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地域創生からマーケティングまで!DAOの活用事例を4つ紹介
本記事では弊社が関わらせていただいたDAOの具体的な事例を4つご紹介し、「実際の現場ではどのようにDAOの特性を取り入れ、運用がされているのか」をお伝えいたします。
<こんな方に読んでもらえると嬉しいです>
・DAOやコミュニティ運用の導入を検討している
・自社やプロジェクトの特性にあったDAOの導入事例を知りたい
・DAOの構築や運用をサポートしてくれるツールやパートナーを探している
キーワード:・Web3事業 ・地域創生 ・ブロックチェーン活用
<以前のnote記事は、以下からご覧いただけます! >
2024年4月、いわゆる『DAO法』が施行されました。これは、金融商品取引法の改正と会社法の解釈の進展を指し、法人企業様がDAOを導入しやすい環境が大きく整備されたことを指します。
DAOへの期待とそのリアル:DAOが生み出す新たな組織のカタチ
DAOとは、ブロックチェーン技術を活用し、「メンバー全員で管理できる財布」や「メンバー全員で公正に意思決定ができる仕組み」、さらに「メンバー全員で活動を正確に記録し、評価する仕組み」を備えた組織形態です。これにより、「顔も名前も知らない匿名かつオンライン上の不特定多数の人々と、納得のいく形でアセットの管理や意思決定、プロジェクトの推進を行う」ことが実現できます。
しかし、DAOによる組織運営は決して容易なことではありません。しばしば「DAOを用いることで自律分散的な組織運営が可能になる」という単純な定義に引っ張られてしまい、既存の企業組織と同様に「組織運営」に伴う困難が見過ごされがちです。さらに、DAO特有の運営ハードルも多々あり、成果を上げるためには設計や運営に関する相応のリテラシーや経験が求められます。
そこで本記事では、DAOの特性を活かし、独自の組織のカタチを築いている事例を厳選して4つご紹介します。プロジェクトの背景や、具体的にどのような工夫をしているのかを、100以上のDAO構築・運営を支援してきたUnyteの視点からお伝えいたします。
事例1.メンバー数100名超え!20のプロジェクトを生み出すアクティブなDAO【地域創生】
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おさかなだお長崎は、「長崎のうまいサカナの未来をつくる」をテーマに、長崎のおさかなに関するPRや課題解決を目的とするDAOです。長崎の漁業関係者が中心となって発足し、現在100名以上が参加をしています。オンラインでの参加が可能なため、長崎のおさかなを応援したい県内外の幅広い方々が集まり、20件以上のプロジェクトを進行または完了している、非常にアクティブなDAOです。
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DAO内で企画されたプロジェクトには、キッチンスタジオを活用したお魚料理教室や、長崎魚市場や養殖場を巡るツアー、本来廃棄されてしまうことが多い巨大魚の頭を使ったカレーの商品化などがあります。この魚頭カレーは、「ふるさと渋谷フェスティバル2024」という都心のイベントにて提供され、渋谷区不動通商店街の方々との共同で出店しました。このように長崎エリアを超えた地域同士の連携と、PRのカタチも創出されています。
これらプロジェクトやタスクに貢献したメンバーには、DAO内の独自トークンが送られ、その貢献内容はブロックチェーンに記録されます。そして集まったトークンは、独自のリワードと交換することができます。おさかなだお長崎のリワードの一つに「DAOメンバーが営む長崎や都内の飲食店で、長崎のおさかな料理と交換できる」というものがあり、このような「このDAOならではの嬉しいリワード」も、メンバーの連携や関係性の強化に繋がっています。
おさかなだお長崎では、地域プロジェクトでよく見られる「貢献しても報われず、活動が続かない」という根本的な問題を克服し、健全でアクティブな組織運営が実現されています。
【関連リンク】
長崎経済新聞に掲載された視察旅行の様子
長崎市長崎創生プロジェクト事業に認定
事例2.国内初!商業施設と学生のコラボレーション【カスタマーサクセス・地域貢献】
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東急不動産様が手掛ける商業施設<あべのキューズモール>で実施された「学生の挑戦を後押しするプロジェクト『登Q門(トウキューモン)』」では、DAOの仕組みを活用した運営体制が導入され、地域活性化と商業施設の新たな価値創出に向けた取り組みが行われました。ここで導入された学生DAOでは、施設のイベントスペースや集客力といったリソースが提供され、イベント企画を実施できます。2024年の初開催では20名近い大学生が参加し、約3ヶ月間の準備期間を経て、文化祭のような形式で3つのブースを出店するイベント企画を実施しました。
