【西洋建築史】セント・ポール大聖堂(イギリス/ロンドン)
前回からの続きです.
平成29年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.
【解説】
バロック建築(静的で,調和や安定を重んじる古典美学のデザイン抑制から解放され,動的で,より劇的な効果を求めるデザイン(具体例はコチラ))は,イタリアのローマから始まり,ヨーロッパ各地へ伝播していった.
フランスでは,バロックでありながらも,古典美学を重視した,いわゆる古典主義的バロック建築がデザインされていたった.その代表作品がヴェルサイユ宮殿である.
そういったフランス バロック(=古典主義を重視)に影響を受け,イギリス バロックも古典を模範とすることで,デザインが抑制される美学を求めた.そんなイギリス バロックの代表作品がセント・ポール大聖堂である↓
↑のように,西側の双塔からアプローチし,身廊が続く.身廊に直行する翼廊の交差部に,3重殻の大ドームがのる.
大ドーム部分の底面から頂点までの高さが高くないと,外観上の見栄えが悪くなり,逆に,高すぎると内部から見上げた際に,ドームの内部が暗がかってしまう欠点があった.
その問題を克服するため,セント・ポール大聖堂の大ドームは,内殻,中殻,外殻の三重構造となっている.内殻と中殻(円錐形)は煉瓦造,外殻は木造小屋組みに鉛板張りとし,外側からはドームの高さが高く見えるようにし,内部からは,ドームの高さを低く抑えて,自然光が溢れるドーム空間を実現させている.
空間構成が分かりやすいYouTube動画は↓
セント・ポール大聖堂は,ラテン十字型の平面や,西側に双塔があり,そこから東に向かってアプローチするゴシック建築風の構成となっているが,デザイン全体は古典主義的なバロック建築であるため,問題文の記述は誤り.
【解答】✗ 続く
【参考となるYou Tube動画】時間のない方は視聴不要
以上