あの日見た白の風景を静岡はまだ知らない

私のふるさとは静岡県静岡市。お茶やみかんが有名で、山と海に囲まれた、程よく都会で程よく田舎の、人と気候が暖かい町です。

静岡の特徴は数ありますが、私がこの時期一番口にするのが、とにかく「雪が降らない」。
富士山のある富士市とか、高い山の多い場所では降雪のある地域ももちろんあるのですが、とりわけ静岡市の、特に市街地は雪が降りません。
ちょっと古いデータになりますが、全国の県庁所在地で、沖縄県の那覇市に続いて2番目に雪が降らない市だそうです。
中部山岳に囲まれた静岡の場合、雪を降らせる元となる水蒸気を含んだ雲を、それらの山がブロックしてしまう為、市内まで雪がやってこないらしいです。

「全国的に雪」の日でも、静岡だけは雨マーク。
九州南部に雪が降っても、静岡はやっぱり雨。
浜松や掛川に雪がぱらついたというニュースを聞いて「おっ!」となっても、静岡市ではこれっぽっちも降らず。
静岡市で雪が積もるのは統計的に5年に1度、それも地面がうっすらと白くなる程度の積雪です。

だから、静岡市民にとっては、雪が降る日はパラダイスなのです。
静岡には、「風花」という、晴れた日に雪が舞う特徴的な現象が年に1〜2回程度起きます。
これは、山に降り積もった雪が風に飛ばされて、まるで花びらのように舞うもので、正確には雪とは違うのですが、静岡市の人間は風花が舞うだけで大騒ぎです。
授業中、誰かが窓の外に舞う風花を見つけ、「雪だ!」と叫べば、クラス全員窓際に押しかけ、寒さも忘れて窓を開けて空を覗きます。もちろん先生も。
夕方のNHK、県のトップニュースはもちろん風花の話題です。

本格的に雪が降り、積もろうものなら、授業は中断して雪遊びが始まります。
泥と混ざって茶色くなった雪玉を大はしゃぎで投げ合います。
私が18歳で進学の為上京するまで、雪合戦がギリギリできるくらいの積雪は、多分2回くらいしか記憶にないです。
そのうち1回は、幼少期の写真で見ただけなので、ほぼ未経験と言っても過言ではないです。

上京して初めての冬、東京で見た雪の感動を今でも覚えています。
「うおぉぉおおお雪だぁぁあああああああ!!めっちゃ降ってるぅぅぅぅうううう!!」と騒ぎ、友達に呆れられました。
「ラピュタは本当にあったんだ!!」ばりの勢いで、「雪は本当に積もるんだ!!」と。

しかしそれも、3回めくらいで飽きました。
雪が降ると実にめんどくさい。今さら雪合戦をしようとも、雪だるまを作ろうという気にも特にならず、ただただ差してる傘がじわじわと重くなり、足元と交通機関が乱れる現実にため息をつくばかりの、すっかり都会の人間になってしまいましたよ。

2年前の大雪の夜、純粋に雪を楽しんでいたあの頃に帰ろうと、雪アイコンを作りました。
結果、ただただ全身が冷え込んで寒かったです。
地元を離れて間もなく20年、温暖な静岡の気候と暖かいお茶が恋しくなった、30代後半女性のある冬の日でした。

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