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OK-COMPUTER

かつてロシア革命時代、穏健的な派閥はミニマリスト(最小限綱領派)とよばれ、革命のための最小限の要求を求めるといった人々のことであった。これは革命の純化と過激な要求をする派閥にとってはまったく妥協的にすぎ、しばしば過激派による内部粛清の対象となりがちでもあった。

現在においてはミニマリストはできるかぎりの「最小限の生活」を求める人々を指す用語になっているので、意味的にはまったく逆になっている。というのは、それぞれ「最小限の要求」「最小限の行動」と同じ最小限主義なのだが下の2文字が違うだけで、やってることは穏健派から過激派になってしまっているからだ。

ミニマリストを過激派呼ばわりするのは違和感がある人もいるだろうが、自己の正当を疑わない非妥協的態度は過激行動に対する精神的ハードルを低くして、しばしばトラブルのもととなるので、普通の人からはめんどくさくて関わりたくない人扱いされることになる。このことにより、ますます孤立化し、一般的なるものへの憎悪とともに、それらに対する攻撃といった過激化した行動に移りやすいというのも、まぁ一面の真実ではある。ほんと攻撃的だよミニマリスト。

もっと要約していえば、前段のような「めんどくさいので付き合いたくない」といってるだけの話が、自分たちの「思想や生活態度を批難、攻撃する意見」に聞こえるようになったら要注意だ。
とくにここのところ暑い(熱いと言いたい)日が続いて、感情の沸点が低くなっていると思うので、ホント気を付けた方がいい。まぁお互いね。

さて、アートの世界でもこういった最小限主義はある。こちらの場合の最小限はエレメントとしての要求を最小限に保つという事で「最小限の要素」だ。ロシア革命時代の構成主義に源流をもち、マレーヴィチがどうこう、バウハウス云々、主には戦後のアメリカで…なんて美術史的な話はまぁグーグル先生に聞いてもらうとして、ここでは最小限の要素を組み合わせただけのナントカぐらいのイメージでOKだ。
デザイン面では、工業デザイン的要請、大量生産、大量消費のイメージすら纏うので、ここでも、もうミニマリストとは相容れない。もはや、まったく違う概念を語る言葉がすべて同じになってしまっているNewspeakもかくやな状況だ、いやいやオーウェル先生もビックリ。

OK-COMPUTERは4×3の構成ドットとディセンダラインの1×3を加えて、この要素だけで大文字小文字数字記号を全て詰め込むというミニマリズムコンセプトでつくられている……なんていうとそれっぽいのだけど、実際はHigh score girl見て思いついたぐらいの話なので、実は枕は昔のゲームの話でもよかったんだけどね。


さて、まぁこれだけだとあれなので、おなじみのバリアブルフォント化してある。なんか最近バリアブルフォントしかやってないようになっているなぁ……

しかし、ここまでミニマムになっていると、変なところで違和感に気がついてしまったりする。

そう、ドットがすべて丸くないのだ。しかも各バリアブルサイズも全然均等に変化していない。比較してもこの通り。

上の図はわかりやすいように正円をグラデーションしてある。
色がはみ出したり削れたりしているところにズレが生じている。

前回説明した単純な誤差が蓄積するというだけではなく、glyphs上でベジエ曲線として存在しているラインがバリアブルフォントでTrueTypeで出力された結果、さらに細かいコントロールに問題が生じてさらに誤差が蓄積……ということなのだよコレが。
単純なものほどより注意深くあれという教訓でもあるのだが、技術的にはどうにもならない。
ちなみに、バリアブル化せずに別々にOpentypeフォントで出力する場合は問題ない。このことが、バリアブルフォントの問題なのか、glyphsのほうにあるのかは寡聞にしてわかりかねるのだけどね。

まぁその結果なんかミニマムなのにアナログっぽい書体になってしまったので書体名はこれ。まぁ好きな人なら由来はわかるよね? 結果オーライだ。


さて、要素をしぼって構成するというのは他にも利点がある。
それは、以下のように、glyphsのファイルのコンポーネントのパーツを入れ替えると、なんとフォントの種類を簡単に増やせるという利点があるのだ。
作業の効率化と大量生産の精神だ。工業化萬歳! ……もう、なにがミニマムなんだか……。

しかも、この結果! 何ということでしょう。デザイン的にはミニマムなはずなのに、それが過剰に装飾的な書体に対する代名詞になってしまうという恐ろしいことに。オーウェル先生!


まぁお後がよろしいようで。



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