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「診察雑じゃない?」。そう思った人へ、医師を疑う前に聞いて欲しいこと
なぜ医師の診察が雑に思えるのか
「なんだか診察が雑だなぁ」。
病院にかかったことのある人ならこう思ったことがあるのではないでしょうか。
「この薬飲んでみてください、じゃあ1カ月後に」なんて軽い口調で言われた日には、医師に対して不信感を抱くのは無理もありません。
「医師がテキトーに診察しているから」と思われるかもしれませんし、事実そういう医師がいる可能性も否定できません。
ただ、診断や治療に手を抜くと医療訴訟など医師にとって大きなリスクに繋がりうることを考慮すると、多くの場合は決してテキトーに診療しているわけではありません。
ではなぜこのようなことが起きるのでしょうか。
医師は多忙であり、どうしても病状や検査のリスク、治療内容などの説明が不十分になってしまうからです。
医師にとって外来は戦場と言えるほど忙しく、時間的余裕がないために患者さん一人当たりにかけられる時間は多くありません。
「なぜこの薬を処方したのか」など目的を伝える時間が無く、とりあえず「飲んでみてください」と伝える時間しかないのです。
医師との情報交換の重要性
ではとりあえず医師の言いなりとなれば良いのかと言うと、もちろんそうではありません。
病状の説明や他の治療の選択肢などの説明を十分に受けないままに処方された薬を、あなたは安心して飲み続けられるでしょうか?
後日「こんなはずじゃなかった」と患者さんが後悔することもあり得るのです。
なので、もし私の家族が病院にかかる時、私なら「医師は忙しいから説明を十分に受けられなくてもしょうがない」と割り切るようなことはしません。
医師と交換する情報量が患者さんの病状を大きく左右するからです。
患者さんは体の症状に関する情報を持つものの、その症状から病気を分析し、治療方針を決めるノウハウは持ち合わせていません。
一方、医師は症状から病気を分析する術があるものの、症状に関する情報は患者さんから説明されないとわかりません。
互いが欠けた情報を埋め合う必要があるのです。
医師と十分な情報交換をするためには、十分な面談時間を確保する必要があります。
予約時間よりも早めに来院しよう
では、患者さんはどう行動すれば良いでしょうか?
非常にシンプルな解決策ですが、例えば私の家族には「来院予約を取ったのであれば、所定の時間よりも早めに来院すること」を勧めています。
「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、これは本当に大事なことなのです。
実は、状況によっては医師が他の患者さんよりも優先して時間を確保してくれる可能性があります。
その理由などは、医師の診察の流れを知ることで理解してもらえると思うのでこれから説明します。
「どれくらい早めに行けばいいの?」という疑問もその中で示します。
医師にとって外来患者の対応は大変!
まず、患者さんは医師目線で2種類に分けられます。「入院患者」と、入院せずに病院に通って診療を受ける「外来患者」です。
例えば簡単な風邪をひいた時「とりあえず病院を受診して薬を処方してもらって家に帰る」といった経験が皆あるとは思いますが、この時は外来患者にあたります。
意外かもしれませんが、医師にとって入院患者よりも外来患者を診る方が忙しいのです。
というのも、入院患者はよほど緊急性を要する病態でなければ、日中の12時間で1~2回ほど状態を確認すれば良いので、時間的な柔軟性が比較的あります。
一方、外来患者は診察にかけられる時間が決まっている上、入院患者に比べ事前情報が少なく確認すべき検査項目が多いのです。
外来はまさに戦場なのです。
そのため、外来患者は特に「医師と情報交換する時間を創出する工夫」が必要になります。
では、具体的にどうすれば良いでしょうか?
あなたはどっち?医師が状態を推測しづらい患者か否か
実は外来患者には“医師が状態を推測しづらい患者”と“推測しやすい患者”の2種類がおり、それぞれの患者ですべき行動が異なります。
この分類はとっつきにくいように感じるかもしれませんが、患者さんは自身が“推測しづらい患者”にあたるかどうかを理解するのは非常に大事と言えます。
自身がどちらに分類されるかによって、どれくらい早めに来院すべきかが決まるからです。
先に結論から言うと、“推測しづらい患者”は来院予約時間に関わらず、担当医の外来時間の範囲内でなるべく早めに来院する、“推測しやすい患者”は来院予約時間をしっかり守ることをオススメします。
その理由を医師の診療の流れから紐解きます。
まず、“医師が状態を推測しづらい患者”にはどういう人が該当するかを、医師目線で示します。
【医師が状態を推測しづらい患者】
・ある病気について既にこの病院で診たことがある患者(再診患者)のうち、「前回受診後しばらくは調子がよかったが、実は1週間前から胸が痛い」など前回受診時にはなかった症状を訴えている人
・ある病気についてこの病院で診たことのない患者(初診患者)のうち、他の医療機関からの紹介だが、ある病気についての専門科からの紹介ではない人、または専門科からの紹介でも検査が未実施の人
これらの場合、医師はまずどのような検査をすべきかを判断するために問診と身体診察を最初に行い、その後検査を実施します。
つまり
診察→検査→結果説明→方針決定
の順序で行います。
“推測しづらい患者”は医師がどの程度の検査や治療を要するかの見当が付きにくく、さらには追加検査や入院の可能性もあるため、診療に長時間を割く必要があります。
なので、患者が来院時間よりも早く来れば、医師は出来る限り早めに診察を開始したいのです。予約時間に関わらず早めに来院するようオススメしたのはそのためです。
一方、“医師が状態を推測しやすい患者”は次の通りです。
【医師が状態を推測しやすい患者】
・再診患者のうち、明らかな症状の変化がない人
・初診患者のうち、他の医療機関からの紹介で、且つその病気についての専門科からの紹介で、且つある程度の検査がすでに済んでいる人
この場合は診察する前に検査を行い、これまでの状態と変化がないことを確認します。自ずと検査項目はこれまで実施されていた項目+α程度に限られるため、診察前に検査を実施することができます。
つまり
検査→診察→結果説明→方針決定
検査で前回の状態から変化がないことを確認できれば、後は治療方針の微調整で済むので、診療は比較的短時間で終わります。
来院が遅れると、診察時間は大幅に短くなることも
ただ、患者さんが来院予約時間に遅れた場合、病院滞在時間が長引く可能性があります。
例えば、患者1人当たりの診療時間が20分と決まっている病院で、予約時間が14時00分のAさんが遅刻して14時20分に来院したとします。
同時に予約時間14時20分のBさんが予定通り来院した場合、多くの医師はBさんを先に診察するでしょう。
何の理由もなくBさんの診療時間を後ろ倒すのは申し訳ないからです。
また、その後に予約時間14時40分のCさんも予定通り来院した場合、Cさんが先に診察を受けることになるので、Aさんはさらに後ろ倒しになります。
それに加え、遅刻した患者さんの診療時間は、他の予約の間に無理やり挟み込む形になるので、いつもよりも診療時間が短くなってしまいます。
こうなるのを防ぐために、予約時間より少し前に来院したり、来院予約を取る際に診察前検査を含めた来院時間を確認したりするのがベターです。