【詩】金曜日の花マル
金曜日は嬉しい朝になった
昨日までの雨が町を丸ごと洗い流し
山の樹々の葉っぱが一枚一枚
見えるほどに空気は澄みわたる
田んぼの稲穂はまだ青く
新しい風に撫でられている
嬉しいことは続いた
登校途中で君に出会って
青い田んぼに挟まれた
どこまでも真っすぐな道を
二人の自転車が並んで走る
君とのおしゃべりが楽しくて
君は猫派
僕は犬派
君は邦楽派
僕は洋楽派
君はたけのこ派
僕はきのこ派
お互いに譲らなくて
それでもこの時間が楽しくて
どこまでも道が続いていてほしい
「よーし、どっちが先に着くか!」
そう言いながら君は先に飛び出す
ずるいぞ!
ぐんぐん自転車を走らせる君
風に揺れるポニーテール
あ、君の香り
もう、負けでいいや
お昼の休憩時間
金曜日は決まって行く所
花壇のそばにベンチがあって
誰も来ないお気に入り
そこでこっそり音楽を聴く
イヤホンをして目をつむった
左側に誰かの気配がして
君だとすぐわかる
君は僕の左耳のイヤホンを
そっとはずし
君の右耳に押し込んだ
ジャミロクワイのVirtual Insanity
ワイヤーを通して二人が繋がる
君の鼓動も聞こえるようだ
見える景色には
校庭でバレーをしてはしゃぐ人達
芝生の上でおしゃべりをしている人達
でも、その声は届かなくて
今は二人だけの音楽の世界
この曲、ずっとリピートしていたい
それでも曲が終わって
君はそっとイヤホンをはずして
立ち上がってこっちを振り向いて
「洋楽もカッコいいじゃん」
「午後の授業始まっちゃうよ」
そう言って走り去った
なんだか目が悲しそうに見えたのは
気のせいだろうか
秋桜の花が微かに揺れた
9月の風は、夏の名残を含みながらも
優しく切ない香りを運んできた
(つづく)
この詩は僕が書いた「月曜日の朝」にsoraさんが「火曜日の昼」と続いてくださったことから始まった自然発生的なコラボ企画です。とはいえ、月曜日から日曜日までお互いに詩を書いていくということ以外は打ち合わせはしてなくて、どんなストーリーになっていくのか、どんな結末が待っているのか全く予測不能企画。書いてる自分もドキドキしています。soraさん、「土曜日の〇〇」よろしくどうぞー(´▽`)
月曜日から読んでみたい方はこちらからどうぞ。