『普通○○だと思わない?』と言う人。
こう問われたこと、ありますか?
『普通○○だと思わない?』
半ば強制的な同意を求めるような問いかけをされると返事に困る。
なぜか?
だって『普通』ってなんやねん。
あなたの『普通』を否定はしないが、なぜこちらが『普通はそうですよね!』と答えてやらなければならないのだ。
この質問を投げかけてくる人は、かなりの確率でプライドが高い。
全てが自分基準なので、すんなり同意してやらないと不機嫌になられるのが厄介である。
『普通○○でしょ‼︎』と会議の場で唾をを飛ばしながらまくしたて、会議室がシーンと静まり返ると、
『普通は○○だってわかるはず‼︎賢い人ならわかると思うけど‼︎』という捨て台詞を残して会議室から出ていった人もいた。
言いっ放しの逆ギレである。
残された者たちは皆やれやれといった様子で『ハイハイ、あなたは賢い賢い‼︎』と爆笑である。
本人は賢い自分が笑われているなどと夢にも思っているまい。おめでたい。
こういう『私は賢いのよ‼︎』と言いたくてたまらない人が放つ言葉がもう一つある。
『教えてあげるから!』
なんだろう、このモヤモヤする感じ。
『教えてあげる』と、あげるを強調するのがポイントである。
根っからの根性悪でもないのだろうが、これを連発する人は必ずといっていいほどあまり人に好かれていない。
子どもの頃、こう言って躾られたのか?又は『あなたは賢い!素晴らしい!』と親に言われて育ったのだろうか?
『自己肯定力は小さな頃に養われます。どんどんお子さんを褒めましょう。』
育児本などでよく『褒める育児』について目にしたが、果たしてどの程度肯定するのが正しいのだろうか?
私の妹は、褒める育児推進派である。
彼女は『全肯定』で育児しているのが少し気になっていたのだ。
『かわいい!賢い!なんでそんなにかわいいの?』
自分の息子や娘に向かって人目を憚らず褒めちぎっていた。身内もひくレベルの溺愛ぶりである。
我が子を褒めることは素敵なことだし、必要なことだと思うが、程度もんである。大丈夫なんだろうか、うちの甥っ子や姪っ子は。
そんな心配をしていた矢先、妹から電話がかかってきたのだ。
『どうしよう!めっちゃ恥かいた‼︎』
かなり慌てているのである。
『何、どないしたん?』
『今日さ、歯が痛くてどうしても我慢できひんから歯医者に行ってんな。』
『ふんふん。』
『めっちゃ痛いから怖くてさ、怖い怖いって私が言いながら治療受けてたらさ、息子と娘が叫んでんよ‼︎』
『なんて?』
『かわいいママ!めっちゃかわいいママ〜‼︎頑張れーっ‼︎って。』
『あんたがいっつも褒める育児してるからしゃーないやんか!』
『いやいや、歯が腫れてさ、オタフクみたいな顔になってるのにさ、めっちゃかわいいママ連発するし、叫ぶからうるさいし!』
『それでよく治療中外につまみ出されんかったなー。』
『先生がさ、すごい冷静な声で‘はーいちょっとうるさい〜、可愛いママは頑張るから静かに〜’って言いはるから歯の痛みと恥で死にそうなった‼︎』
『わっはっは!あんたアホやろ‼︎』
褒めすぎる全肯定育児も度を超えると支障をきたすという見本のようである。
『それがさ、歯医者終わって帰りにスーパー寄って買い物してたら子どもらがいなくなってさ!慌てて探しまわってたんよ。そしたらさ〜…。』
『まだなんかあんの⁈』
『そうやねん。ウチのバカ息子とバカ娘がさ“可愛いママ〜‼︎どこ〜‼︎”って絶叫しながらスーパーで私を探してるねん!“ハーイ‼︎こっちよ〜‼︎“とは返事できひんやんか‼︎』
まったく何が何やらである。
『私の、俺の良さがわからへんの⁉︎普通わかると思わない?賢い人ならわかると思うけど‼︎』
甥っ子や姪っ子がそんな『自称賢い人』にならないことを祈りたいものである。
今回の甥っ子と姪っ子の反応を見て、これはあかん!と焦った妹は、自分は可愛いと信じきっている姪っ子に突然現実的なことを伝えたそうだ。
『Nちゃんはそんなに美人さんじゃないけど可愛いよ。だからお友達の前で私は可愛いとか言ったらあかんよ。』
『Nちゃんは美人じゃなかったの⁉︎』
姪っ子はそう言ってものすごく落ち込んだそうである。
全肯定育児を卒業することにしたらしいが、果たして上手くいくのだろうか?
そういえば。
テレビに映る福山雅治さんに向かって、
『あっ‼︎本当のパパや!本当のパパ〜‼︎』と叫んでいたこの子たち。
これも現実ではないことを教えておくことが急務なのではないだろうか。