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400円の麦茶は110円の麦茶の味がする

昔から算数も数学も苦手で、塾に通ったりもしたけれどどうにも授業のスピードについていけず、高3のクラス選択では元々そのつもりだったとは言え、私立文系を選択せざるを得なかった。

数字という概念は未だによくわからない。
何分の1、と言われても「それが自分に当たるかなんて結局運命だな」と思ってしまうし、何割引というのもぼんやりなんとなくでやり過ごしている。どうも数字とは相性が良くなさそうだ。

とはいえ二十数年人間社会で生きていると、感覚として慣れてくるものだ。
深夜の散歩の帰りに自販機で1010円を入れて、110円の麦茶を買って、お釣りが落ちる音が均等に5回しか聞こえなかったときには違和感を覚えた。何かがおかしい。
釣り銭口には100円玉が5枚しかなかった。
いくら数字が苦手でもそれくらいの数は数えられる。手元が狂ったのか。一応足元や自販機の下も探したが見当たらない。聴力には自信がある。絶対に、お釣りの音は5回しか聞こえなかったのだ。あと、1010マイナス110くらいはわかる。900でしょ!(ピンポン)

400円の麦茶は110円の麦茶の味がする。
土曜の深夜にはお客様センターは通じない。土日祝日はお休みらしい。週休2日はいいことだ。(週休3日はもっと良い)
そんな時間に外出するからだ、ととある人に言われたが、どんな時間でもお釣りは正しくあって欲しいし、それが自動販売機というものだ。夜間に外出したからといってと言っても夜間にも法やマナーは適応される、とは言い返したものの、そうじゃない国もあるし、深夜の立ち飲みなんてマナーやモラルなどマントルの彼方なので少しは私にも非があるのかもしれない。天罰だなんて思いたくないけれども。だいたい午前1時過ぎに外を歩いただけで天罰だなんて裁量が狭すぎやしないか。
喉は潤っても精神は干からびてささくれ立つ。

平日を迎えてから自販機の会社に連絡を入れた。お釣りが足りないようなのです、と。たかが400円だがされど400円。サイゼリヤのパルマ風スパゲティがいただける値段だ。
でも、がめつい人とは思われたくないので、申し訳なさそうに、あくまで確認を、と伝えた。
確認が取れたら連絡すると、電話の向こうの女性が言った。

あれから数日経つが連絡はまだない。
もしかして、私が数え間違った?たった5枚を?

せめて、釣り銭口の時空が歪んでいて、パラレルワールドの私お財布にでも繋がっていることくらい妄想させてほしい。
パラレルワールドの私、パルマ風スパゲティをお食べ。私の奢りです。



サポートの分だけ強くなりたい。 アスファルトに根を張る大根のように。