見出し画像

【怪談手帖】ももんがあ【禍話】

禍話へと提供させていただいている僕の怪談においては、「人の形をしているだけの人でない何か」という要素がしばしば現れる。
恐らくそれは、採話者である僕の無意識な恐怖傾向なのだろう。
しかしながら仕事で知り合った歳下の知人、Aくんに体験談を聞かせてもらう席でその話をしていた時、彼が思い詰めたような顔で「そういうものの実在を是非信じたい」などと言い出した時には、流石に面食らってしまった。

僕の反応を見て釈明の如く彼の言う事には「興味本位でもそういうものが怖くないと言いたいわけでもない。ただそうだとすれば何もかも納得がいく。自分もきっとそういうものを見たはずなんだ」と。
.
.
.
.
.
「大学一年の頃、講義で地域調査の課題が出て、お化けを題材にした事があるんです」

と言っても所謂昔ながらの妖怪の伝承だとか都市伝説だとかを調べたわけではなかった。

「お化けが来るぞってやつあるじゃないですか。小さい子供が悪さをした時とか夜遅くまで起きてる時に、鬼だとかナマハゲが来るぞーって。躾で言うような。
 あれって今だとどんなお化けで脅かしてるのか、地元で調査をやったんです」
ちょうどその頃、家庭での幼児語を調査する本を読んで思いついたそうだ。

「まあ、一年生だったし。ゼミなんかでやるようなちゃんとした調査じゃなくても良いわけで。気楽なものでしたよ」
昔の知り合いに頼んでアンケート用紙を配ってもらい、かなり広い範囲で統計を取る事に成功したという。

「結果としては…失敗というか、拍子抜けというか」

そもそも地域全体の人口がその少し前から減少傾向にあったという事が一つ。
もう一つは今どき躾にお化けを持ち出して脅かすような家庭が、少なくとも今回の調査範囲ではほとんどなかったのだ。
前提からして空振っていた事に気付くと、彼は意気消沈してしまった。

「一応悪足掻きもしたんですよ」

何か使えそうなネタがないかと、図書館の郷土コーナーで地元の資料なども漁ってみた。
しかし彼の思っていたようなお化けやその呼び名についての資料などはなく、代わりにこの辺りでかつて起きた大きな飢饉とその被害、それにまつわる気の滅入るような記録や研究が多く出てきたという。

「地元に住んでいたのに知りませんでしたよ。
 まああんまり大っぴらにしたり、地域の売りにするような話じゃないし。
 積極的に教えてもなかったんでしょうけど」

その慰霊の為の石組みや行事、慣習なども記録されていた。
しかしそれ以上にあまりに飢え過ぎて人を食ったとか食わないとか、有名な姥捨山のように年寄りや病人からそうしたとか、どこそこの家から鍋から骨が出たなどが記録されていたという。

「お化けじゃなくて、そういうエグい話がたくさんで。
 まあ全部が全部本当にあったって書いてるわけじゃなくて」

一般に知られる実際にそういう悲劇が起きた地域とはずれていたし、むしろ地域に起こる風評の原因や変遷などに絡めた研究が多かった。
いずれにせよAくんの求めていたような話ではない。

「今ならもっと色々別のやり方もあったと思うんですが。
 当時はもうそれでやる気なくしちゃって」

実際は調査の全てが空振りに終わったというわけではなかった。
Aくんの家のある校区から少し離れた極々狭い範囲。
住民減少がとりわけ深刻な地域のいくつかの家庭におけるアンケートにだけ、回答があったのだという。

「○○が来るよーって。子供を脅かす習慣が残ってたんです。
 いやお化けじゃありません。それっていうのが」

遅くまで起きていると。
そんな事をしてたら。
『おじいちゃん』が来るよ。

児童の方に取ったアンケートでも同様の回答が何件か見られた。
『じいちゃん』だとか『じいじ』だとか多少言い回しに違いはあれど、要するに『おじいさん』が来ると言って脅かしているらしいのである。

「失敗だらけの中で貴重な生の解答結果だし。もっと突っ込むべきだったんでしょうけど」

モチベーションが下がっていたのと、何か不気味なものを感じた事もあり、Aくんはそれ以上調べる事をしなかった。
結局レポートも原因には触れず、やっつけで出してしまった。

