歌のチカラ


お疲れ様です。

先日僕の所属している軽音サークルのライブに出演してきました。

音楽の成績を関心・意欲・態度だけで乗り切ってきってきた僕は何も楽器がひけないのですが、喋り声がデカくてうるさいという理由だけでボーカルをさせられています。

音楽は好きなので、自分の出番以外の他のサークル部員たちの演奏もちゃんと聴いていました。


僕のサークルにはお嬢様がいます。

僕と同じ学年だったはずなのでおそらく22歳。

でも自己紹介の時に「3年生です」って言ってたのは聴き間違えじゃないと思います。


22歳。



22年間何の苦労もしないで生きてきたんだろうなと思える女です。


お年玉だけで3桁万円もらえると聞きました。

彼氏ができたらお祝い金でお小遣い10万円もらったと聞きました。

服を買うときに値段を見たことがないと聞きました。


人生においてお金はとても重要な要素だと私は考えています。

この人は間違いなく勝ち組側の人間だと思っています。



僕がまだ大学1年生で、彼女も同じ大学一年生だった頃、サークルの歓迎会がありました。


僕は真面目なので20歳になるまで1滴もお酒を飲まないで生きてきました。

当たり前のことを当たり前にできる人が結局一番偉いと思っていたからです。

真面目すぎたせいで高校生の時、親戚同士の集まりでの乾杯酒を拒否した際、かなり緊迫した空気になったことを覚えています。

もちろんサークル歓迎会でも僕は飲みません。


彼女はビールをがぶ飲みしてました。


高校の時から酒が大好きだったらしいです。

僕は彼女のことが嫌いでした。


僕が1杯500円する嘘みたいに量が少ない烏龍茶をちびちび飲んでる時、彼女は1杯800円する生ビールを遠慮せずに飲んでいました。

5杯くらい飲んでました。

4000円。

お嬢様なので、お年玉で数百万円もらえるので、4000円なんか端金のようです。


金銭感覚が違うのは別にいいです。

これに関しては僕が貧乏性なだけなので。

僕が彼女のことが嫌いな理由は別にあります。


彼女は絶対に財布を出しません。


サークル長が酒が好きだった影響で、軽音サークルは一時期飲みサーになっていました。

私もコミュニケーションの一環として、なるべく参加するようにしていました。

ただ、飲みの時に話す内容が基本恋バナや下ネタだったのですごく居心地が悪かったので本当に行きたくありませんでした。

特に彼女は高校の時から彼氏を取っ替え引っ替えしてるらしく、経験人数が2桁を超えていると聴きました。

同い年の僕は童貞でした。


音楽が好きなので、音楽の話がしたかったのですが、サークルメンバーでフジファブリックを知ってる人が1人もいませんでした。

飲みサーとは言いますが、先輩や顧問の先生が奢るとかはなく、ちゃんと割り勘だったため、酒を1滴も飲まない僕にとってはただ割を食う会となっていました。


彼女は絶対に財布を出しません。


貧乏性の僕が烏龍茶を一杯しか飲んでいないのに2500円払っている中、あの女は酒だけで5000円、ピザやパスタを食い、計8000円程度飲み食いしてるのに財布を出しません。

男のくせに、女のくせにという言葉はジェンダー的多様性が広く浸透している世の中で大変言いにくい言葉ですが、あの女は僕の3倍の量飯を食います。


彼女は絶対に財布を出しません。


苦学生ならまだ許せたかもしれません。

親からの支援一切なく、自分のバイト代で学費を払い、まともな食事を滅多に取れない状況なら微笑ましいかもしれません。


彼女はお嬢様です。


実家暮らしです。

家にリムジンがあるらしいです。

家にお手伝いさんがいるらしいです。


彼女は絶対に財布を出しません。


どうやら毎回財布を出さないせいで、先輩が流石に苦言を呈していました。


「俺もう3回分は出してるからそろそろ自分の分くらい払ってくれよ」

「え〜?でも私、今日財布持ってきてませんよ!」

「お前いつもそれ言ってるじゃん、財布持ってきてないならそんなに飲むなよ」

「え〜?でも毎回先輩が出してくれるじゃないですか!そもそも財布持ってきてないんで払いたくても払えませんよ!?」

「はあ、コンビニ行って下ろしてきてくれ。流石に今日は無理だ」

「え〜?分かりましたよ。払います。」


彼女はカバンから財布を取り出した。


目を疑った。


財布には千円札くらい一万円札が入っていた。


「なんだよお前、財布持ってきてんじゃんかよ〜」

「えへへ、すんませーん!」


みんな爆笑していた。

ドン引きしてるのは僕だけだった。

これがアルコールの力なのかもしれない。



そんな女が僕のサークルにはいます。


彼女もライブに参加していました。

彼女はキーボードを前にして軽く客席に話しかけてきました。


「私は中島みゆきが大好きです。

人生で辛いことがあった時、涙が溢れて止まらない時、

いつも私を支えてくれたのは中島みゆきでした。

もしも今悩んでたり、大変だったりしてる人がいたら

この歌を聴いて、支えになれるといいなと、思います。」


誰が言ってるんだ。


お前の人生において辛いことって何だ。

お前の涙なんてどうせ全部自業自得だろう。

中島みゆきはお前みたいな人間の支えになるように歌を歌っているんじゃない。

僕みたいな弱者を支えるような歌を歌っているんだ。

生まれた時から何の苦労もせず、自分の恵まれた境遇を自覚できず、辛いだの恵まれてないだのほざくような人間は、中島みゆきじゃなくて優里でも聴いておけ。




演奏が終わる。




とても良かった。




とても歌がうまかった。



僕は感動してしまった。



歌にはそんなチカラがあった。



皆さんも中島みゆきを聴きましょう。





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