野球マンガ「OHTANI」マルチバース編を語る(ネタ)
※このnoteはネタ成分100%です。実在の人物、団体等は一切関係ありません。
野球をこよなく愛する主人公、大谷ショーヘイの野球人生を描いたマンガ「OHTANI」。
今日は「OHTANI」の中でも特に異彩を放つ第6部通称「マルチバース編」について紹介したい。
【マルチバース編とは】
「マルチバース編」は「高校野球編」「プロ野球編」「メジャーリーグ挑戦編(エンゼルス編)」「WBC編」「メジャー制覇編(ドジャース編)」に続く第6部で、第5部ドジャース編でメジャー制覇を成し遂げた大谷がオフシーズンを過ごす場面から始まる物語である。
第6部最大の特徴が、それまでのリアル野球マンガ(大谷の成績を除く)をかなぐり捨てた「マルチバースから現れた別世界の大谷ショーヘイの登場」だ。
最初は真っ当なスポーツマンガだったのに突然現実離れした展開を見せたマンガといえば「テニスのオウジ様」が有名だが、その内容は分身して1人でダブルスをしたり、ボールを打ち返そうとした相手が客席まで吹っ飛ばされたりといった競技レベルのインフレ部分が主であり、「OHTANI」のそれはぶっ飛び具合の方向性がまた違う前代未聞の展開である。
そのためマルチバース大谷の登場回は配信直後から賛否両論が沸き起こり、ネットでは「なぜ第5部(メジャー制覇)で終わらせなかった」「イッペイ(大谷の通訳だったレギュラーキャラ)が違法賭博関与でいきなり退場した以上のトンデモ展開」「作者も編集もプロテインをキメながら描いてるだろ」など騒然となった。
【そもそもなんでこんな展開に?】
突然トンデモ展開を行った理由については、後年作者がインタビューで語っている。
大谷はそれまでの野球マンガにいなかった投手と野手の「二刀流」選手である。
年月とともに投手としても野手としても一流選手に成長した大谷だったが、作品のファンの間ではしばしば「コイツ、投手(野手)に専念してたらどつなってたんだ?」という議論が交わされていた。
「マルチバース編」は、この決して答えが出ないはずの質問に対する作者なりのアンサーだったのである。
【登場人物紹介】
○大谷たち
・大谷ショーヘイ
主人公。
ドジャースでワールドシリーズ制覇を成し遂げ、次は連覇に向けてトレーニングを積んでいたが突然現れた「マルチバースの大谷」達と戦う事になる。
・投谷ショーヘイ
パドレスに入団したマルチバースの大谷の1人。
プロ野球入団時に「投手の方が成功できる」と決断し投手に専念、プロ野球で沢村賞を獲得しメジャーへ。メジャー屈指の剛球投手に成長し、元の世界では大谷ができなかった「投手でのタイトル獲得」を成し遂げている。
最強の打者と言われる他の「打者・大谷」達を抑えることで過去の自分の決断が誤っていなかった事を証明するため大谷の世界にやって来た。
シーズン途中にヤンキースへトレードされる。
・打谷ショーヘイ
メッツに入団したマルチバースの大谷の1人。
プロ野球入団時に「毎日試合に出られる」という理由で野手に専念し、プロ野球で三冠王を達成しメジャーへ。元の世界では大谷ができなかった「メジャーでの三冠王」を成し遂げている。
「野手として試合に出ながら投手でもメジャーの試合に出る」という決断をした大谷にコンプレックスを持ち、彼以上の打者である事を証明するために大谷の世界へやって来た。その参戦理由から投手に専念した投谷には友好的だが投谷にはいつも塩対応される。
シーズン途中にヤンキースへトレードされる。
・米谷ショーヘイ
ヤンキースに入団したマルチバースの大谷の1人。
マルチバース3人の中では唯一の二刀流。
高校卒業後にプロ野球を経由せず直接渡米しており、周囲の誰もが二刀流を否定する中、不断の努力で結果を積み重ねメジャー最強の選手と呼ばれるようになった。
投打においてあらゆる記録で僅かながら大谷を上回るキャリアハイを残しており、「投手/野手に専念した自分に勝つ」ために大谷の世界にやってきた。その目的ゆえ大谷への興味は薄い。
大谷よりもアメリカ生活が長いせいで性格やリアクションがだいぶアメリカ寄りになっており、大谷と一緒にいたマミコに一目惚れしその場で交際を申し込んだが当然秒でフラれた。
○日本人メジャーリーガー
・山本ヨシノブ
大谷の同僚。