登Q門の取り組みの中で、DAOの運営や企画の推進がDAOメンバー主導でなされたことは一つの成功と言えるかと思います。立案当初、プロジェクトアイデアの最終決定は施設側でするという方向性でしたが、施設側からは基本的に関与せず、DAOメンバーの決定を受け入れる方向にシフトしました。そこから企画内容やポスターデザインなど、企画にかかわる全てをDAOコミュニティとしてメンバー間で意思決定をしてきました。そのため、最終的なアウトプットはDAOの意思が反映されたものとなり、そのことは参加してくれたDAOメンバーの満足感に繋がったと思いますし、DAOの良さが出せた部分でした。(1日の限定出店で)最終的に、概算としてブースには200名の来店があったと思います。
登Q門はこの経験を活かし、現在2回目のプロジェクトも進行しています。2025年3月に開催が予定されている「サバゲーFesta」の企画・実行も学生DAOが行っています。このように、自社のリソースにDAO起点のアイデアやメンバーによる貢献を掛け合わせることで、新たな価値の創出を実現しています。また、DAOメンバーがモチベーションを維持して取り組めるため、施設だけでなく地域の活性化にも大きく貢献するような、質の高いイベント企画の実施に繋がっています。
事例3.採用DAO!入社後のギャップやミスマッチの課題を解決【HR・採用マーケティング】
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採用DAOは、新卒採用プログラムにおいて、これまで以上に学生の「共感」を生み出し、入社後のギャップやミスマッチを発生させない採用活動を実現する取り組みです。
一般的に、グループワーク形式の採用プログラムでは、学生が顔を合わせて議論・準備を進め、その過程やアウトプットを採用担当者が評価する、という仕組みです。しかし、採用DAOでは、学生は匿名で参加し、学生一人ひとりの発言・作業・アイディアに対し、学生がお互いに「いいね!」を送り合います。そして、ワーク終了時の「いいね!」の量によって、最終的な評価が決定されるという仕組みになっています。
採用DAOで重要なポイントは「匿名参加」であることと、「相互評価」の2点です。
従来の採用プロセスでは、履歴書や面接に依存する傾向があり、候補者の本質的な能力や特性が十分に把握されない場面があります。特に、学歴への印象が無意識のうちに影響を及ぼし、正しい評価を妨げる要因となることが課題として挙げられます。これらの課題を解決するため、「匿名参加」という仕組みを取り入れることで、学歴などのバイアスに縛られることなく、純粋な貢献や成果に目を向けることができます。
そして、学生メンバーが相互評価を行うことで、これまで採用担当者が捉えられていなかった「裏側での貢献」も可視化することができます。つまり、採用DAO内ではすべての言動が相互評価の対象となり、可視化の仕組みそのものが評価プロセスとして機能しているのです。このように、企業側と学生側の双方が透明性のある評価プロセスに関わることで、入社後のギャップやミスマッチを防ぎ、より共感される採用結果を得ることができるのです。
事例4.人材マッチングDAOが始動!プロフェッショナルが集う成長の場【ビジネスマッチング・HR】
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Yoake DAOはBallista様が2024年10月から運営を開始した、招待制のフリーランスコミュニティです。Yoake DAOは、Ballista様が提供するプロ人材とスタートアップ、エンタープライズを繋ぐプラットフォームサービス「Yoake」において、プロフェッショナル人材同士が相互に貢献し合い、共に成長できる“場”としての機能を担います。
プロフェッショナル人材と企業は多種多様な課題を抱えています。フリーランスの人口は年々増加していますが、不安定な収入、スキルアップの困難さ、理不尽な契約条件(報酬の搾取)、多種多様な人たちとの交流機会の不足による孤独感など、フリーランスは様々な課題を抱えています。また企業側としても、期待値と人材スキルのミスマッチが生じやすいといった大きな課題があります。
そのような課題を解決するため、Yoake DAOでは大きく3つの機会が提供されています。1つは、DAOメンバーによるナレッジの投稿や閲覧、勉強会の開催によるスキルアップ。2つ目は、運営者および他参加者との面談を通じたキャリア形成のサポート。3つ目は、オンライン・オフライン交流会の参加による新たなネットワークの構築づくりです。一つ目のDAOメンバー同士のナレッジ共有により、互いに貢献し合うことでスキルアップが効率よく行われると同時に、孤独感の解消にもつながります。2つ目のキャリア形成サポートは、他のフリーランスの現状を共有することで、自身のマーケットの価値を確認することにつながります。そして3つ目の交流会は、フリーランス自身の特性や人間性を知ってもらう機会でもあり、チームづくりの場にもなります。これら3つの効用が合わさることで、YoakeDAOは一時的な交流や勉強会に留まらない、フリーランスの方々に必要とされる場としての機能が高まっていくのです。
