませんか?」と提案する。
「大戦闘の前に食事交代?」サミアの提案にミリアムが少し驚いた表情になる。
「なに、現場で料理したら交代はいりませんわ」サミアが悪戯っぽく答える。
「現場で料理して昼飯?士気が緩みます」不満そうにミリアムが返す。
「腹が減ってはなんとやら…どうですか?」

 未明まで続いた東西門での戦闘で疲労が残っている兵も多い、一部は交代要員と入れ替えてはいるが、主戦場になる北門付近で休息兼待機施設では緊張が解けない。待機施設での朝食は質素な軍用携帯食で凌いでいる状況だ。

「あの速度だと昼を回った頃に北大門から1kmほどですね。交戦はまだ先ね」アグリスもサミアに同意を示す。
「遅さは見せかけかもしれません」ミリアムは食事に反対の様だ、アラクゴが苦笑する。
「いつでも戦闘に入れる様に城壁でお食事って、そう悪い考えかしら?」サミアは下がらない。

「前線で料理と食事だなんて前代未聞だわ」ミリアムが反論する。
「いや、前線といってもここはナーキン城ですわ」サミアは楽しそうに答える。
「ナーキンであっても最前線です」
「遠征派兵での最前線ではありませんわ」
「兵糧も料理道具も、料理人も揃っていますね」マーガスが割って入る。
「もっと他にやることないのかしら?」
「あら、私の隊は既に準備は出来てるわ、でも、時間が余っちゃうのよ」ミリアムの戦闘第一主義と、サミアの事前調整重点主義の差がでる。
「わ、私の隊だって準備は出来ています。余った時間を点検や確認に使うべきではないですか?」
「点検も終わりましたの、で、この5時間ほどを有効に使いたいのよ」
「まあ、大隊長同士で言い合っても仕方あるまい」

 面白そうに副官たちの飯談義を見ていたアラクゴだが、今度は副官たちがアラクゴを見ている。まさか、飯の調理・給仕の決定をさせられると思ってなかったアラクゴがすこし慌てる。
「よろしいですか?」サミアがアラクゴに問う。
 私が決めないとダメなのかな?と少し苦笑しながらアラクゴはうなづく。

「では、準備を始めますね」マーガスも賛同している様だ。
「でもお酒はだめですわよ」サミアが嬉しそうだ。
「まずは、お肉ね、お肉。ついでに魚と米ですね」サーニャも乗る。
「焼いて煮て揚げて、スープもいいですね」
「揚げ物も、ですか?」ミリアムが調子に乗るな…という表情だ。
「やるなら、まともな料理じゃなくちゃ勿体ないわ」
「我がチーナ各地方の名物料理も並べて敵を迎え撃つ…そういう風に考えると士気もたかまるでしょうね」アラクゴの配下5000人の城内外警護軍とアグリス配下の2000人のナーキン城周辺警備軍は色々な地方からの流れ者の末裔も多い。

「宮殿の厨房に鍋釜が余っていますよね」マーガスが部下に指示をだす。大半の非戦闘員・役人は避難しているため、厨房道具が大量に残っている。さらに城壁内市街地にある飲食・宿泊施設の厨房も同様だ。そういった厨房道具が北門城壁に集められていく。


【北大門・城下食堂】
 唐突な前線になる城壁での糧食、それも食堂でいつも食べている料理より豪華という状況に兵士たちも喜んでいる。作戦展開されていた兵も喜んで鍋釜や材料・燃料を城壁の上に運び上げ、肉焼きグリルや揚げ物鍋を並べて早速調理を始める。北大門上の見張り場では大鍋に油を沸かして揚げ物も料理されていた。

北大門の前の空き地には焚き火調理台が並び各地から集まった兵たちがお国自慢もあって各地の自慢料理がずらりと並ぶ。軍の飯に飽きていたのか、宮殿防衛部隊の者もぞろぞろと集まってくる。

 肉だけなく魚も焼かれ飯も炊かれ、北大門の上の回廊と城壁内での料理会と食事会が始まった。炒め野菜やスープなども振る舞われる。前線配備の兵だけでなく非番待機中の兵や宮殿警備担当の兵も混じって大料理大会だ。

 城下街中央に設えられた前線作戦司令部にも料理の匂い、さらには宮殿まで匂い、嗅ぐ者によっては芳香が襲ってくる。非番の兵だけでなく宮廷防衛隊の兵士たちもちょっと早めの昼食にありつこうと集まってくる。


