【学科】芦屋浜高層住宅(用途/集合住宅)
前回からの続き【建築作品を学ぼう♪】シリーズ
今回は,兵庫県芦屋市にあります,芦屋浜高層住宅.
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■解説
~↓↓↓1分で解説!YouTubeショート動画↓↓↓~
学科試験対策としては,前回,ご紹介した晴海高層住宅(コチラ)の進化系だと覚えて欲しい.晴海高層住宅は3層ごとのユニットだったが,この芦屋浜高層住宅は,5層ごとに空中公園と呼ばれる共用階を設け,その空間が鉄骨トラスで構成された大梁空間(大梁でありながら空間となっている)となっており,それを同じく鉄骨階段の柱(これも柱でありがながら階段室という空間となっている)で支えるメガストラクチャー(大架構システム)を形成している.
そして,上下の空中公園に挟まれた4層部分に住戸ユニットがはめ込まれている.晴海高層住宅では,バルコニーの手すり部分にプレキャストが用いられているが,この芦屋浜高層住宅では,住戸ユニットそのものがプレキャスト版で構成される.メガストラクチャーが採用されているため,構造体から切り離された住戸ユニット内には梁や柱が無く,自由に間取り可変できる空間となっている.
エレベーターは共用階(空中公園)のみに停まるスキップ フロア型であるため,各住戸には,共用階から階段を上がるか下りるかしてアプローチする.これも晴海高層住宅と同じ構成である.
空中公園は,住人同士のふれあいの場や幼児の遊び場となることを想定して設計されている.また,上階に延焼する危険性を回避する防災機能も併せ持ち,災害時は避難場所としても使用される.
住戸ユニット内の台所,浴室,トイレといった水回りは,設備ユニットとしてパッケージ化し,工場で生産後,現場に搬入して組み立てる方式で,品質の安定化と,現場での職人の手間を削減することによるコストダウンを実現させた.
さらに,地域エネルギープラントから高温水を送水して熱を供給する地域暖房給湯システムや,ゴミ投入口から搬入パイプで自動的にゴミを処理場へ運ぶ真空ゴミ収集システムなども完備し,当時の最先端の住環境を備える住宅団地であった.
当時の日本は,人口増加に伴う深刻な住宅供給の不足に頭を悩ませていた.この頃は高度成長期で,従来の工法では,供給不足を解消できない.そこで,住宅建設を工業化することで迅速化を図ることが目指され,それに向けて民間企業が保有している技術を結集させるための設計コンペが実施された.民間企業から集まった工業化高層集合住宅の中で,最も優れたアイデアで建設し,当日の最先端技術を結集した成功モデルをつくる.それによって,全国の集合住宅の工業化・高層化を一気に促進させていく狙いもあった.
全127企業が22グループを作って応募し,25提案の中から第一位となったASTM企業連合の案が採用され,この芦屋浜高層住宅が建設された.
※ASTM企業連合
A:芦屋浜 S:新日本繊維(当時) T:竹中工務店・高砂熱学工業
M:松下電工(当時)・松下興産(当時)
■学科試験ではどう問われる?
平成13年(2001年)の一級建築士「学科」試験で問われた知識です↓
【解答】〇
■まとめ【サマリーキーワード】
✅工業化法による高層住宅団地
✅5層ごとの共用階には空中公園
✅住戸や水回りのユニット化
✅地域暖房給湯システム・真空ごみ収集システム
■建物概要(製図試験対策用)
【建 物 名】芦屋浜高層住宅(シーサイドタウン)
【竣 工】1979年
【階 数】地上14階~29階建て
【構 造】鉄筋コンクリート造
今回は以上です♪
次の建築作品へ続く.