伝統的な景況調査に新たな価値創造を(第15回優勝社 株式会社ナウキャスト)
株式会社ナウキャスト(東京都千代田区)との連携
東京都では都内の中小企業を対象に景況(業況、売上高、予想業況、予想売上高等)を調査し、調査結果のデータを公表しています。この景況調査は認知度の向上やデータの二次利活用の難しさといった課題を抱えていました。株式会社ナウキャスト(東京都千代田区)との協働では、景況調査を多くの方にご利用いただくために、新たな価値を創造する取組としてデータビジュアライゼーションの視点を取り入れたダッシュボードの開発を行いました。
データビジュアライゼーションの視点
視覚的な要素を用いてデータを効果的に伝える手段となるデータビジュアライゼーション。株式会社ナウキャストとの協働前の景況調査では、PDF形式で調査結果を公表していました。PDF形式の場合、作成者の意図を損なわず受け手に対して情報を発信できるメリットがある一方で、データが静的であり中長期的視点や業界間の関連性を意識した分析を行うことが難しい側面がありました。株式会社ナウキャストとの協働では、中小企業の景況をダッシュボードで分析できるよう開発を行い、期間を設定して景況データを取得できるだけではなく、業界データを比較して分析が行えるようになりました。
さらにオルタナティブデータとの連携も可能に
株式会社ナウキャストとの協働では、データビジュアライゼーションの視点を取り入れるだけではなく、クレジットカードの決済データや人流データといったオルタナティブデータも導入しました。これにより、東京都内の中⼩企業の業況や売上⾼などの景況データと決済データや人流データを組み合わせて分析することが可能となり、経営戦略や仕入れの計画への活用など、データの利活用領域が大幅に拡大しました。
株式会社ナウキャストとの協働について東京都産業労働局の担当者へインタビュー
「東京都中小企業の景況調査にかかるオープンデータの活用について」をテーマとしたUPGRADE with TOKYO第15回。テーマ設定の背景や優勝社が選ばれたポイントについて、東京都産業労働局の担当者にも話を聞きました。
第15回のテーマを「東京都中小企業の景況調査にかかるオープンデータの活用について」とした理由は何か
東京都が実施している景況調査について、より多くの人に知ってもらいたい、利用してもらいたい、という想いがありピッチイベントでスタートアップのソリューションを募集しました。景況調査を担当する中で、過去の景況調査のデータを確認していたところ、消費税の増税前や新型コロナウイルスが発生した際に、業界によって業況のデータ変動幅が異なったり、業界間のデータの相関関係があることを知り、景況調査の活用が中小企業の経営にとって有益なものになるのではないかと思いました。当初は職員で景況調査の利活用について検討したものの、なかなか面白いアイデアが思い浮かばなかったため、オープンイノベーションの観点からもスタートアップのソリューションを活用したいと思いました。
株式会社ナウキャストが優勝した要因は
第15回のピッチイベントはどの企業からも魅力的なソリューションを発表いただきました。その中で株式会社ナウキャストは、データビジュアライゼーションの取組を行っており、さらにあらゆる業種の多種多様なデータを取得できるネットワークを有していました。株式会社ナウキャストが保有するデータと東京都が収集していた景況データを組み合わせることで、新たな価値提供が期待できると感じました。
協働プロジェクトではどのような成果を得られたのか
ダッシュボードをリリースした後は、景況調査のアクセス数が伸びており、協働による成果を感じています。また、東京都開催の「都庁DXアワード」において本協働プロジェクトの取組が評価され表彰を受けることができました。
今後の展望は
今後は中小企業の経営者だけでなく、大学や研究機関の専門家など様々な方に利用いただきたいと考えています。ダッシュボードの閲覧数の増加や、利用者のリピート率・満足度を高めていくためには、利用者にとって使い勝手のいい機能を備えていくことが重要であり、利用者の声を踏まえてさらに改善していきたいと思います。
すでにダッシュボードをご利用いただいた方からはビジュアルや操作性はいいものの、どのようにこのデータを経営に活かしていけばいいか分からないといった声をいただいており、活用方法のコラム等を設けて利用を促進させたいと考えています。