ドジャースでもエース級の存在だがなまじ実力があるせいで噛ませ枠になってしまった悲しき男。オープン戦で打谷に、公式戦で米谷にそれぞれホームランを打たれてしまい「あの山本が打たれた!?」するのが主なお仕事。作者も申し訳ないと思ったのかそれなりに好投もしているのだが、いかんせん試合で投げている描写が僅かしか描かれなかったためネットでは「ダイジェスト山本」という悲しきあだ名をつけられてしまった。一応最終盤には大きな活躍シーンも用意されている。大谷の同僚なのでベンチでのリアクション要員としての出番はそこそこある。
・吉田マサタカ
レッドソックス所属。
WBC編では頼れる男だったが残念ながら6部では噛ませ枠。
ヤンキース戦で投手として登板した米谷に抑えられ、「コイツは……大谷よりも上かもしれねえ……!」するのが主な仕事。米谷の会話から彼の世界でもメジャーリーガーである事が示唆されている。
・ダルビッシュユー
パドレス所属。
日本人メジャーリーガー組が全体的に脇役の6部において「悩む大谷にアドバイスを送る頼れる先輩ポジ」として活躍。
打谷にホームランを打たれた大谷に「お前の最大の武器は投手、打者両方の側から対戦相手の心理を分析できる事だが、打谷はそうではない」とアドバイスを送り、自身が打谷と対戦した際は打席での読み合いに勝ち見事に彼を抑える。その姿に勇気づけられた大谷は打谷へのリベンジに挑む。
・松井ユウキ
パドレス所属。
ダルビッシュと打谷の対戦時における狂言回し兼リアクション要員として登場。残念ながら自身は打谷との対戦はなかった。
・鈴木セイヤ、今永ショウタほか
残念ながらシーズン中の出番は無く、ワールドシリーズでの大谷と米谷の対戦を他の日本人メジャーリーガーと観客席で観戦していた。
・藤浪シンタロー
マイナーリーグに所属。
本人には出番が無いが、投谷が自身のいた世界ではメジャーでもトップ5に入る投手になっていると話す場面がある。
○メジャーリーガー
・ベッツ、フリーマン
ドジャース所属。
5部では大谷の頼れる仲間だが今回は敵にも大谷がいるのでイマイチ振るわない。一応シーズン全体を通してはそれなりに活躍している。
・テオスカー
ドジャース所属。
大谷との仲の良さは健在で、悩む彼を心配したり励ますシーンがしばしば登場する。
・アレザローナ
マリナーズ所属。
WBC編のメキシコ戦以来の登場。
メッツ戦で打谷の打った大飛球をジャンピングキャッチしようとするが予想以上の打球のパワーにグラブを弾き飛ばされホームランを許してしまった。ある意味噛ませ枠。
・ジャッジ
ヤンキース所属。
ワールドシリーズでのやらかしで死ぬほど叩かれまくった上に米谷に主砲の座を奪われたせいで開幕から大スランプ→また叩かれるという地獄に。ヤンキースが打谷、投谷を獲得する案があると聞き、ヤケクソで自らトレードを志願したが結果は四角トレードでまさかのドジャース入り。大谷から逃げたのにまた大谷がいた。
一度は完全に心が折れるが大谷やヤンキース時代からのファンとの交流で己を取り戻し「比類なき成績を残し再びヤンキースに戻る」ために打棒を爆発させる。
ジャッジ周りの話は展開の強引さにしばしば読者からのツッコミが入ったが、作者曰く「大谷が4人に増えるのに比べたら大した事ないかなと思った」とのこと。それはそう。
○その他
・大谷マミコ&デコピン
大谷の愛する妻。大谷といる途中偶然出会った米谷に一目惚れされ交際を申し込まれるが秒でフッた。既婚者だからね、仕方ないね。
そんな米谷をデコピンはめっちゃ噛んだ。
・ワル・イスタンブレナー
ヤンキースのオーナー。
米谷の実力を目の当たりにし、ドジャースを倒すために本人曰く「あらゆる手を使って」投谷、打谷をトレードで獲得し、掟破りのトリプル大谷を完成させる。展開の強引さにしばしば読者からのツッコミが入ったが、作者曰く「大谷が4人に増えるのに比べたら大した事ないかなと思った」とのこと。それはそう。
・野球の神
マルチバースの大谷達の前に現れた謎の存在。
無類の野球好きで「どんな野球人生を送った大谷が一番すごいのかを調べたがわからないので、直接対決させて決めようと思った」とのこと。
凄い力を持っているのは本当で、無数の世界の大谷から特に成功を収めた投谷、打谷、米谷に声をかけ、彼らを大谷の世界へ連れて行く。元の世界はえらい事になっているだろう。
見た目は丸刈りの高校球児。
【名ゼリフ集(ネタバレ注意)】
