夏草のひとりごと #16 きみが悪いもの
カエルののっぺりとしたところも、表情も、生態もどれも好きだ。
でも本物が現れると反射的に「ウワッ」となってしまう。
好きなのに本物が現れると驚いて逃げてしまう。
虫は飛びそうで意外と飛ばなかったりするけれどカエルは割と人間に引け目を感じず飛んでくることが多い。
顔に飛び掛かってくるわけじゃないけれど、脅かしたいのだろうか。
もし感情があるならどんな風な気持ちなんだ。
好きなのに気味が悪い。
何故か苦手。でも好き。
この感情が素直に成立することにハァーと溜息が出た。
人間相手でもあるなぁって。
好きなのに近づかれると怖くなるし、嫌いっていう訳じゃないけど苦手っていうか……こんな調子だ。
カエルと違って相手は「お、悪くないのかな自分」って思ってるだろうから余計に恐ろしい。
と、まあ平気でそういうことを思う割に、自分がそう思われてるかもしれないという相手に出会うと落ち込むなんて言葉では言い表せないくらい憂鬱になる。
自意識過剰なのだろうか? そうも思えない。
自分がそう思ってしまうことも、相手がそう思ってしまうことも否定できないし、実際に言葉に表されても文句も言う気にならん。
立ち返って、結局好きなんだよな。カエル。
カエルはどう思われてようが自由にピョンピョン飛び跳ねるだろう。
知らねぇ~って感じで、ジトッとした目が自分の個性っぽくてかわいい。
自分もそうでありたいなあ。
憧れているうちはまだまだ遠い存在なのだろう。
指さす君が悪いって、人のせいにもしたい。