【宮殿庭園】
 状況確認会議が終わったゼノビアら将官や事務官らも料理の芳香に気づき、宮殿の庭園から城下を見下ろす。

「いい匂いと思ったらあんな所で料理って」皇族警備部隊長マリーがやや呆れ顔だ。
「困ったものだわ」ゼノビアが料理大会の様子を眺めて苦笑する。
「止めさせましょうか?」ゼノビア筆頭副官の第2宮廷防衛大隊隊長ベルタが聞いてくる。
「いえ、城下街エリアはアラクゴさんとアグリスさんの管轄ですわ」
「では、何を困られたのですか?」ベルタが戸惑った表情だ。
「朝ご飯をはやまったかしら?ってね、あちらの方が美味しそうですわ」
「戦いを前にして、こういう緊張感のない…」マリーが愚痴っぽく言うと「臨戦態勢で十分な食事というのも悪くないわ」とゼノビアが微笑む。
「いったい誰がこんな事を思いついたのかしら…いただけませんわ」マリーは少し不満気味だ。
「アラクゴさんの参謀サミアさんのアイデアでは?」ゼノビアが楽しげに予想する。
「何を考えているやら…」宮廷防衛弓兵部隊長のラハブもやや不機嫌そうだ。

 敵軍の速度は変わらず、昼を過ぎたところで2列縦隊で北大門から2km強の位置だ。アラクゴらが敵戦闘馬車の形状や重さを測ってはいたが、何を隠し持っているかは未だに判らない。強行偵察も立案されたが、生半可な軍勢では戦闘馬車軍を直掩する騎馬隊に殲滅されるだけだ。ナーキン防衛軍はじりじりと待たされている状況にある。

「こういう状況で1番大事な事って何かしら?」ベルタとラハブ、マリーの3人にゼノビアが楽しそうに謎掛けする。
「準備を充実させることです」ラハブが真っ先に答える。
「相手の態勢布陣に合わせ、迅速に対応する、その態勢を敷くことでは?」マリーも続く。
「難しいですね。準備は万端ならそれ以上はありませんし、相手の展開も見えずに配置を変えるのも兵の疲弊を招きますわね」ベルタが悩ましげに答える。

「準備は整っていますわよね?」ゼノビアが苦笑する。
「既に整えております、布陣も迅速に対応できます」準備を怠っていると云われたと思ったラハブが答える。
「あら、貴女が手を抜いたというお話ではありませんわ」ゼノビアが思い違いを正す。
「布陣も準備もこの狭い城壁内では限界があります、ですが出来る限りを…… 十分とは言えませんが…」ベルタが心苦しそうだ。
「そうね、敵を撃退するのに十分な準備も布陣も無理ですわね」ゼノビアが付け加える。
「あの軍勢の本格的な襲撃… 確かに、『十分な備え』は無理ですわね」ベルタも考え込んでしまう。

「幾人(いくたり)かは敵の本格攻撃で失われますわ、それはこの軍の誰もが、嫌と言う程、知っていますわよね」ゼノビアが強めに言う。
「無傷で終ると考えている呑気な兵も士官もいないでしょう」何を当然のことを?と不満げにマリーが答える。

「そうね、そんな不安と恐怖のままに兵を長時間置く士官、正しいと思います?」
「この大事な戦いの前にあの様な放埒、士気と軍律が緩みかねません」マリーが食い下がる。いつも通りの軍規軍律前提のマリーとラハブだな…と二人を微笑みながら見ているゼノビアの横からベルタが付け加える。
「戦闘前の士気鼓舞や慰安は軍律に逸脱しておりませんわね」
「そうね、アラクゴさんとアグリスさんの軍の士気も高まることでしょうね」

「では、いっそのこと、全軍をあの饗宴に参加させたら宜しいのでは?」ラハブが不貞腐れ気味だ。弓兵をアラクゴに提供しているラハブとしては気分が良くない。
「それは良いお考えですわ、宮廷防衛大隊は当番直(ちょく)を4時間ほど解いておいてね」ゼノビアがベルタに指示を出す。ベルタは苦笑しながら一礼し宮廷防衛大隊の控室に向かう。
「え?宮廷防衛大隊がですか?」ラハブが驚いて聞き直す。
「そうよ、いけないかしら?あたくしが管轄する大隊ですのよ」
「…… 大隊の長として決めろと言うことでしょうか?」マリーも不満顔だ。
「いえ、あたくしは決めた…… それだけよ。決めるもよし、自由にさせるもよし、それも大隊長の考え次第ですわ」

 大隊の兵の緩急は大隊長が決める、つまり、饗宴参加の判断をゼノビアから遠回しに要請されている。自分の大隊の士官兵卒に参加を許すか禁じるか、あるいは非番兵の自由に任せるか?
 【強制はしてない】というアリバイを作りながら、でも、確実に大隊長としての【判断表明の義務】に追い込む。ゼノビアの狡猾な罠にマリーとラハブが追い込まれた。

「禁止もしませんが、直(ちょく)は解きません」ラハブが答えるとマリーも渋々ながら「わたしも同じく…」と答える。速やかに各部隊・兵卒に参加自由が告示されると饗宴が賑やかになっていく。


