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続々私刑執行人ツヨイちゃん #11 VS神様(後編)

<これまでのあらすじ>
 普通のOLとして過ごしていた面見田麗美(つらみだ うらみ)はある日勤め先の歯科医からのストレスをきっかけに異世界で自由にモノを創造できる能力を手に入れる。
 特殊能力と共に異世界に行き来できるようになった麗美は自分にとって悪とする人間を次々と裁いていく。
 しかし異世界での死体は現実に戻ると猟奇的な――不審死死体として現れ、世間では徐々に関連性が疑われている。
 麗美は警察の動向を気にしつつ、私刑を続けていく。

 天界に居た頃。

 中身があるようで何にもない生命の動きが時々憎くて、でもそれを否定することも無く。天より更に上の世界がくすんで見えていた。

 神様の下に私たち天使が居て、その下に人間が居て、神様は上も下も無いというけれど、そんなことは嘘っぱちだと思っていた。ひねくれている訳じゃない。事実なのだ。強きものが弱きものを淘汰。ポジティブに見れば捕食された後も血肉となって生きている。――そんなもんは詭弁だ。

 分解されたらただの栄養でしかない。 そこに自我は無い。

 そんな循環の続く世界のどこが希望なのか? 「世界を憂いたところで、我々より先に世界は広がっていたんです。生きるしかないのですよ、その法則に従って」「それを改めて作ってるんじゃ本末転倒なんだよッ!」「では答えを教えて下さい」

 淡々と神様は私に容赦なく攻撃を仕掛けてくる。 磔。瓦礫。槍。弓。炎。氷塊。――昔気質なものばかりだ。 対して私は――ミサイル。爆弾。火炎放射器。人間がそれぞれの大義のために使ったもの。槍や弓の延長線上にあった、支配のための武器たち。

「神様なんかよりよっぽど賢いよ、人間は!」「愚かだと思わないのですか。沢山の命を奪って」「愚かであっても、世界は眩しく見えるかもしれないじゃない……!」「だから……分からない人だな」

 神様はほとほと呆れかえっている。  私と対話することの不毛さに飽き飽きしてるのかもしれない。

「アンタはどうして私を見放さない? 捨てたら楽になれる」「それでは結局何も解決しないから……」「こんなに殺し合ったって、どうせお互い死ねないの分かってる。殺せないの分かってる」「答えは永遠に平行線ですね」

 私たちは互いに傷つけあうことに酷く虚しさを覚えた。 記憶を失ってただの人間として生きている間の葛藤には、神に近しい記憶と能力を思い出した今でさえ答えが出ない。

 果てしない。永遠。無限。

 それを思い浮かべた時、蛇姿の白目さんが空から降って来た。私の体に巻き付き、陰部に噛みつく。痛さやいやらしさは無く、丁度それは電源コードを挿したくらいの調子だった。

「神様。私は一つ思いつきました」「その蛇とどうするつもり?」「私たちは次世代の神様にも、人間にもなれない。新しい世界の神を目指します」「新世界……」「新しい世界には何もないがある。そんな場所に私たちだけが存在すれば、それはまた新しい自由の始まりとも言える気がするんです」「貴方は倒錯しているかもしれませんが、心根はきっと優しい――いや、淀みないのかもしれませんね」「褒めているのか分かりませんよ、それ」

 神様はこれまでとは打って変わって穏やかな表情を見せた。 私はどうしてか、長い間解けなかった誤解が解けたかのように感じた。

「ありがとうございました、今まで見守ってくださり。……私はかつて天界を混乱させてしまい、天使から悪魔と呼ばれるようになってしまいました。にもかかわらず下界に落とすだけで命を奪わなかったこと、感謝いたします」「礼には及びませんよ。不思議な気持ちです」

 白目さんは私と同化してからはまったく話さなくなってしまった。 空を包むベルゼブブの闇に声を掛ける。――すると、その闇は大きな橋を空中に作り、天まで続いていった。

 私はそれにゆっくりと踏み出し、新世界を目指した。

 後ろにはきっと神様が居て、眺めているのだろうか?

 随分遠くまで来たところで、もう干渉しようのない地球に振りかえった。 うんざりするほど綺麗な青色。  どうせ神様は防いでしまうかもしれないが、やっぱりなんだか恨めしいと思った私は地球を爆破した。

 意外にも誰が守る訳でも無く惑星は砕け散ってしまい、私はいったいこれまでの葛藤はなんだったのだろうと。

 ある意味色々解決したように思えたので、しっかりと新世界を作っていく決意が出来た。

 自由、ねえ……。

 あくびを一つかまして、まずはひと眠り。

<続>

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