「駄目でしたって結果と失敗の理由の方が、教授には受けてましたけどね」
単位も貰えたし忙しい大学一年目の生活の中、やがて忘れ去ってしまった。

けれどもその年の秋、短期のアルバイトを探していたAくんは親しくなったその教授から、「君、○○町からの実家通いだったよね?」と声を掛けられた。

二つ隣ほどの区にある小学校で、子供会の催す毎年恒例の親子イベントの手伝いがあるという。
週末に集まって行う自然学習の締めにあたるもので、連休に合わせて一泊二日、親と子とで学校の一画へ泊まり込み、壁新聞の仕上げをする。
テントは張らないけれど、近くの山林で植物採集をしたり、校庭で飯盒炊爨を行ったり、二日目のお楽しみとして地元猟師の提供による猪鍋もある。
そのような概要で、あれこれ手伝える若い戦力が欲しいと言う事だった。
報酬を聞くとかなり割が良い。短期でお金の欲しかったAくんは二つ返事でOKをしたのだが。

「その地域っていうのが例の調査で変な回答を返してきた…ええ、そうです。人がすげえ減ってる例の一帯で。
 巡り合わせを感じて妙な気分になりましたよ」

連休当日。早朝に家を出て会場である小学校へと向かった。

「校名くらいは知ってましたけど、中へ入るのは初めてでした」

児童減少で閉校の危機にあるという校舎は心なしか閑散として見えたが、校庭には紅葉や銀杏の木がたくさんあって、いかにも秋らしい風景である。

スタッフから説明を受けていると、ぞろぞろと参加の親子が集まってきた。
片親のところが多いという事もあってか、合わせて全部で十人程度。
思っていたよりもずっと少ない。

「話には聞いていたけど、ああかなり深刻なんだなって」
聞けばそんな状況だからこそ、子供達にはのびのびと自然に触れ合い、思い出作りをしてもらうというコンセプトでもあるらしい。

「そういうの聞くとやっぱり張り切っちゃいますよね」

体育館を使ってグループ毎の壁新聞の仕上げが開始され、Aくんは子供達の手伝いに駆け回った。
校庭で新聞に貼る木の実や木の葉を探すのを手伝ったり、これまでのレクリエーションの感想の文章を添削してあげたり、或いは子供達と一緒に作業するお父さんやお母さんにアドバイスをしたり。

「ゼロからの作業じゃないだけやりやすくはありましたけど、結構大変でした」

そうして忙しく手伝いをする中、Aくんはふと一枚の壁新聞の奇妙な一画に気が付いた。

全体の四分の一ほどのかなり大きな区画。
ぽっかりと取られた空間の中心に、人間らしいものが描かれていた。
手足を投げ出すように伸ばし、立っているのかどうかよくわからない。
顔や髪の感じからして男性のようだが、妙な事に顔から服から手足まで全てに細い毛を思わせる線が生やされている。
そして他の記事と異なり、それには題字や説明が一切書かれていなかった。

「全身の毛の所為ですかね…。なんていうか人と動物の中間みたいな印象を受けて」

ひどく禍々しいものを感じたAくんは当惑しつつ「これはなんだい?」と子供達に尋ねた。
すると顔を見合わせたのち、口々に次のような答えが返ってきた。
「じいちゃん」   「おじいちゃん!」   「じいじ!」

「流石にギョッとしましたよ」

彼が思わず「えっ?誰の?」と聞いたところ、ぽかんとした顔で子供達のそれぞれが「うちの…?」と繰り返す。
では何故『おじいちゃん』をこういう風にこんなところに描くのかと言っても、全然要領を得ない。

「もちろん、あの…調査の事を思い出してました。…あんまり意識しないようにしてたんですけど」

何かはわからないが、ひどく嫌な感じがする。
とにかく意味のわからないものを新聞に書くのは流石に、という形でAくんはスタッフへと報告をしに行った。

「そしたら、なんて言われたと思います?」

ああ、あれねえ。と頷いたスタッフ。地元の猟師という男性は隣のスタッフの女性と目を合わせた後、
「あれでいいんですよ。関係がないってわけでもないですから」とそのような事を言ったという。

