JSの新規開拓。
午後15時20分。
ピンポーンとインターフォンが鳴った。
おかしいな、今日は6時間の日だったはず。JSちゃっかりの帰宅時間より一時間は早い。
『はーい!』
インターフォンに写る画面を見ると、おしゃれな2人のJSが並んでいる。
『あの、◯◯ですけどちゃっかりちゃんいますか?』
『あーごめんね。今日は6時間だからまだ帰ってきてないねんよ。』
『わかりました。さようなら。』
◯◯さんて誰だ?年下の友達?同級生ならまだ学校よね⁇
謎めいた2人のJSを見送り、しばらくするとわが家のJSが帰宅した。
『あのさ、◯◯さんて子が友達と誘いにきたけど。』
『あ、うん!約束しててんけど6時間になったの言うの忘れてて!メールしなきゃ‼︎』
『え?年下の友達?』
『ううん、同級生!隣の小学校の子なの!公文で仲良くなったからさ、メアド交換しててね〜!どうせ4月からは同じ中学に行くからねっ!仲良くなってよかった〜!』
ちゃっかりらしい早業である。
サクサクとiPadからメールし、公園に遊びに出掛けて行った。
夕方になり、帰宅したちゃっかり。
『あー楽しかった‼︎』
『おかえり!向こうの小学校の子ばっかりと遊んだん?』
『ううん、違うの。ちゃっかりだけ仲良くなっても仕方ないでしょ。だからちゃっかりたちの小学校の友達も呼んでみんなで遊んだの。みんな仲良くなってね、中学からもよろしくーって盛り上がってねっ‼︎』
春から通う中学校は、二つの小学校区が引っ付いて通うことになるのである。
はじめは互いの出身校同士が固まって、よその小学校の子たちをお互いに牽制しあうのが中学のあるあるな光景なのであるが、その前にしっかりリサーチして自分の友達との橋渡しをしているのだから本当にちゃっかりしている。
JSは名刺を持たずとも、小さな可愛いメモに書いたメルアドを交換するだけで、さっさと人脈を広げていく。
この軽やかなフットワーク。
その様子からは『中学生になったら』とか、『中学に向けて』とか、卒業前に襟を正して書く卒業文集のような、肩に力が入ったような姿はまったく感じられない。
これから始まる新しい生活への期待を胸に、少しでも自分が快適に楽しく過ごせるように自分用のスペースを確保していくJSちゃっかり。
12歳の知恵、侮るべからず。
凝り固まりがちな大人の知恵は錆びつきやすい。
歌うように軽やかなJSの歩み方を少し見習おうと思う私。
そんなことを思いながら夕飯の支度を始めると、JKドカ弁が帰宅した。
『何?ちゃっかりもうあっちの小学校の子と遊んでるん⁉︎チャラいわーやっぱり‼︎』
こういう発言が出るのがやっぱりJKドカ弁なのだ。
ドカ弁は見た目と違ってかなりの慎重派である。
慎重に人付き合いするが、なんのかんのと裏切りにあったり、面倒なことに巻き込まれやすい体質。
ほどよい距離感で、ほどほどの八方美人ぶりを持つちゃっかりは、人付き合いは大の得意。姉とは真逆である。
新規開拓が得意なJSは、わざとらしくないのが功を奏しているのだ、今のところは。
これがあからさまになりだしたが最後、トラブルもやってきそうなのが少し心配であるが、『チャラいけどいい子』というキャラを確立したら負け知らずなのは、やはり妹のちゃっかりになるのだろうか。
それにしてもちゃっかりよ。
新規開拓もいいが少しは嫌いな算数をやっておかねばいけないんじゃないのか。
いや、そういえば。
友達100人を目指して小学校入学後、全クラスを回って自己紹介を済ませ、児童名簿に赤丸をつけてニヤニヤしていたのはドカ弁だったか!
『友達100人できた‼︎』
数字に強かったがやり方が何やらなドカ弁だったよな。
算数<人脈作り
人脈=生きやすさ
ちゃっかりはやっぱりそれでいいのかもしれない。
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