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ベートーベンは引っ越し魔

ベートーベンが今の世に生まれていたら、Airbnbを利用していたかもしれません。Airbnbを使えば引っ越しの多い人にとってはその都度かかる費用をセーブできます。シェアハウスはその名の通り他の人とシェアをするので音を出す仕事の人には不向きですし、何よりピアノの移動が大変です。それにベートーベンは部屋の使い方が不潔だったそうなので…。

22歳を目前にボンからウィーンへと移り住んで以来、56歳で亡くなるまでの間にたびたび引っ越しを繰り返し、その回数は70回から80回とも言われているそうです。”(音楽之友社ONLINE)

ベートーベンのライフスタイルは夏の間は避暑地(ハイリゲンシュタット)などで過ごし、夏が終わる頃にはウィーンへ戻ってくるという生活だったようです。とすると22歳から56歳の34年間の夏と冬とで住居を変えていた「年に二回の移動」を“引っ越し”とカウントするならば、それだけで既に68回になります。そう考えると、ただ夏と冬に住居を変えるスタイルを好んでいただけであり、世で言われている「引っ越し魔」とはちょっと違う気がします。

ベートーベンは変人だったとか、周りと和合できない癇癪持ちだったとか言われますが、それは引っ越しの回数が多いということから生まれた誤解なのかもしれません。それが証拠にベートーベンの葬儀には2万人もの人が参列したそうですから、言われているほどではなかったと想像します。

ここではベートーベンの真面目で、誠実で、音楽に対する真摯な姿がとても可愛らしく描かれている手塚治虫氏の漫画『ルードウィヒ・B』を紹介したいと思います。

まず、当たり前ですが、彼の漫画はやはり『絵』がとても可愛いです!音楽室には手塚治虫氏のベートーベンを飾るのが正解だと思います。世界に誇れる「日本漫画」の原点を作られた方の絵という点でも今の小学生にとっては良い刺激になるかもしれません。

手塚氏がどこまでリサーチして、どの部分が脚色なのか分かりませんが、ベートーベンが耳の聴力を失うことになる原因なども描かれています。そしてその原因となる人物とベートーベンとの関係が物語を盛り上げるのですが、この人物が本当に存在したかどうかは不明です。存在していたとしても、ベートーベンと接点があったかどうかは謎です。手塚治虫氏のみぞ知ることろです。

ベートーベンは憧れのモーツアルトのもとへ弟子入りするのですが、モーツアルトは外出ばかりで約束の時間になっても家に戻らないことが多いのです。そんな時に妻のコンスタンツェは帰りを待っているベートーベンに色仕掛けでしな垂れかかるのですが、真面目で恥ずかしがり屋のベートーベンは断ったり逃げ出したりします。もしそれが本当で、ベートーベンがチャラ男だったとしたら…?もし、モーツアルトとベートーベンが逆の立場だったら…?ちょっと面白いことになっていなぁ、と思います。逆の立場だとしたら、チャラ男のモーツアルトは完全に先生の妻といい仲になり問題が発生していたでしょう。

ベートーベンも父、祖父と音楽家の家で育ちましたし、モーツアルトも宮廷音楽家だった父に厳しく教育を受けました。が、この二人の違うところは、モーツアルトは貴族に媚びを売りながらお金の為に仕事を得て稼いでいたことです。対してベートーベンは貴族にへつらうなど恥。父から「立派になって貴族の鼻をへし折ってやれ!」と教育されるのです。

父親は仕事に対しては真面目でしたが酒にだらしがなかったので貴族から蔑まされていたのですね。父は息子に貴族を見返せ!と叩き込み、それがベートーベンの「音楽は貴族の為のものではなく皆のものだ!」という独自の思想を作ります。

チャラ男で下品なモーツアルト、真面目で一本気なベートーベン、どちらも美しい音楽をたくさん作りました。どちらにしても音楽への情熱は変わらなかったということですね。

本当に残念なのですが、この漫画は2巻で未完として終わっています。手塚治虫氏は執筆中に体調を崩し亡くなりました。真面目な本が多い中、漫画で音楽家の生涯をたどることができる数少ない名作だったので残念でなりません。

たった二冊に収まっている漫画ですが、本当に細かい部分まできちんと描写されていて素晴らしいと思います。何度も言うようですが、続きが読めないのが残念です。

漫画家の方、是非、音楽家の生涯を漫画にしていただけませんか?
本とは別の趣きがありますから…。

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ギブソンりえ|Piano
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