![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10005387/rectangle_large_type_2_36ab6e8b9d90da943f133f764343d59f.jpg?width=1200)
褒めて。
「ねぇねぇ、ちゃっかりってエライ?褒めて褒めて!もっと褒めて!!」
わが家のJCちゃっかりの最近の口ぐせである。
中学生にもなって今頃赤ちゃん返りかい?
受験生で不安定な状態なのはわかっていても、こうした過剰な甘えっぷりを見ているとちょっとびっくりしてしまう。
自分が中学生くらいのことを思い返してみると。
私はちゃっかりのように親にベタベタ甘えたりすることができない子どもだった。
「褒めて!」
そんなふうに手放しで親に甘えていくことがどうしてもできなかったし、たぶん今でもそれはあまり変わっていないかもしれない。
ちゃっかりの赤ちゃん返り。
デッカくなったJCの不思議な状態に付き合う日々の中で、特に見る気もなくhullで見始めた映画に釘付けになった。
その作品は「しゃぼん玉」。
「スナフキン!しゃぼん玉って映画、知ってる?」
「しゃぼん玉?セイっ!!長渕剛か?」
あかん。
素晴らしい映画だったことを夫スナフキンに真面目に教えてあげようとしたのが間違いだった。
そんなわけで、ちょっとこちらに書かせてもらおうと思う。
親からの愛を知らずに育った男の子が、偶然辿り着いた田舎町に居着き、一人暮らしのおばあちゃんと一緒に暮らすことになる。
このおばあちゃんというのが、市原悦子さん。
土地の方言だと思うが、男の子のことを「坊」と呼ぶのだ。
「坊〜坊はほんまにええ子。ええ子じゃ。」
「坊〜よかったなぁ。スゴイわスゴイわ!!」
市原悦子さんといえば、日本昔話。
このおばあちゃん役でも、あの日本昔話と同じ優しい語り口で、坊をともかく褒めて褒めて褒めまくるのだ。
何処からきたのか素性もわからない怪しい若者に対して、詳しいことは何も聞かず、黙って三食のご飯を作ってやり、お風呂を沸かし、洗濯をしてあげる。
おばあちゃんだけではなく、町の人々が皆、この若者を「坊!」と呼び、彼がちょっとしたお手伝いをしたら「ありがとうねー!」と感謝の言葉を惜しみなくかけてやる。
悪態をつきながら、嫌々手伝う仕事ぶりであっても、決して呆れたり怒鳴ったりしない。
「おまえはやればできる。それはようわかっとる。」
やっぱりそんなふうに認めてやり、励ます。
すると彼は別人のように柔らかな表情を見せ始める。
褒められて嫌な人はいない。
認めてもらって嬉しくない人もいない。
ただ、褒める。
簡単なようでものすごく難しいことが自然にできる人は、本当に優しくて強いのだということに気づかされた私は、ワンワン泣くことも出来ず、ひたすら静かに涙を流しながら、この作品を最後まで堪能させていただいた。
「坊は、ええ子。」
「出た!!もうすぐに影響されてから!!」
JDドカ弁にバカにされるが気にしない。
「ちゃっかり〜!ちゃっかりは、ええ子!!」
髪の毛をワシャワシャしながら頭を撫でてやると、幸福そうな顔をしたあと、ペンを持ち、受験勉強に戻っていく。
赤ちゃん返りもいいじゃないか。
「褒めて!!」が口にできる無防備さ。
その無防備さは、いつか本物の強さを手に入れるバネかもしれない。
そのバネを上手に使えたら、いつの日か自分以外の人に優しくできる大人になれる日がやってくるかもしれないのだ。
「褒めて!」
そう素直に言えるタイプじゃなかった私が親になり、わが子からリクエストされた「褒めて!」に戸惑っている最中に、偶然ではあるが一つ学習させていただいた作品「しゃぼん玉」。
機会があれば是非、一度観てください。