【埋葬部隊】
 チーナ城壁内の各地料理自慢大会の賑やかさも盛りを過ぎた頃、筆頭修道女ビルギッタ‎がメダイを伴って宮廷内の司令本部に現れる。

「折り入ってご相談があります」ビルギッタがゼノビアに会釈しながら話しかける。
「これはこれは、修道院で何かありましたの?」二人を迎え入れたゼノビアが不審げに問い掛ける。
「東西の門、修道女を通していただけませんか? 開門とは言いません、通して頂きたく」
「門は岩積みで封鎖中だけど、人が通れる隙間は作れますわ」
「東西両門、修道女15名ずつ外部に出したく…」

 15名ずつ…東西あわせて修道女30人を脱出させたいという事か?とゼノビアの表情が訝(いぶか)しげになる。
「脱出されるのはご自由ですわ。でも、敵軍の追撃は振りほどけないですわよ」
「脱出や避難のためではありません、城壁近隣の遺体の埋葬したく…」メダイが言葉を繋ぐ。
「埋葬でございますか?戦没兵の埋葬についてはご依頼してはおりませんが…」副官のベルタも不審げだ。
「いえ、遠見と効き耳の者が帰還しておりませぬ故、死体の有無を調べたく…」
「そのついでに兵の埋葬もして頂けるという事ですのね?」
「はい、東西で合わせて50名ほどの未帰還者、その内、修道女は、見習いもいますが…5名が行方不明なので確認したく…」

「戦闘に巻き込まれた方々のご遺体を確認したい、出来たら埋葬したいのね?」
「はい、東門で2名、西門で3名、時間があれば埋葬、あるいは荼毘に付したく…」
「時間もそれほどは取れません、敵軍が400mに近づいたら出入口は封鎖されますが、宜しいですか?」
「はい、あと5時間ほどはあるかと…宜しいでしょうか?」ビルギッタが確認を求める。

 修道院も負傷兵治療と蟲玉投与で忙しいだろうに…… と、ゼノビアとしては不審があるが決断が急がされている。ベルタの表情を見ても判断に倦(あぐ)ねている様だ。さて、どうしたものか?とゼノビアが悩む。
「門の警備と相談しなくちゃね」
「東西の門は、今は、アラクゴさんとアグリスさんの管轄です」
「そうだな、まずは彼女たちに相談だな。私も立ち会おう」

 ゼノビアがビルギッタらを伴って城下中央の前線作戦司令部を訪れると、アラクゴたちが美味しそうに各地の名物料理と対決していた。
「修道院の方々が弔いをしてくれるそうだ、協力して損はないでしょ?」ゼノビアの話を受けてアグリスもアラクゴも即座に快諾する。
「東西の門の通用口なら封鎖はすぐに解けます。丁度よい腹ごなしにもなりますわ」
「問題ない。護衛も20人ずつ付けなさい」二人の賛同もあり、護衛担当の兵もすぐに応募者が埋まる。

 東西の門の脇にある封鎖された通用口を塞いでいた岩が取り除かれ、埋葬担当の修道女と護衛兵士が城壁外で死体の調査が始まる。城壁のすぐ外、敵兵の死体が折り重なっている中から自軍兵と修道女の遺体を探す作業だ。

 護衛役の兵士は敵兵の不在を確認しつつ埋葬用の穴を掘る。深さ1mに5m四方ほどの穴を掘り終えた頃には40名ほどの自軍兵の遺体が見つかった。兵士の遺体は城壁からの落下の傷の上に、敵兵に刺突を受けてずたずたにされていた。兵士の遺体は行方不明者の8割ほどが見つかったが、修道女の遺体は一体も見つからない。

 修道女の制服は敵味方兵士とはまったく異なっている。遠目でも発見しやすく見落としされる事もないが、行方不明になった修道女は衣服も遺品も見つからなかった。
「見当たらないわね、もうちょっと範囲を広げましょうか?」城壁から300mほどまで捜索範囲を広げていた兵士が修道女に問い掛ける。

「いえ、これ以上は不要です。この範囲で見つからないのでしたら、あの子たちは敵兵に連れ去られたのでしょう」修道女は意外とサバサバとした表情で答える。連れ去られたら逆に心配するものではないか?という疑念が湧く。

 兵士の遺体が掘った穴に仰向けに並べられ、その穴の四隅に修道女が立ち、祈りを上げている。祈りの合間に遺体の上に木切れが置かれ、さらに麦わらで覆われる。
 護衛役の兵士も並び黙祷を捧げるなか、修道女によって火が放たれる。

 埋葬部隊が城壁内に戻り、ゼノビアらに結果を報告する。
「残念だったわね。貴女がたが探していた子たちはいなかったね」結果を聞いたゼノビアが慰めの言葉を掛ける。

「いえ、わたくしどもとしては望ましい結果です」とビルギッタが答える。
「え?お仲間のご遺体が敵の手に落ちて望ましい?」
「はい、修道女としてあの連中に唯一痛手を与える手段として…」
「そうか……」連れ去られた若き修道女は輪姦、あるいは屍姦されたであろう…… 蟲玉の隠された効果が期待される… 悲しげな表情に隠れたビルギッタのほくそ笑みにゼノビアは気付いて軽く慄然とする。


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