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プロットや箱書きを作ったときの落とし穴と避ける方法
イントロダクション
プロットや箱書きが一度完成すると、安心感からその枠にとらわれてしまい、物語の質をさらに高める機会を逃してしまうことがあります。
「よしできた!」と安心して、ちょっとした違和感や不和を見逃して脚本に入ってしまう。だけど本当はどこか納得いってない自分もいる。
こうした状況はよくあることで、視野狭窄や心理的防衛の影響で、もっと良い可能性を無視してしまうことがあります。
しかし、特に、『どこか違和感がある』『なんか違う』といった直感がある場合、それを無視せず分析する価値があります。
思わぬ問題やもっと良い可能性が潜んでいることがあります。
違和感を無視せず向き合うことで、物語をさらに良いものにできるのです。しかし、視点を変えたり、新たなメソッドを活用することで、プロットに潜む問題点や改善の余地を見つけ、より洗練された物語を作り上げることが可能です。本記事では、こうした問題を解決するための具体的な手法とその活用法を紹介します。
具体例
例えば、ある冒険物語のプロットを考えてみましょう。
主人公が村を救うために旅に出るというストーリーがありますが、次のような課題があると仮定します:
中盤以降、物語が停滞している。
キャラクターの成長が薄く、読者に感情移入しにくい。
サブプロットがメインプロットと独立しすぎている。
こういった問題は意外とライター本人が気づきにくいことがあります。しかし、プロのライターは『なんか違う』『どこか違和感がある』という感覚を嗅ぎ取ることが多く、その直感に向き合うことが重要です。
では、どうやってその違和感と向き合うのか?
以下で紹介するメソッドを使ってプロットを再構築してみましょう。
メソッドとその活用法
以下の手法を活用して、プロットの質をさらに高めることができます。
基本はプロットという大きな構築物をそれぞれの軸に分解して考えることです。
1. BBS(Blake Snyder Beat Sheet)に分解する
物語を主要なビート(展開)に分解し、全体の流れを再確認します。
使い方: プロットを「テーマの提示」「冒険と試練」「クライマックス」などのビートに分類。各ビートがしっかり役割を果たしているかを確認します。
例: 「冒険と試練」の部分で、主人公の試練が単調であれば、新たな障害を加える。
2. キャラクターアークを抽出する
キャラクターの変化(アーク)は、物語全体を通じて主人公がどのように成長、堕落、または周囲に影響を与えるかを示します。これを以下の3種類に分けて考えます:
ポジティブな変化: 主人公が物語を通して弱点を克服し、より良い人物やリーダーに成長するパターン。
例: 未熟な若者が精神的に成熟し、他者を思いやるリーダーになる(『アベンジャーズ』のアイアンマンなど)。
ネガティブな変化: 主人公が堕落し、欠点に飲み込まれていく過程を描くパターン。
例: 『デスノート』の夜神月が道徳的に堕落し、破滅に向かう様子。
影響による変化: 主人公自身は変わらないが、彼の行動や信念が周囲に変化をもたらすパターン。
例: 『フォレスト・ガンプ』でフォレストが周囲のキャラクターの成長を促す。
これらのアークを通じて、物語のテーマやメッセージが強調され、読者に深い感情的インパクトを与えることができます。
プロット全体を通して主人公、そして主要なキャラクターのキャラクターアークを抜き出し、変化の条件は十分か? 視聴者やユーザーの感情を動かすアークになっているか?などを診断してみましょう。
例: 主人公が「村を救う」という目的を持っていても、その裏に「孤独を埋めたい」という無意識の動機が加わることで、物語に深みと感情的共鳴が生まれます。
3. サブプロットを再評価する
サブプロットが物語全体にどう影響しているかを見直します。
使い方: メインプロットとサブプロットの関連性をチェックし、両者が補完し合う形に調整。また、サブプロットが複数ある場合、それらを整理し、特に重要なものを抜き出して、メインストーリーをどのように補完しているかを分析します。
さらに、重要なサブプロットは特に第二ターニングポイントでメインプロットと交差することが多い点に注目し、それが物語全体に与える影響を評価します。
例: 主人公の旅の途中で友情が芽生えるサブプロットを加え、これが最終的にクライマックスでの決断を支える。
4. 視覚的な分析ツールを活用する
視覚的なツールを用いることで、プロット全体の構造やキャラクター間の関係性を明確に整理できます。
プロットの全体像を把握するために、相関図やフローチャートを作成します。
使い方: 主要キャラクター間の関係性やイベントの繋がりを図解化。
さらに、ブレイク・スナイダーが提唱するように、カード形式でプロットを分解して整理するのも有効です。
また、人物相関図を作成し、各キャラクターの関係や役割を視覚化することで物語の構造を明確にすることができます。
例: 主人公の動機や行動が他キャラクターにどう影響を与えるかを明確化。
5. 第三者の視点を活用する
他人にプロットをレビューしてもらうことで、新たな視点を得ます。
最近では、MENTAやランサーズ、ココナラなどのオンラインプラットフォームを利用して、プロのシナリオライターや編集者に意見を求めることができるようになりました。
こうしたサービスを活用することで、専門的な視点からのアドバイスを受け、物語の改善点を効率的に見つけられます。
使い方: 専門家やターゲット読者に読んでもらい、具体的なフィードバックを受ける。
例: 中盤の展開が弱いとの指摘を受け、新キャラクターを登場させることで物語の勢いを強化。
結論
完成したプロットに満足せず、一歩引いて客観的に見直すことが重要です。今回紹介したBBSへの分解、キャラクターアークの分析、サブプロットの再評価などのメソッドを活用することで、より深みのある物語を生み出すことができます。ぜひこれらの手法を試し、あなたの作品を次のレベルに引き上げてみてください。