【西洋建築史】テンピエット(イタリア/ローマ)
前回からの続きです.
◆平成12年に問われた知識(テンピエット)
平成12年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.
【解説】
テンピエット(1502年,イタリア ローマ)は,D.ブラマンテの設計による円形の礼拝堂.上下2層からなる小規模な集中式円形堂(直径約8m)で,1層の周囲に柱廊をめぐらし,頂上に円屋根を載せる「ルネサンス建築」の代表作であり,完成形とも言われる.古典建築(ギリシャ・ローマ建築)のオーダーとドームで構成され,装飾を排除している.正円や正方形といった単純幾何学による造形がルネサンス建築の特徴である.
ルネサンス様式についての分かりやすい動画解説は↓(YouTube)
このテンピエットは後に,ローマのサン・ピエトロ大聖堂や,ロンドンのセントポール大聖堂,アメリカの国会議事堂などに影響をあたえることになる.
【解答】◯
◆平成29年に問われた知識(テンピエット)
平成29年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.
ここまで学んできた知識で得点できる内容です.
【解説】
西洋建築史で得点を稼ぐコツは,ローマ帝国でキリスト教が公認され(313年),各地で教会堂が建設されるようになる前の時代(ギリシャ,ローマ時代/通称 古典)と,その後のキリスト教建築の時代とで分けて考えることにある.
C.ローマのパンテオン(イタリア)は,キリスト教が広がる前のローマ時代の建築物(古典建築)であるため,A~Dの中で最も古い建築である.そのため,解答は,選択肢3か4のいずれかに絞られる.
次にA.ローマのテンピエット(イタリア)は,ルネサンス建築の代表作であり,ロマネスク → ゴシックといった「神のための建築から人間のための建築へ」と考え方が切り変わった時代背景の中で誕生した.
B.ル・トロネ修道院(フランス)は, 本番当日,過去に出題されたことのない新しい知識として出題されたが,修道院というキーワードから,ルネサンス以前のロマネスクか,ゴシックの様式であると推論して欲しい.
一方で,問題文をよく見ると,2.3.4.選択肢は,いずれも最後がD.ロンドンのセント・ポール大聖堂(イギリス)となっている.こういう場合は,正答枝は2.3.4.選択肢のいずれかになるケースが多い.ここにも,問題作成者の愛情を感じる.一級建築士学科試験では,少数の学科受験生しか得点できないような難問も出題されることはあるが,「過半の受験生が得点(正答)できるような問題」さえ得点できれば,合格点を突破できるように出題される.一見,難問に見えても,この問題のように,問題文とよーく向き合うことで,出題者の愛情をくみとれます.そのためにもキーワードのみ単純暗記でなく,知識どうしをストーリーで理解するように心がけましょう.この事実を知った上で,本番に挑んでください.
【解答】4.C → B → A → D 続く
以上