【学科】同潤会アパート(用途/集合住宅)
前回からの続き【建築作品を学ぼう♪】シリーズ
1923年の関東大震災から2023年でちょうど100年目を迎える.
今回は,関東大震災を契機に設立された同潤会アパート.
一級建築士試験では,江戸川アパートの知識が問われている.
■解説
~↓↓↓1分で解説!YouTubeショート動画↓↓↓~
1923年に発生した関東大震災は,東京や横浜の市街地を焼き尽くし,10万余りの命が奪われた.家を失った多くの人々は,地震や火災に強い住まいを求めた.そういった背景のもと,住宅復興を目的として,国内外から寄せられた義捐金(ぎえんきん)の中から1,000万円を財源として設立された財団法人が同潤会である.当初は震災復興用の応急住宅を建設し,その後,耐震耐火の庶民住宅の供給を目指し,アパートメント・ハウス事業として,東京と横浜などの市街地の16ヶ所に都市型アパート(団地)などをつくり,それらは同潤会アパートと呼ばれた.
同潤会アパートは,関東大震災での教訓を活かし,耐震性に乏しい組積造や,耐火性に弱い木造を避け,耐震・耐火性の高い鉄筋コンクリート造(RC造)で建設されている.
同潤会シリーズの中でも「東洋一のアパート」と称賛されたのが江戸川アパートメント(東京都新宿,1934年)である.同潤会のアパートメント・ハウス事業として,最後に建設されたため,同潤会アパート シリーズの集大成とも言えるアパートである.動画解説(You Tube)はコチラ↓
このアパートには,共用施設として,児童遊園,食堂,浴室,社交室,理髪店があった.さらに,江戸川アパートメントの大きな特徴として2棟の住棟に囲まれた中庭がある.各住戸には,コモンスペースとも言える,この中庭を経由してアクセスする.この中庭の存在が,住民たちの地域コミュニティへの帰属意識(みんなアパートとしての認知や一体感)を育んでいた.
上図の上部分に1号館(6階建で,コの字型の住棟),下部分に2号館(4階建で,一の字型の住棟)が,中庭を取り囲むように配置された.また,上図の左上部分の1階には食堂があり,その地階に浴場と理髪店,2階に社交室が配置されていた.これらの共用施設は居住者だけでなく,近隣住民も利用することが可能で,多くの地域交流を促すことを意識してプランニングされている.
ファミリータイプだけでなく,独身者用のワンルームタイプの住戸もあり,さらに,当時には珍しく,各住戸には浴室や水洗トイレ(日本初)があり,ダストシュートやエレベーター,ボイラーを使用した蒸気暖房によるセントラル ヒーティング等も完備されていた.まさに,都市化型アパートの理想的モデルである.
老朽化により惜しみながらも2003年に解体され,新しい集合住宅(コチラ)へと建て替えられた.
このように,同潤会アパートでは多様な共用施設を中心に,東京・横浜といった都市型の住民コミュニティを形成しながら,住民が都会での生活を快適に暮らせるようにデザインされていた.江戸川アパートのように,居住者だけでなく,近隣の住民も利用可能な共用部も整備された計画もあり. また,家族世帯(ファミリー層)だけでなく独身者の入居も想定され,多様な使い方を想定してプランニングされていた.こういった建築的成功実例が,同潤会や江戸川アパートが一級建築士試験問題として頻出される理由となっているのであろう.
■学科試験ではどう問われた?
平成3年(1991年)にはこのように問われました↓
【解答】×
関東大震災の被害の大きかった東京や横浜の市街地に建設された.
平成7年(1995年)にはこのように問われました.
【解答】◯
平成12年(2000年)にはこのように問われました↓
【解答】〇
平成6年(1994年)にはこのように問われたました↓
【解答】〇
平成14年(2002年)の一級建築士「学科」試験で問われた知識です↓
【解答】✖
一般的な団地のように住棟を平行配置せずに,中庭を囲むように1号館と2号館が配置されている.また,1〜2階の低層住宅でなく,4階〜6階の中層住宅である.
■まとめ【サマリーキーワード】
✅東京・横浜などの市街地に建設
✅当初は震災復興用の応急住宅を建設
✅組積造や木造でなく,耐震耐火性に強いRC造
✅最後の同潤会アパートが江戸川アパート
✅江戸川アパートは共同施設付き
✅江戸川アパートは中庭を囲む配置
■建物概要(製図試験対策用)
【建 物 名】同潤会 江戸川アパート
【設 計 者】財団法人 同潤会
【所 在 地】東京新宿区
【竣 工】1934年
【階 数】2棟 1号棟:地上6階地下1階 2号棟:地上4階
【構 造】鉄筋コンクリート造
【敷地面積】6,813.73㎡
今回は以上です♪
次の建築作品へ続く
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