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少ないほうが豊かである。
「成長こそが豊かさの象徴」とされる現代資本主義社会は、果たして本当に私たちを幸福にしているのだろうか?人類史において支配的な思想であった「デカルトの二元論」が、自然を搾取対象とし、人間と分離してきた歴史を振り返るとき、見えてくるのはその限界だ。本書『資本主義の次に来る世界』は、資本主義的成長志向を見直し、自然や身体との新たな関係性を築く「ポスト資本主義」の可能性を提示する。私たちはいかにして、支配や搾取から互恵的な経済へと移行できるのか。本書はその答えを探る希望の書である。
第1部:多いほうが貧しい
第1章 資本主義――その血塗られた創造の物語
資本主義の起源には、支配と収奪が深く根付いている。初期の資本主義は植民地支配と奴隷労働に依存し、自然資源の搾取を加速させた。デカルトの二元論が自然を「外部化」したことで、人間は自然を単なる資源として扱い、搾取の正当化が進んだ。そして、産業革命以降、資本主義の「成長」は人類の幸福ではなく、格差や環境破壊を広げる結果となった。
第2章 ジャガノート(圧倒的破壊力)の台頭
「止められない巨象」を意味するジャガノートは、資本主義の暴走する成長モデルを象徴している。特に20世紀後半からの技術革新は、経済のスピードと規模を拡大させる一方で、環境負荷と社会的不平等を加速させた。この成長志向は、人間の「ニーズ」を満たすどころか、常に「満たされない状態」を生み出し続けることでシステムを維持している。
第3章 テクノロジーはわたしたちを救うか?
AIや再生可能エネルギーといった技術革新は、資本主義の限界を克服する希望とされる。しかし、それらもまた資本主義の枠内で動いている限り、問題の根本解決には至らない。技術が救うのは「資本」か「人間」か。この問いは、技術そのものの使用目的と倫理を再考する必要性を私たちに突きつける。
第2部:少ないほうが豊か
第4章 良い人生に必要なものとは何か
本章は「豊かさ」の再定義に挑む。真の豊かさとは物質的な蓄積ではなく、人間関係や自然とのつながりにある。アニミズム的な視点――すべての存在が互いに依存し合い、影響し合うという考え方――を取り入れることで、私たちは物質主義から解放される道筋を見出せる。
第5章 ポスト資本主義への道
「成長なき経済」とは空想ではなく、具体的な実現可能性を持つビジョンだ。地域経済の強化、循環型社会の構築、そして「少ないこと」を価値とする文化の醸成が、ポスト資本主義の礎となる。資本主義のシステムを抜け出し、人間と自然が互恵的に共存できる社会を構築するためには、価値観そのものを根底から見直す必要がある。
第6章 すべてはつながっている
自然、人間、社会、そして経済は切り離すことのできない一つのシステムである。ここで語られるのは、自然界のサイクルを模倣する「生態系型経済」のビジョンだ。このシステムでは、持続可能性が最優先され、人間の活動が地球全体のバランスを崩さない形で展開される。
『少ないほうが豊か』が提示するのは、「資本主義」の次なるステージへの道筋だ。物質的な成長に依存しない新たな社会システムを構築することは、個人やコミュニティの幸福だけでなく、地球全体の調和を取り戻すために不可欠である。本書は、持続可能な未来を切り拓くための希望の灯台であり、私たち一人ひとりに「次の一歩」を示してくれるだろう。
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