夏草のひとりごと #15 足跡、そのうちさよなら
年甲斐もなく友人と浜辺に文字を残した。
二人ともワイワイとするようなタイプでもなかったけど、静かに楽しかったのを覚えてる。
高い空には鷹?が飛んでいて、他で来ていた若い人たちのお弁当をつついて困らせてた。
冬の話なんだけれど、快晴というだけでそれなりに暖かくて風も気持ちよかった。
反対に、街を自由に歩こうとすると少し汗ばんで嫌だった面もある。
そんな風に確かにそこにはかけがえのない時間が流れていたし、ああ生きてるっていいもんだなって思っていた。
けれども、時間は絶対に巻き戻らないうえにどんどん進んでいく。
行ったのは今年の春先だったのにもう後数か月もすれば年の暮れだ。
これまでもこの先も当たり前のように見送ってく時間に何をいちいち耽っているんだろうって自分でも思う。
それでも何かずっと寂しいなって感じてしまう。
ちょっと別の話で、客観性というものは時々酷だなって思っている。
僕が、例えばあなたが感じた最高潮の幸せは誰かにとって他愛のないものだったりするから。
逆もまた然り。不幸せは誰かにとっては乗り越えられる他愛のないこと。
業績や偉業は半永久的に何かしらの形で残っていくんだろう。
それは色んな人の客観性が集合して、認められたものなんだと思う。
ちょっと通りすがっただけのような足跡は波打ち際の気まぐれでいかようにも消えてしまう。
だったら何歩でもいくつでもいろんなところにペタペタ足跡つけてやろうと思った。
迷惑だって言われても、ささやかな抵抗だ。