【エッセイ】磯海岸で両棒餅を
「両棒餅」
早速クイズですが、何と読むか分かるでしょうか?!
私が小さい頃から大好きな場所、
鹿児島の「磯海岸(いそかいがん)」というところ。
鹿児島市街地から程近く、
生きる火山桜島が目の前に迫る内海、それが「磯海岸」です。
磯海岸は、遊泳場や有名な観光地(景勝地)である仙巌園、文化財をリノベしたスタバ(めちゃくちゃオシャレ!)などロケーション抜群なのですが、
「両棒餅」を出す店が海沿いに数点立ち並ぶのです。
「ぢゃんぼもち」と読みます。
「ぢゃんぼ」と言っても、「ジャンボ」じゃないんです。
一口サイズのふわっと軽いお餅に2本の平たい棒が刺ささり、甘じょっぱいみたらしのようなタレをたっぷり絡めて食べます。
その昔、上級武士が2本の刀を腰にさしている様子から「両棒」、これを中国語読みで「りゃんぼう」→「ぢゃんぼ」と訛ったと小さい頃から聞き及んでおります。
なぜ武士だったのか、なぜ中国語読みだったのか私は聞いたことがないんだけどね。
知ってる人はぜひ教えてください。
昔から通う「平田屋」はまさに桜島がどんと座る錦江湾を一望できる最高の立地。
白暖簾をくぐると、まず餅が香ばしく焼ける匂い、甘じょっぱいタレの香りが鼻腔をくすぐり、
思わずヨダレがじゅるじゅるり、、、
靴を脱いで畳の座敷に案内されると
落ち着く鹿児島弁で「何皿にされますか?」と店員さんから尋ねられます。
両棒餅は1皿10本。500円也。
1皿につき、小皿に盛られた山川漬(大根の壺漬け。黄色くてしょっぱい、これが美味しい)、
そして人数分の鹿児島茶も付いてきます。
大体いつも友だち二人で行って、1皿頼みます。
このゴールデントリオが進むこと、進むこと。
両棒餅をひょいっと口に咥え、2本の棒から餅を刮ぎとるように歯を立てて食べます。
うーん、美味しい。
もぐもぐしているうちに温かい鹿児島茶を流し込むとこれもまた美味しい。
餅が口の中から無くなると、すかさず爪楊枝で一欠片の山川漬けをパクリ。うーん、たまらない。
この繰り返し。甘いのとしょっぱいのと、交互に口に放る手がどうしても止まらない。
この両棒餅を片手に本当にこれまで色んな駄弁りをしたんです。
16歳、高校生の時は
「1組の誰と2組の誰が付き合った」とか「こないだ初めて彼とカラオケデートした」とか「今度の期末テストピンチ!」そんな話題だったのに、
26歳、大人になった今は
「誰が結婚した」とか「誰が子ども産まれた」とか「転職するんだ」とか。
(私は全然大人になった気がしないけどね。)
10年間、あっという間だね。
そんな駄弁りをずっと聞いてきた両棒餅はずっと変わらない味。
これから10年後、もっと先の何十年後、
私がどこで誰とどんな風に生きているかは分からないけれど、
きっと10年後も両棒餅は変わらず私たちの駄弁りの友になってくれるでしょう。