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美容師さんは物理的Photoshop

体感で5億年ぶりくらいに美容室へ行き散髪を行ってきた。
本当は他に書こうと思ったことがあったのだけれど、あまりに感動したのでその感動のままで書いています。

まず、Photoshopについては「被写体の魅力を最大限引き出すためのツール」として認識していることをご承知おきください。
決してインチキ合成写真とかクソコラとかを作るためのものではない。
あの感動の最中、己の持てる語彙力のすべてを絞り出した最大限の賛辞である。

翻って、本日の体験談である。
とにかく髪は短いのが好きで、世の中の大半の人よりも短い状態をここ7年ほどセルフカットで保ってきた。
顔や耳や襟足に毛先を感じるのが絶対に嫌で(謎の固執)そうならないように、だけれども「人との他愛ない会話」が規定されていないがために他人に任せることもできずにずるずるとセルフでいた。

だが、今月末には小樽で第一管区海上保安部主催の総合訓練がある。
観閲式の時には行かなかっただろ、と言われてしまえばそれまでだが、ついでに転職もしてることだし一旦リセットする意味でも行くことにした。

前置きが長くなったがここからが本題である。

なんか、もう、すごい。

「短くていいです、可能な限り」という注文を受けてからのためらいのなさもそうなのだけれど、小気味好く進めていく鋏の速度と音と軽やかさ。
的確に掘り出されていく髪型。
バリカンは髪の毛の根元深くまでしっかりと差し入れて容赦なく刈るものだと思っていたが、刃先の細やかな振動だけでなぞるようにして産毛を消していくのに使うのだと、ついさっき初めて知りました。

高度な技術は魔法と区別がつかない、とはSF作品でよく言うが、まさにそれである。
後頭部を梳かれているあたりなど「あっこれ不透明度30%くらいの覆い焼きブラシでうっすらほんのりハイライト強調してるあれだな……?」みたいなPhotoshop思考から離れなれなかった。

あと、突然のあの質問。あれはなんなんでしょうね、必要なのだとはわかるんですけど。
「前髪は自然な感じにとっちゃいます?それともぴっちりします?」

パードゥン?

そのif構文まだ私の中で宣言されてないんで、まずちゃんと
var maegami = shizen.Na.Kanji とかで表してもらっていいですか。
で、ちゃんと条件分岐させてくださいちょっとよくわからない。混乱が見てとれる。

あれは呪文である。私にはまだ自然な感じにとっちゃう前髪というのが想像できずにいる。
今すでにその自然な感じにとっちゃった前髪になっているはずなのだけれども。わからぬ。メロスも多分、政治に対してはこうだった。わからぬ。

そしてこの感動を与えられるようになるまで、あのお兄さんがどれほどの努力を重ねどれほどの人間に相対し、その経験値を的確な技術力へ変換してきたか。

思うだけで心からの拍手を送りたくなる。この培われた確かな技術へ、あんなに安い金額でよかったのだろうかとすら思う。

技術という数値化しにくいものに対して、なかなか万人共通の価値観というのは難しいだろうけれど、ずっと昔から言われている「技術に対しては適正な価格を支払うべき」というのはまさにそうだと声を大にして言いたい。

時間にして30分弱。その30分弱でこの結果を作り出せるようになるまでの、お兄さんの今までの研鑽に対して、適正な代償を払ってきただろうか。
日本にチップの文化があったら、財布の中身をそのまま全部差し出してきたくらいには感動した。

あくまでこれは7年ぶりくらいに美容室に行って、あまりにも久々に人に髪を切ってもらうという経験をした立場が、いうなれば酔っ払った千鳥足の夢見心地で書いている文章なのだけれど、少なくとも魂に素直になった言葉たちである。
それだけは保証したい。

そして、服飾とは武装である。少なくとも。
この話はまた長くなるので、明日か明後日か、また思い出した時にでも書くけれども。

世の人間はあんなに気軽に魔法を目にしに行っているのか………と世界の新たな一面を見たような気がした。
少なかった会話の端々からおそらく自分で適当に切っていたことは完全に見抜かれているので、次からはちゃんと定期的に行きたいと心がけて生きるようにします。

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