ビギナーズラックという沼④
コロナ禍の中、自宅に籠りながら馬券が購入できる「JRA即パット」を知り、初めてのネット投票をした宝塚記念2020で万馬券を的中させた。
ビギナーズラックという沼へようこそだった。
こうして幕開けされた馬券生活。
週末になると競馬の予想をするのが楽しみになった。
中央競馬で行われる、大人なら誰もが一度は聞いたことがある可能性か高いと思われる有名なG1レースだけ投票していた。
春から始まるレースは桜花賞とか皐月賞、天皇賞春。
全てのホースマンの夢、競馬の祭典と呼ばれる日本ダービーへ。
次々に華やかで、高いレベルのレースが開催されていくのだからワクワクが止まらない。
こうした有名なG1レースだけでも数多く開催されるわけで、その都度投票しているとお金が出ていくわけである。
勝ってテンションが上がる時ばかりではない。
負けてえらいこっちゃな気持ちと行ったり来たりだった。
「どうしよ。調子悪いわぁ。」
勝ちの波に乗れないでいる時、当時まだ大学生だった長女ドカ弁が言ったのだ。
「uniさん、高知競馬で'一発逆転ファイナルレース'ってのがあるんやて!」
一発逆転?
何を言っているのか意味がわからない私に、ドカ弁がYouTubeから見れる競馬のライブ中継の様子を見せてくれたのだ。
日曜日の夜8時頃のことだった。
当時は競馬がこんな夜までやっていることも知らなかったし、何より美しい緑の芝ではなく、真っ黒な砂の競馬場の様子に違和感しかなかったのであるが、これが地方競馬場だということを後々知っていくのだ。
「高知記者選抜、一発逆転ファイナルレースです!」
ゲート上にはピカピカ光る電飾で「一発逆転」という文字がド派手に輝いていた。
そうして始まったレースであるが、結果を見てその意味がわかった。
1着11番人気、2着1番人気、3着12番人気。
3連単の配当は28万円⁈
いやいや、宝くじかよ!
中央競馬でコテンコテンに負けた後、負けを取り返したい方々が流れてくる場所。
最後の神頼みならぬ馬頼みなのだろうか。
「一発逆転ファイナルレース」
考えた人は天才なのか悪魔なのか。
地方競馬で検索してみると。
楽天競馬という地方競馬がいつでも買えるアプリがあることがわかってしまった。
好奇心に抗えず、JRA即パットに引き続き楽天競馬まで登録してしまったのだった。
地方競馬は平日も毎日のように開催されているのでいつでも馬券が買えてしまう。
高知一発逆転ファイナルレースだけが特別荒れて高配当というわけではなく、あちこちの競馬場で日常的に大荒れしているのだ。
違和感に慣れるまでは更に何が何やらであったが、少し慣れてくると今度はヤバイくらい的中しだしたのだ。
コツを覚えてくるというのだろうか。
1番人気がやたらと飛ぶとか、1番人気が3着で10番人気が1着とか。
ともかく常識で予想しても当たらない。
1番人気を嫌って4番人気くらいの馬を軸にしてあとは穴馬に流すと万馬券が面白いくらい的中した。
中央競馬でビギナーズラック。
一年過ぎる頃にやってきたスランプ。
スランプから一発逆転ファイナルレースとの巡り合わせ。
地方競馬で再び的中率と回収率が急上昇へ。
天国、地獄、大地獄、天国、地獄、大地獄……。
子どもの頃遊んだ指占いのメロディが頭の中を回る感じだった。
この頃の自分は破壊願望でもあったのだろうか?
何もかもどうなってもいいという投げやりな気持ちまで少なからず芽生えはじめていて、暗い影に心を支配されていくような感覚だった。
当たっても外してもガハハと笑い飛ばせる精神状態でないと賭け事など楽しめるはずもない。
好きだった人の裏の顔に気づき、幻滅しながらも離れられないような。
別れたいのに別れられない。
忘れたいけど忘れられない。
失恋ソングの王道をいくような日々。
恋と競馬を一緒にすな!と思われるだろうが、ダメな恋愛に溺れているような、そんな自分自身に酔っているような心境になっていった。
そんなドロ沼化してきた競馬生活に終止符を打つことが目前に迫っていることをこの時はまだ気づいていなかったわけであるが。
⭐︎心から競馬を楽しんでおられる方、また素敵な恋愛をしている方には大変失礼な表現があることをお詫び申し上げます。
ありのままの記録を振り返る作業をしています。
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