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安全性と移動利便性を追求した電動キックボードによる街の活性化(第17回優勝社 BRJ株式会社)

BRJ株式会社(東京都港区)との連携

デジタルの力を活用して東京都のポテンシャルを引き出し、都民が質の高い生活を送ることを目的とする「スマート東京」。このスマート東京の先行実施エリアの1つとして位置付けられた南大沢地区は、南大沢駅を基点にバス路線等の既存交通網が広がっているものの、地形的に丘陵地であるため住宅団地からバス停までのアクセスが高齢者等にとって負担であることが地域の課題でした。また、駅周辺に商業施設が集中することでまちの賑わいも駅前に限定され、地域全体の活性化に向けた取組が必要となっていました。この移動利便性の向上とまちの賑わい創出といった課題解決に向け、UPGRADE with TOKYO 第17回の優勝社であるBRJ株式会社(東京都港区)との協働プロジェクトが開始しました。

利便性だけではなく安全性にも配慮

海外で普及が進む電動キックボードのシェアリングサービスは、街中に設置された専用のポートに停められている電動キックボードを、専用のスマートフォンアプリを介して解錠し、返却可能なポートまで移動することができます。徒歩ではアクセスしにくい距離の移動には最適であることや利用料金が低価格であることから、新たな移動手段として注目が高まっています。日本でも導入が進み電動キックボードの利用が進む一方で、一部の利用者による危険運転や交通ルールの違反による事故が発生しております。BRJ株式会社との協働では、南大沢地区の移動利便性向上のために電動キックボードを導入するだけではなく、電動キックボードが抱える安全面での課題にも対応しています。同社の電動キックボードには、GPSによる機体の位置情報から走行制限・速度制限ができる技術が導入されており、歩行者の安全を確保するため、地元行政や警察とも調整しながら駅前広場周辺や遊歩道、公園等をノーライドゾーン(走行禁止エリア)として定めました。また駅前や住宅団地において試乗会を開催して交通ルールや操作方法を利用者に伝える場を複数回設けました。

地区内に多数の専用ポートを設置

電動キックボードのシェアリングサービスは地区内に多くのポートを設置することが利用拡大のカギを握っています。ポートの数が少ないと電動キックボードの返却先が限定され、地区内で電動キックボードを活用した移動が制限されてしまい、利用に繋がらなくなってしまいます。ポートの設置には、人が集まる駅周辺施設や公園、集客施設の近辺などが望ましいものの、こうした場所はスタートアップ企業が単独でポート設置調整を行うことは困難なことでした。BRJ株式会社との協働では、東京都や地元八王子市、地元企業等で構成される南大沢スマートシティ協議会の実証事業として位置づけ、参画企業の敷地内のポート設置に協力いただいたことにより、駅前の商業施設や地域の公園、住宅団地内など約30か所でポートを短期間で設置することができました。

BRJ株式会社との協働について東京都都市整備局の担当者へインタビュー

まちの賑わい創出と移動利便性の向上の課題にアプローチしたUPGRADE with TOKYO第17回。テーマ設定の背景や優勝社が選ばれたポイントについて、東京都都市整備局の担当者にも話を聞きました。

第17回のテーマを「最先端技術を活用した南大沢のまちの賑わい創出と移動利便性の向上」とした理由は何か

東京都は地元八王子市や都立大、地元企業等と連携し、令和2年に南大沢スマートシティ協議会を立ち上げ、先端技術を活用したまちづくりを検討してきました。これまで都や協議会が実施したアンケート調査やワークショップ等を通じて、地域の課題やニーズを把握する中で、モビリティ分野では「住宅団地からバス停まで高低差があり、高齢者にとって負担」「バス案内情報が分かりにくく、乗り換えが不便」、まちの賑わい分野では「駅前は商業施設が集中しているが周辺地域の情報が少なく、どこが魅力的な場所が分からない」「駅前イベントと地元のイベントが連携できていない」といった意見が多く寄せられ、協議会においても「モビリティ」と「まちの賑わい」を地域の課題と捉えて議論・検討を進めてきました。

BRJ株式会社が優勝した要因は

電動キックボードのシェアリングが南大沢地区における交通の円滑化や移動支援、ラストワンマイルの確保等の課題解決に直結するサービスであったことです。電動キックボードは手軽に移動できる利便性に長けている一方で、新しいモビリティサービスであるため、利用者に対して交通ルールや安全な走行方法の周知が十分でない等、安全面での懸念もありました。BRJ株式会社の電動キックボードは、走行禁止エリアの設定により、機体の位置情報から走行制限・速度制限ができる技術など、安全性にも配慮されておりましたので、地域課題解決に資する点が最も評価されたポイントだと考えています。

協働プロジェクトではどのような成果を得られたのか

2022年11月より南大沢地区で電動キックボードのシェアリングサービスを開始し、地域の協力もあり利用実績は着実に伸びてきています。また、試乗会では利用者の興味や関心が高く、サービス認知度も高まってきており、地域に根差した新しい交通手段となることを目標に取り組みを進めていきたいと考えております。

今後の展望は

南大沢地区の高低差による移動負担等の課題は、丘陵地である多摩ニュータウンにおける共通課題であり、今回の取組事例を踏まえ、同様の課題を抱える他地域にもサービス展開し、都全体で移動利便性の向上に取り組んでいきたいと思います。また、他の交通手段やサービスと組み合わせで最適な交通経路を提供するなど、MaaSへの発展も想定しております。

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