ブロックチェーン技術が組み込まれた新規事業を2つご紹介
以下のパートでは、Web3プロジェクトやプロダクトの新規開発に弊社が関わらせていただいた事例を2つご紹介し、どのようにブロックチェーン技術が事業に組み込まれているのかについてお伝えします。
UnyteではDAO運用ツールの独自開発と同時に、Web3プロダクトの開発支援も行っております。近年、ブロックチェーンの「データの保存・改ざんができない」という特性を活用し、プロダクトやプロジェクトを企画される企業が増加しています。このような時代において、「SNSログインで簡単にウォレットが作成できる」「ガス代不要でブロックチェーンへデータを刻める」といったUnyteが開発するDAO運用ツールの機能を、自社のWeb3事業にも組み込みたいとのご要望をいただく機会も増えてまいりました。
こちらのパートでは、UnyteによるWeb3プロジェクトの支援事例を2つご紹介します。
事例1.生徒の努力が生涯残る!生徒ファーストに設計された独自のプロダクト
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帰国生の受験指導で20年以上の実績があるepis Education Centre(以下epis)様は、帰国生向け学習塾としてオーストラリア・香港・インドに合計9つの教室を展開されています。
今回Unyteが開発したNFTミントサイトでは、生徒が塾で学習した内容やボランティア活動・説明会等への参加実績がNFTとして発行されます。そして生徒同士で教え合い、そのお礼に独自トークンであるエピス・コインを送り合うこともできます。また保護者の方もこのシステムへ会員登録ができ、家庭での勉強内容に応じてエピス・コインを送ることも可能なため、学生・保護者・塾のコミュニケーションが生まれ、結果として生徒の学習意欲が促進されます。また独自のリワードも設計されており、一定数のコインを集めることで、夏休みに開催される特別なプログラム等にも参加することができます。このように生徒のやる気が醸成される工夫が散りばめられています。
これまで、自らの学習データは学校に保管されており、生徒はデータの保存や管理、持ち出しをすることができませんでした。今回開発したミントサイトにより、生徒自身が学習履歴を自己主権的に管理し、持ち歩けるようになりました。
また、epis様はそれぞれの生徒が、テストの点数のような画一的な要素だけでなく、本人の興味関心や特性を加味して評価される世界を実現することを目指されています。NFTミントサイトは単なる学習支援ツールではなく、学生一人ひとりの可能性を最大化するプロダクトなのです。
事例2.自動車メーカーとお客さまの垣根を越えたサービスと体験を提供
日産自動車株式会社は、web3の概念およびテクノロジーを活用し、お客さまへ新たな価値を提供することを目指す「NISSAN PASSPORT BETA」を1月から開始することをお知らせいたします。本プロジェクトを通じて、web3の概念や特性を生かし、自動車メーカーとお客さまの垣根を越えたサービスと体験を提供。お客さまからの反響をもとに、今後のサービス拡大を検討してまいります。まずは12月5日(木)に特別体験に参加できる限定配布のメンバーシップNFTの応募を開始いたします。 本格稼働に先立ちNISSAN PASSPORT BETAでは、メンバーシップNFTと独自web3ウォレットの提供、コミュニティの開設、体験型リワードプログラムを展開予定で、今後はお客さまの反響をもとに、さらなるサービスの拡大を参加者と共に検討してまいります。
現在、NISSAN PASSPORT BETAでは以下が提供されています。
1.メンバーシップNFTの提供
2.独自web3ウォレットの提供
3.Discordコミュニティのベータ版を開設
4.体験型リワードプログラムの提供
このうち、Unyteは3つ目のDiscordコミュニティにおけるメンバーの活動・貢献の可視化および、4つ目のリワードプログラムにおけるユーザーへのトークン付与ができるシステムの開発を担当させていただいております。
Unyteについて
UnyteではDAO構築のための統合プラットフォームの提供に加え、登Q門をはじめとするエンタープライズ企業におけるDAOプロジェクトや、金商法府令改正に基づき設立が可能になった合同会社型DAOの構築・運用のサポートが可能です。DAOの設立をご検討されている方は、ぜひ以下のリンクからUnyteチームまでお問い合わせください。