「いやどういう事なのか知ってるなら説明してくれって思ったんですけど」

ちょうどその時肉体労働に駆り出され、更には夕飯も作業が始まってしまったので、突っ込んで尋ね直すタイミングを失ってしまった。

イベントの工程自体は大きな狂いもなく予定通りに進んだ。
火起こしからの飯盒炊爨も無事に済み、定番のカレーを作りながら、初めての体験に大騒ぎする子供達を父母と一緒に補助しつつ、賑やかな夕飯時を過ごした。
カレーを食べながら、本当に年々子供達が減ってしまって淋しいとか、昔はキャンプファイヤーもやってたんだけど今は色々面倒で、といったスタッフの話も聞きつつ、あの変な絵の事は頭の隅へと追いやっていた。

「まあ所詮絵だしなって気持ちもありました」

やがて日が暮れて、夜が然程深まらないうちに消灯となった。体育館に用意された寝具を用いて、雑魚寝の形である。

「早くないかって…。いや、こういう時ってなんか、怪談とか、やるイメージでしたから…。夏じゃないけど」

子供達がまだ眠くないと騒ぐだろうと危惧していたAくんだったが、予想に反して消灯が指示されるとみんな早々に寝静まってしまった。
結局彼一人だけがあまり寝付けず、体育館の天井をぼんやりと見上げて、脳裏に雑多なイメージを反芻させていた。

あのおかしな絵。
かつての調査とその解答。
そして図書館で読んだこの地域の記録や噂話。
無駄に生々しく描かれた挿絵などが思い出されてきて嫌な気分になったが、それでも漸くうとうとと微睡んで、いつの間にか眠りに落ちたのだが。

ふと、夜中に目覚めた。
何か妙な物音を聞いたような気がしたのだが、身を起こして見回しても何もない。他の人々はみんな静かな寝息を立てている。
寝惚けた頭を振り、微かな尿意を覚えた彼は立ち上がった。
体育館のトイレが夕方に故障してしまって使えないという事だったので、渡り廊下の向こうにある校舎外のトイレまで行かねばならなかった。
他のスタッフの詰めている宿直室の灯りを横目に見つつ、用を足してトイレを出たAくんはその時、弾かれるように校庭の向こう、校門の方を見遣った。

ぬるい風に乗って、妙な臭い —今思えば獣の臭い— がそちらからして来たからだ。
目を向けたちょうどその瞬間、門の向こうからのっそりとひどく背の高い何かが入ってきたところだった。

施錠していなかったのかという混乱、しかしそれよりも———

「なんで、それを見た時…動物だって思ったのか、わからないんですよ」

それは二足で立っていた。
燻んだ色のシャツとズボンのようなものを身につけ、ベルトに似た黒い物を腰に巻いていた。
高い背が曲がって少し前屈みになっており、頭には灰色と白の混じった毛がふさふさと生えている。

人間のはずである。
それなのに、それを目にした時Aくんは熊だとか猪だとか猿だとか、とにかく獣だと思ったというのだ。

「動物園の、檻の中を覗いた時みたいな…」

すぐに理性が追いついて、いや動物じゃないだろうと考え直したものの、感覚は未だ混乱していた。
その間にもそれはのそのそとした足取りで門を抜け、校庭へと進んで来る。近づくにつれ首の上、皺だらけの顔も露わになってくる。
目がある。鼻がある。口も耳もちゃんとある。
しかし何かがおかしい。配分は正しいのに、何故。なんだこれは。
混乱しつつ、今を起きている事をAくんは改めて考えた。

(そうだ、よくわからないものが入ってきて、この方向だと校庭を横切って体育館へと向かっている…!)
知らせないと、と思った。

「宿直室に行くべきだったんですけど、パニくってたんでしょうね、俺。
 体育館の方に走って行ったんです」

慌てて走って行って近付くと、そこでまた違和感を覚えた。

体育館にある低い窓のところに、何か並んでいた。
顔だ。
顔がずらりと並んでいる。それは親子の顔だった。
眠っていたはずの参加者達が、親も子供も残らず起き出して、低い窓に合わせて腹這いになってでもいるのか、横並びでじっと校庭の方を、恐らくはあれを見つめていた。

