ゆけ、荒野はまだ遠い
指輪は無い。
目指す塔も無く銃も無いおれには、それでも使命があった。
鞄、スーツ、革靴。左手には携帯端末。
アスファルトの上を歩いて何日経ったろう。
ギラギラと照りつける太陽。
真夏の梅田を思い出す。
「ちがう!」
俺は荒野を見たい。サボテンの影からトレホが飛び出してくる荒野!
メキシコ!メキシコ!
おれは叫んだ。
違う?いや……此処こそが、おれのメキシコか?
この梅田が?
※
メキシコなら酒場でコロナだが、ここは大阪だ。茶髪の女性店員が冷コーを運んでくる。
思いのほか濃く、シロップを入れると甘すぎた。
だがおれは動揺せず、スマホでnoteアプリを開き……40分後に[投稿]をタップした。
「おっと」
おれは投稿記事編集画面を開き、#逆噴射プラクティス のタグを追加した。
……おれの荒野はここにある。今は。だがいつかは。
※
「お疲れ様でーす」
女性店員は更衣室でスマホを開いた。
ネオウメダスモトリサラリマン小説が新着にあった。
【続く】