【起業】新規事業やスタートアップでPMFを達成するために必要なこと
成長したいビジネスパーソンの為の、幅広い知識を横断的に身につけてリベラルアーツ化を目指す note。
本稿では「新規事業を成功させるPMFの教科書;栗原康太」を引用して、新規事業におけるPMFのナレッジを紹介していきます。
【読んでほしい人】
・新規事業にアサインされた人
・新規事業コンサルティングファームにいる人
・起業に興味がある人(特に市場にないニーズでの起業)
【プチコメント】
そもそもPMF(=Product Market Fit)とは、新しく市場を創る際や潜在的なニーズを探し当てる際に重要となる概念になります。スモールビジネスと言われるような既存市場を後追いしてパイを増やしていくような事業であれば既にニーズも顕在化しているし、それなりの事業にはなります。
一方で競合も多いので資金ゲーに巻き込まれたりして撤退を余儀なくされることも多いでしょう。━━━飲食などわかりやすい、毎月新しい店舗が出てはすぐに消えていく
そこで二番煎じ的な事業ではなくスタートアップを行う上で大事なPMFという概念をインプットしていきたいと思います。
***
#1.PMFを実感
━━━PMFしたときは明らかにそれとわかり、PMFしているかどうか疑問に思っている時点ではPMFしていない
スタートアップ界隈ではこう言われるように、実はPMFしているかどうかは非常にわかりやすい特徴があります。
注文が殺到するなど以外で分かりやすいシグナルとしては、
・事業の成長に採用が追い付かない
・予算を使っても使っても利益が出てしまう
・顧客獲得コストが低い
・顧客に提供できる価値を明確に説明できる
・顧客が他の顧客を紹介してくれる
などがあります。
これらのシグナルを手掛かりにPMFしているか正しく認識できるとOKです。
ただ注意点として最初からいきなりPMFが実感できることは稀なので少し頑張ってみたけど鳴かず飛ばずなので撤退、ではなく顧客の声を聴いて改善を繰り返すことが前提です。
また、PMFまでにそもそも仮説を立てている課題は本当に存在するのか?その課題を解決するためのソリューションは何があるのか、何が最も適当なのか?リソースや技術力を考慮して現実可能性があるのか?などを仮説と検証を繰り返してクリアしていくことが重要です。
なぜなんとなく思いついた課題に対してなんとなくのソリューションで製品開発していってはいけないのかについて次章より話していきます。
***
#2.PMFに失敗してしまう理由
2018年にアビームコンサルティングが発表している内容によると、単年黒字化できる企業はたった17%しかありません。ではなぜ多くの新規事業は失敗してしまうのでしょうか。
1⃣顧客ニーズを検証せずに商品をリリースしてしまう
最も多いのがこの失敗。初めて新規事業をする際に「こういう製品やサービスがあればいいんじゃないか?」という自社の視点だけで予測して先に完成させてから実際に顧客に紹介したところニーズがなかったというパターンです。
これだけ聞くとそんな失敗はしないんじゃない??と感じるかもしれませんが大きな落とし穴があります。
顧客からニーズを聞き出すのはそんなに簡単じゃないということです。
━━━もし私が何が欲しいかと聞いていたとしたら、人々は『もっと速い馬』と答えただろう
このセリフは、史上初の量産型自動車を世に送り出した稀代のイノベーター、ヘンリー・フォードです。
そうなんです。顧客は口に出して求めるものと実際に売れるものには差がある。顧客が欲しいといったからと言っていざ売り出してみると「実はそんなに必要ではなかった」「必要ではあるが緊急性はなかった」という具合になることがあります。
他にも過去に某ハンバーガー屋さんが欲しいハンバーガーのアンケートを取ったところヘルシーなハンバーガーが人気だったにも関わらず実際には結局こってりジューシーなハンバーガーの方が売れ行きが良かったという話もあります。
━━━少し進化心理学的見地から考えると、我々の祖先のサピエンスの時代からこってり脂質やタンパク質が豊富な食べ物にありつけることは少なく、草や果実などがメインになっていたことを考えると遺伝子レベルでこってりな食べ物があれば本能的に飛びついてしまうのだ
2⃣PMF達成に直接必要のないことに多くの時間を使ってしまう
PMF達成に必要のないことというのは例えばメディアの露出や飲み会での人脈作りなどです。
確かに一見するとこれからの営業に関わるかもしれない、といつの日か役立つように感じるかもしれませんがそれ以前にそもそもPMFしなければ元も子もありません。━━━捕らぬ狸の皮算用ってな
つまるところ、スタートアップでは、まず何よりも新規事業のビジネス仮説を検証することに全振りすることが肝要
だという思考のシフトが大切です。