(どういう状況なんだこれ…、ていうか、気付いてるなら、誰か連絡…、あっそうだ、俺、携帯…)

そこで初めてポケットにある携帯電話を思い出し、まさぐろうとしたところで、後ろの校舎からどやどやと出てきた二、三人 —スタッフの大人達— が追いついてきた。

「あっ、あの、えっと、その…、不審者…!」
言いかけたAくんの言葉を遮って、先頭のスタッフの男性が真顔のままこう言った。

「何に見える」

えっ、と聞き返したAくんに男性は校庭の方を指差し、真剣そのものの表情で「あれだ。何に見える」と繰り返した。
他の大人達もじっとこちらを見ている。有無を言わせない感じだった。

「何って…」
困惑しつつ上手く言葉に出来ない。今まさにゆっくりと近づいてきているそれをちらっと見遣って、再び背に戦慄を走らせながら、Aくんはややあってなんとか言葉を搾り出した。

「な、な、なんか、そのっ…、どっ、動物…?」

異常な答えだと自分でもわかっていた。けれど混乱の中で咄嗟に口から出たのは、第一印象のままの言葉だった。

すると大人達は顔を見合わせて、ぼそぼそと何事か言い交わしてから、何故かお礼らしき言葉をやはりぼそぼそと述べてきたのである。
そうしてAくんの肩を叩くと、訳が分からず固まっている彼をよそに、よく見れば装いが昼間と変わっている男性 —猟師と言っていた彼— ともう一人の女性がそのまま校庭の方に出ていく。

「ええ、どうするんですか!?通報は!?」
というAくんに、先ほど問いかけてきた先頭の男性が、大丈夫だからと言って彼を校舎へと連れて行った。

そうしてAくんは宿直室に押し込められた。
温かい牛乳を一杯貰った後、ラジオがうるさかったが消さないよう釘を刺され、更にはなるべく部屋を出ないようにと言われて、結局彼はその部屋で朝までを過ごしたのである。

「いつ寝てしまったのか自分でも分からないんですけど、気付いたら朝でした」

予定通り迎えにきたスタッフに従って宿直室を出て、昨日の事ですけどと切り出した事ところ、親御さんや子供達を怖がらせるといけないからという事で、口止めされた。
警察にはもう連絡済みで、対処もしてもらったからと。
出ていくとスタッフも参加者もみんな普段通りにしている 。
しかし校庭にはあの時感じたのと同じ臭いが、はっきりと残っていた。正直なところ頭は疑問符だらけだった。

「まあでも、寝不足だったし。疲れも凄くて、なんかもうなんでもいいかなって」

夜中の騒ぎもあれど二日目も猪鍋を食べて、壁新聞を仕上げてから最後に発表会をして解散という、当初の予定のままで行われた。
大きなテーブルが引き出されて、鍋の準備が整えられる。
スタッフの猟師の男性が改めて紹介されてから、主役である肉が下処理をした状態で運ばれてきた。

「そういうの初めて見たんです。
 血抜きをしたっていうんですけど、器に結構血の痕が残ってて、生々しいなあって」

子供や慣れない人には刺激が強いんじゃないかと思ったが、参加者の親子は怖がるどころか皆大喜びだった。
うるさいぐらいに盛り上がって、口々に「早く食べたい!」と声が上がる。

「なんか、ちょっと…怖いくらいのがっつきぶりで…」

やがて火にかけた鍋を真ん中へ幾つか並べて、その場の全員が席に着いた。
そしてスタッフの一人が音頭を取り、声を合わせて「いただきます」と言った瞬間、大きな風が吹いて、背後の紅葉がまるで思いっきり叩いて払い落としたかのように散った。

見る間に辺り一面に散り敷かれたそれが、背景に真っ赤な彩りを添えて、Aくんは何故か、誰かに大笑いされてるような感じを覚えた。

その後壁新聞も完成し、子供達による発表がつつがなく行われた。
ただ一点。

「あの、絵が…完成してて、いつの間にか、書き足されて…」

空間の四隅に紅葉らしい赤い形がいっぱいに散らされ、他の記事の枠にまではみ出していた。
おまけにあの『おじいちゃん』の周りには、拙いタッチの人の顔が無数に書き足されていた。
赤く塗られた大きな口を開けているのだが、どの顔も筆致が荒すぎて笑っているのか怒っているのかなんなのかよくわからない。