「今この瞬間だけは……二刀流を捨てる!」(大谷ショーヘイ)
打谷と大谷のリベンジ戦。
1度目の対戦では相手が自分である故に、どんなボールを待っているか二刀流目線で考えてしまっていた。しかし打者だけをやってきた打谷と自分では、同じ人間でありながら思考のプロセスが大きく違う。打谷の待ち球を読み切るために、こだわり続けて来た「二刀流としての大谷」をあえて一度捨てる決断をした名シーンでの台詞。
「ああ、チクショウ……やっぱ楽しいな。バッティング」(投谷ショーヘイ)
投谷と大谷の両名が先発した試合は両者一歩も譲らない投手戦になるが、土壇場で投谷が大谷からホームランを放ち先制に成功する。その裏もマウンドに立つ大谷に対し、パドレスベンチは投谷に代打を送らずそのままバッターボックスに立たせる。
俺は二刀流じゃない、お前達の期待になんか答えられないと心の中で吐き捨てながらも大谷のストレートにファールで必死に喰らいつく投谷。
そして迎えた12球目ーー渾身のスイングは高く上がったファールフライ。ボールの行方を目で追いながら、投谷は上記のセリフを口にする。それは彼自身も知らず押し殺していた自分の本心に気づいた瞬間だった。
「こっちもいい加減やられっぱなしではいられないんスよね……一応、背負ってるものも色々あるんで」(山本ヨシノブ)
ヤンキースが3勝2敗と先に王手をかけた状態で行われたワールドシリーズ第6戦に登板した山本。
ダルビッシュや大谷の助言を生かし、かつてホームランを打たれた打谷、米谷を見事抑え込む。
マウンドに登る山本の脳裏にあったのは試合前にメッセージを寄せた日本時代の後輩。山本の背を追いかけて、ついにタイトルを獲得できたという報告だった。
チームのエース格として、そして自分を目標に研鑽を積む後輩達に恥じぬ「日本最強投手」の称号にかけて絶対に負けられない一戦で山本の矜持が垣間見得た瞬間だった。
「古巣だからといって手を抜く事はない。私が目指すヤンキースの主砲とは、すなわちメジャー最高の打者である証。メジャーリーグに存在するすべての投手を打ち崩してこそその称号は得られる。当然、その対象にはヤンキースの投手も含まれている」(ジャッジ)
前年とは真逆の立場で再びヤンキースとのワールドシリーズを戦う事になったジャッジ。
テオスカーから古巣と戦う事に対して気まずさは無いかと聞かれ、上記のセリフを口にする。
名門ヤンキースの主砲を務めた男の矜持が垣間見える名セリフ。
「彼らは私の愛した大谷ショーヘイではない」(栗山ヒデキ)
突然現れたマルチバースの大谷達に世間が大混乱に陥る中、日本時代の大谷の恩師である栗山がメディアのインタビューに答えて口にしたのがこのセリフ。
大谷を誰よりも知り尽くした男のこの発言により、ネット住民は「ま…まああんたほどの実力者がそういうのなら………」となり、マルチバース大谷の正体に関する議論はますます混迷を極めることになったのだった。
「憧れるのを、やめるよ」(大谷ショーヘイ)
3勝3敗で迎えたワールドシリーズ第7戦。投手と打者として米谷と対峙した大谷は、かつての自分の夢ーー単身渡米し二刀流で成功するという目標を成し遂げた米谷に対し、無意識のうちに憧れの感情を抱いていた事に気がつく。
だが、それでも。
ここで憧れだけで終わってしまえば、大谷自身が選んだ人生を否定する事になってしまう。
自分のために、そして何よりもこれまでの人生を支えてくれた恩師や仲間との積み重ねたすべてが誤りでなかったと証明するために。
大谷は「理想の自分」への憧れを捨てる事を決意する。
果たして、勝負の行方はーー
【最後に】
余りに予想外すぎる展開が良くも悪くも話題になった「マルチバース編」だが、終わってみれば大きく話題になったことでそれまで「OHTANI」を知らなかった多くの人の目に届き、新規読者を取り込むことに成功したことで、最終的にこの路線変更は概ね成功であったと評価されている。
荒唐無稽な導入でありながらメインストーリーは「自分との戦い」という普遍的なテーマを軸に展開し、後半は大谷たちが互いの人生を賭けてぶつかり合う熱い展開が続く。異なる人生を歩んだ自分との出会いを通じて大谷たちは何を思い、何を得るのか。クライマックスはぜひその目で確かめてほしい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?