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なんだかとりとめない話、あるいは途中で放り投げたRound Square Wide Bold Condense Light Stencil(仮)について。

いつもは、タイトルはある程度完成したオリジナル書体の名前とTitle絵にしてあるのだけれど今回は括弧仮。理由は後述。

時はいまだ20世紀。ロシアの大統領がエリツィンで、アルカイダがまだワールドトレードセンターの地下駐車場をうろうろしていた頃。Adobeが満を持して発表したマルチプルマスターフォントテクノロジー、しかしてその現在の評価は曰く「当時は歓迎されなかった」「デザインのプロが評価しなかった」「早すぎた」だそうなのだが……当時リアルタイムで情報に接した人間は、プロのデザイナー含め、わりとこの技術に肯定的だったように思う。その文脈はつまるところバリアブルフォントの関係者が、「今は歓迎されている」「プロが評価している」「待ち望まれたテクノロジー」っていいたいだけとも思われるが、マルチプルマスターが実際のところ最終的にコンシューマレベルではほとんど普及せず、ロストテクノロジーと化してしまったのは事実なので、まぁ現代人からしたら説得力のある評価に思える。

しかし、当時はこの技術は最新のアドビタイプマネージャーとフォントさえ入っていればアプリケーション問わず(多少制約はあったが)使えるという実に筋のいいテクノロジーで、普及に際しての足かせは少なかったように思う。じゃぁなんで? と思うのだろうが、つまるところ使えないのでは無くて、テクノロジーがロストテクノロジー化して忘れ去られる場合の大原則「使わなかったことによって使えなくなった」に嵌まったことにあったのだと思う。

実際のところ、アドビマルチプルマスターと直接の継嗣となるかは別にして、マルチプルマスターというフィロソフィーは現代的なフォント製作現場では欠かせない。Glyphsファイルの構成も基本これで、フォントデザインのプロに支持される技術が、当時のプロのデザイナーに評価されなかったというほうが、あ〜自称プロのアマチュアかよ…という感じ、つまり評価や支持をしていてもつまるところ必要なければ使わないよね。ってことなんだけど、この感覚は当時ですら評価も支持も全く出来なかった素粒子超特急を●れ●●●●ア●●●クソ●理●●使●……ゲッフン、ゴホン。いや、まぁ何だったっけ。

そう、まぁつまるところ、コンピューターエイデッツのデザイナー含めコンシューマーレベルではその当時は用事がなかった(これは支持されないこととは違うのだよ)ということなのであったとおもう。3番目の「早すぎた」っていうのが感覚的にはわかる気がするが、派手なプレゼンの割りに、技術的にはいうほど画期的すぎる感じもしなかった(後述の図参照)。

じゃあ、いまはどうなんだよと言われると、文字を紙の上に定着させることが目標で、標準画面解像度がまだまだ640*480 なんて言ってた前世紀には不要な技術も環境やデバイス次第で変化するのは当然。

逆に現在の方がOSレベルでサポートされるべき技術であるはずなのに、そういう風に実装されていないのは20世紀末に比べてもどうも、個人的には退行しているようにしか思えないのだよね。いや、もちろん、偉い人は、なんか、考えているよね? それなりに。



さて、今回はちょっと技術的な話。といっても相変わらずたいしたことは言っていない。まぁまずバリアブルフォントをつくるにあたって初心者が勘違いしそうな話ということで、下の図を見て貰いたい。

どう? わかります? たいしたことはしていない。って感じ

では、次はこれ

どうだろうか? もうピンと来たのではないだろうか? そう、手持ちの材料だけではどうにもならない現実が存在するのだよワトソン君。20世紀の終わりに、マルチプルマスターという魔術の中に隠されたこの秘密に初めて出会い驚愕したときは、生涯口にしないと堅く誓ったのに……ついに…………ってまぁそんな大袈裟な話でもないんだけど。

そう、まぁ確かにこれなら無限に文字が出来ても意味ないやん。ってなる。そもそも単純な拡大縮小だけではできないこともあるんだよ。ほんと。

ところで、ポストスクリプトベースのマルチプルマスターと違って、バリアブルフォントのテクノロジーのベースになっているのは、昔懐かしのクイックドローGXとGXテクノロジー(と、技術説明されている)なので回転サポートするのはワケないじゃん、と思うのだけど、Variable Conceptのアウトラインデータも回転運動想定しているふうにはなっていないので本当に出来ないのかも? 逆にVariable Conceptのアウトラインはしっかりしたベジエ曲線をサポートしてるふうなのにglyphsでの出力がTrueTypeなのはなんだかなぁ……教えて偉い人って気にはなる。

あと、まぁ注意って程でもないのだけれど、小さいと大きいもあまり差を付けすぎると下の図のように誤差が蓄積しすぎて収拾がつかなくなる。

あたりまえっちゃぁ、当たり前で、分かってる人にはなにを今更感満載すぎて申し訳ないので、申し訳ないついでに。まぁ論より証拠。

下は制作中だった Round Square Wide Bold Condense Light Stencil Kakko Kari(実に頭の悪そうな名前だ)本当に、全く、たいしたことはしていないにもかかわらず、あまりにもマスター形状に差を付けすぎたため中間形で問題が発生している例。さらにglyphsのバグか? ラウンドさせた左下コーナーが開始点になる場合のみ必ず不要な尖りが発生している。

いや、ほんと簡単に作れると思ったんだけどね、角丸追加しただけでもう問題発生……ここからさらにステンシルって……いやいや…………設計見直しして、もっと形状に差の少ない普通の感じにする予定。ただ普通すぎてモチベーションがあがらない。

こっちが完成すればグイングイン、ド派手に変化する4軸のバリアブルフォント………になる予定。だったんだよね。

計画見直し中。








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