「多分、参加者を表しているんじゃないかって思ったんですが」
発表会ではそのスペースと描かれた絵については全く触れられなかった。

帰宅してからAくんは急な高熱を出して、数日間大学を休んだ。
原因不明のってわけではなく、風邪をこじらせたものだったようだが。

回復後、あのイベントに参加した子供達のほとんどが、やはり直後に熱を出して寝込んでいたと知って、Aくんはひどく嫌な気持ちになった。
その所為と言うわけではないが、知り合いの先生らの伝手を辿って、もう少し参加した児童の家庭について調べたところ、奇妙な事実が判明した。

祖父がいない。
どの家庭にも。
亡くなっていたり、早くに離婚していたり、理由はまちまちだけれど、参加していた家庭にはいずれも祖父にあたる人が現存していなかったのだ。

「じゃあ…『おじいちゃん』て、なんなんだよって…」

それに加えてAくんの心を苛んだのは、あれからイベント当日の事を思い出す度に、記憶がおかしくなる事だった。
参加者の親子の顔が回想の度に細かい部分を思い出せなくなっていて、その代わりあの『おじいちゃん』の絵の周りに描かれていた落書きのような顔に上書きされていく。
雑な描線で皆一様に大きな口を開けていた、厚みのないあの戯画的な顔に。
そんな顔をした何組もの大人や子供が、記憶の中の小学校のあちこちで動き回るのを、ただ見つめる事しか出来ない。

そして居並んだ彼らの口、口、口。
そこからはみ出した真っ赤な色。
猪鍋の皿にこびりついた獣の血の色。
鍋の背景に散り敷かれた一面の紅葉。

記憶にいつまでも鮮やかなそれらの赤をふと意識した時に、必ず耐え難い吐き気が込み上げてくるのだった。

ここまで話し終えた後、彼はしばらく黙り込んでしまった。
そして随分な逡巡を繰り返してから、やがて徐に言葉を続けた。

高熱で寝込んでいた時、ずっと同じ夢を見ていたのだと。
それは何かしらの風景のある夢ではなく、目を閉じた時に見える真っ赤な瞼の裏側の色合いだけがずっと続いているもので、ただ、そこに何かがずらりと並んで立っている。
何か。
あの夜、校庭に入ってきたものとよく似ていたとAくんは言う。
人に似ていて、けれども人ではないもの。たまたまそういう姿をしているだけで、全く関係のない全然別のもの。何か知らない動物にしか見えないもの。

「そうです。余寒さんの話を幾つも聞いてそう思えたんです。
 あーあれはそういうもんだなあって」

それらはどくどくと血の流れる管の浮いた瞼の裏側を背にして、ただこちらを見ていたという。

「間違い無くあれはそういうものでした。
 よくわからないお化けです、俺もお化けを見たんです、そうでしょ」

何度も何度も彼は僕に向かってそう訴えかけ続けた。
.
.
.
.
.
この話が僕にとってとりわけ興味深いのは、近い時期に採集したとある天狗にまつわる異常極まりない話と部分的に似通った描写があったからだ。
そして禍話へと提供させていただいている。
僕が書いた、その『天狗✗✗』を持って百話目を数える事になりそうだ。


出典

この記事は、猟奇ユニットFEAR飯による青空怪談ツイキャス『禍話』内の (禍話アンリミテッド 第十七夜 これは怖いのか?特集+怪談手帖新作) 余寒の怪談手帖『ももんがあ』(39:38~)を再構成し、文章化したものです。

禍話 Twitter
禍話 ツイキャス
禍話 簡易まとめWiki
余寒 様 Twitter (原作者様)

原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」がboothにて販売中です。
(この記事のお話は、「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」に収録されています)

ヘッダー画像はイメージです。
Unsplashよりお借りしました。

誤字脱字等その他問題がございましたらご連絡ください

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?