ラッセルの感情円環モデル
下記はある論文から抜粋。
Upmoodも原則このラッセルの考え方から研究を進めていますが、心拍変動の揺らぎが大きい場合については別の指標を描いています。(レベル2)
覚醒ー沈静 快ー不快の考え方は一緒ですが、Upmoodは感情の分類をわかり易く表現しているので11種としています。
感情モデルは,それ以上還元不可能な感情の最小単位である基本感情で表現され,これまでに多種様々なモデルが提案されている.本研究では,情動の特徴を定量的に評価するという観点から,感情はベクトル上に発生するダイナミズムであるという次元説に基づいた感情モデルに着目した. 感情を次元で捉えたモデルの一つに,ミレンソンの3 次元モデルがある.ミレンソンは,基本的な感情の強度を X,Y,Z のベクトルで表現し,感情は刺激の強さの違いに依存すると提唱した.彼は,楽しみと恍惚のように
「ある感情は他の感情の強度だけが弱くなったものである」,
「ある感情(不安,怒り,高揚)は基本的な感情であり,他の感情は基本的な感情の混合されたものである」という2 つの主張をした.この考えには,ベクトルの考えが導入されており,3 つの基本的感情がベクトルとして表され,他の感情は強化刺激の強さの違いに依存するとしている.このモデルでは,混合された感情について感情の強さが弱くなると,区別がつかなくなるという問題がある.
ラッセルは,全ての感情は「快-不快」「覚醒-眠気」の2 次元で表される平面上に円環上に並んでいるとする円環モデルを提唱した.このモデルは,色彩環を取り巻く色相に似ており,幸福と歓喜のような類似語は近接した円環上に配置され,幸福と哀しみのような反意語は円環上では対立した位置に配置される.各感情は2 次元の座標軸上のベクトルの方向と大きさとして表示され,付置された各感情間の原点(2 軸の交点)からの角度には関係があり,ベクトル方向の差は相関係数を表しているとしている.なお,感情の強さは原点からのベクトルの大きさ(距離)によって示されるとしているため,感情の強さは覚醒の程度とは概念的に異なっている.情動を次元で捉える場合,ミレンソンの3 次元モデルでは感情の次元としてあげられる軸の不一致の問題がある.また,次元の交差する交点が座標原点を示す点であるかどうかに関して問題がある.ラッセルはこの交点を順応水準という言葉で説明し,状況や文脈によって交点の水準が変化するとした.