3⃣商品をリリースする前に社内の議論を重ねてしまう
1⃣(顧客ニーズを検証せずに商品をリリースしてしまう)に近いですが、これは顧客へ足を運んで検証を進めずに社内の人間だけで机上で議論をして「ああでもないこうでもない、これは〇〇なリスクがある」と議論ばかりして顧客の現場の声を聴かないパターンです。
議論をするのは顧客からヒアリングしてきた内容を精査する時であって、何の情報もない状態で無から有を生み出せることはスタートアップではありません。━━━あるとすればよっぽど天才的な閃きがあるか、とんでもないリソースをつぎ込んでいるか、ビジネスにならないか(100ドルで宇宙にいけるとかね)
PMFするためにはヒアリングが何よりも先決です。
4⃣PMFしていないのに営業・マーケティング投資を始めてしまう
スタートアップでも新規事業でも多いのが捕らぬ狸の皮算用進行です。後のことばかり考え、先に営業担当を雇ってしまったり、営業資料の作成、広告費のつぎ込みばかりする場合です。
まだ未完成で穴だらけの商品なのに広告を回してもこぼれていくばかりですよね。
本当にPMFすれば市場に受け入れられる製品・サービスができているので、既存事業のような用意周到な営業は必要ありません。極力固定費ができないようにスモールスタートを心がけることが大事です。
5⃣見せかけのPMFに騙されてしまう
一定数受注が入っているなど一見いいように見えるがPMFからは遠いパターンです。例えば大手企業の強い営業網や社長のツテでなまじ売れているばかりにPMFと勘違いしてしまいますが、それ以外の顧客にも売れていない場合顧客リストがいつの日かは天井になってしまいます。
6⃣意思決定や打ち手の成功確率にこだわりすぎてしまう
大手企業における新規事業に多いパターンです。会社規模が大きくなるとどうしてもリスクヘッジの志向が強くなります。何をするにしても「それにおけるリスクを洗い出して致命的なものがないか、成功確率、リターンがどういうものが提示してくれ」という話が多くなります。
ただ、新規事業では不確実性の高い性質がある以上、どこまで突き詰めても分からないことが多いのが正直なところです。そこを上層部が理解せずに提示ばかり求めているといつまでたっても進めず結局作業コストだけが嵩む結果になります。
7⃣虚栄の指標を追ってしまう
これは各言う私も一度引っかかってしまったパターンですが、SNSでの言及数やピッチイベントでの入賞、WEBサイトのPV数など本質的ではないがなんとなく上手くいっている感がある幻の数字です。
市場のないところに市場を作りに模索していると手ごたえのない状態はずっと続くので、頭ではわかっていても目先の賞賛や「上手くいっている安心感」がどうしても欲しくなります。
その魔の手を取っ払って愚直にクライアントに向き合えるか、そこまでその製品・サービスの価値を信じ抜けるかが大事なことを考えると相当な情熱がない場合スタートアップは頓挫してしまうかもしれません。
スタートアップが死ぬときは創業者の熱が冷めた時だというのは界隈ではよくある話です。
8⃣「やってみないとわからない」と思考停止で進めてしまう
ここまで話してきた内容だとまず動いてみてクライアントにヒアリングをして徹底的に磨きをかけていくことだ大事だという流れになっているが、そこで陥る一つの落とし穴は、まずやってみりゃいいかという思考停止になることです。
類似ビジネスがある場合は利益率がわかるし、海外事例がある場合はおおよそのプロダクト方針は見えます、
それにも関わらず何も調査せずに五里霧中で進めても遠回りになるばかりか本来進まなくいいいばらの道に進むことになります。
***
#3.まとめ
いかがだったでしょうか?
PMFというのは「Product Market Fit」なので製品・サービスが市場に合っているのか?を確認する概念です。その測定の方法は色々ありますがいずれにしても先に商品を作ってしまってから顧客に売り込みにいく流れは良くないというのが最も大事な部分です。
市場や社会の解像度が低いとどうしても主観的な目線だけでニーズがあると思いこんだり、一部のニュースや人の意見を鵜呑みにしてTAM(=Total Addressable Market)がどれくらいなのか検証せずに突き進みます。
大学生などの新規事業コンペや立案系のインターンでありがちな案ばかり(就活生を救うとかカンボジアの人の為の家を建てる)出るのはそういうことです━━━それが悪いとかではなく解像度が低いと事業化は難しいということ
新規事業なんて考えてもわからないからとりあえず行動!というのは一部は正しくて一部間違っています。事前の検証も山ほどやることはあるし、顧客のもとに足繁く通ってアジャイルで進めていくことがある、という思考の転換が出来ればスタートアップの第一段階は完璧です。