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訪日外国人向けの音楽チャートについて考えてみた

 世界には様々な音楽チャートが存在する。

 アメリカでパッと思いつくものといえば、BILLBOARD。
 日本でパッと思いつくものといえば、ORICON、もしくは、近年台頭してきている、BILLBOARD JAPAN、また、2018年に入り、YouTubeチャートなどが挙げられる(この他にも、USENやラジオチャートなど、音楽のヒットの指標のひとつともいえるチャートが存在する。)

 しかし、これらのチャートは主に、日本人による日本人に向けた音楽チャートと言える。それでは日本の音楽シーンがある種、一辺倒でしか見られていないように感じる。では、外国人から見た日本の音楽シーンというものはどういったものなのだろうか?そんな中、最近その数を伸ばしている、訪日外国人に向けた音楽チャートがあったら面白いのではないだろうか?

 そんなことを少し想像してみながら、訪日外個人向けの音楽チャートを、以下のポイントに沿って考えてみた。

<ポイント>
 1.目的/役割
 2.内容/方法
 3.発展/未来

1.目的/役割を考えてみる
 ORICON、BILLBOARD JAPANのような、既存の音楽チャートで事足りないのか?という声もあるかもしれませんが、肌感覚的に私が思う既存の音楽チャートは、特に最近、日本の音楽シーンを的確に示していないように感じています。その要因のひとつに、アイドルなどで見受けられる「特典付きCD」の存在があると考えています。すなわち、既存の日本の音楽チャートを見ても、今の日本の音楽シーンが正確には分からないのではないかという懸念です。それでは訪日外国人の方々に、日本の音楽シーンをある種、誤解させてしまうのではないかという思いすら感じます。

 既存の日本の音楽チャート ≠ 今の日本の音楽シーン

 つまり、訪日外国人向けの音楽チャートは、日本の音楽シーンを正しく伝える目的が必要になると考えます。

2.内容/方法を考えてみる
 前述したように、既存の音楽チャートには、一種のバイアスがかかった状態にあると考えます。ではそのバイアスを取り除いた内容とその取り除く方法はどのようなものが考えられるだろうか。
 大きな枠でいえば、現在の音楽消費の実態に沿った音楽チャートの内容になっていることであろう。そのひとつに、パッケージ市場とデジタル市場のシェアの変化の反映が必要となってくる。日本はアメリカと比べて、まだまだパッケージ市場がデジタル市場のシェアと比べて大きい。一方で、ここ日本でも世界の音楽消費と同様にその実態としては、デジタル(YouTubeも含めて)に変わってきている。つまり、音楽消費の実態と音楽市場がリンクした関係になっていない、一種の矛盾があるのが、ここ日本の実態といえる。そして日本の音楽チャートはこの矛盾がありながらも、日本の音楽シーンを示すものとして存在している。
 そのことを踏まえて、訪日外国人向けの音楽チャートの内容を考えてみると、例えば、海外での邦楽シーンを反映/集約したチャートなどどうだろうか。海外には様々な、所謂「J-POPチャート」が存在しているが、ここ日本でその実態をつかみきれていないのが現状と感じます。そこで、そういったチャートをまとめ、ORICON、BILLBOARD JAPANと並んで、世の中に広めていくことができたら、新たな見方、音楽の楽しみ方につながっていくのではないだろうか?

 日本で人気 ≠ 海外で人気のJ-POP

 つまり、訪日外国人向けの音楽チャートは、海外で人気のJ-POPな内容になっており、その方法としては海外に点在しているJ-POPチャートを集約したものが必要になると考えています。

3.発展/未来を考えてみる
 上述したポイントに作られた、訪日外国人向けの音楽チャートは、様々な活用が期待できると考えています。例えば、自分の国で人気のJ-POPが、他の国、もしくは世界で人気であると、それが自国の日本が発信しているとなれば、その熱量が高まることだろう。その結果、そのアーティストのライブやイベント見たさに、日本に来るきっかけにつながることだろう。一方、日本側としても、海外展開のためにその人気の指標を見たいとなるが、どのチャートを見ればよいか分からなかったりすることが多い。そのときに、このような自国発の音楽チャートがあれば、それを活用した展開が見込めることであろう。

 日本で人気のJ-POP を 世界で人気のJ-POPに

 つまり訪日外国人向けの音楽チャートは、日本の音楽シーンを海外に発信する可能性のある発展/未来があると考えています。

 最後に、音楽チャートは、その国、その時代の音楽シーンが反映されたひとつの指標であり、その指標の影響度合いが強いものだと思います。テクノロジーの進化により、これまでの消費活動に大きな変化が生まれている昨今、特に音楽においてはテクノロジーの影響を受けやすいもののひとつに感じます。その時代の変遷の中で、音楽チャートも目的、役割、そして未来を都度都度考えながら、その存在意義を提示していく必要があると改めて感じた次第です。