はじめてのインド旅行記 ~ガンジス川のほとりでヨガ~
4時にアラームが鳴った。
1月の朝は、暗い。
例の彼と、昨日別れた場所に集合し、大通りに出る。
オートリキシャをつかまえて、どことも分からない行先を、彼が運転手に伝える。
真っ暗なことと、地理感がつかめないこと。どこに向かっているのか、さっぱり見当がつかない。ひんやりする風が、肌をつつく。冬の風のにおいがする。
15分ほどで、オートリキシャがスピードを緩める。
目的地に着いたようだ。
そこは、ガンジス川のほとりにある寺院だった。
寺院といっても、日本のように、ご本尊が祀られている本殿のようなものはなく、コンクリートで固められた床と、ひさしのある休憩スペースが設けられている、公園のような場所だった。
床の上には、色褪せた長いカーペットが5列敷かれている。
どうやらここでヨガをするらしい。
本当にこんな場所でヨガをするのだろうか?
私が知るヨガは、鏡張りのスタジオで、スポブラとスパッツを履いたインストラクターを見よう見まねでするもの。または、砂浜でする、サンライズヨガ。
彼女と彼と、会話をしてその時を待っていると、男性3人が、ステージに上がってきた。
もう始まるかな?と見つめていると、マイクテストが始まる。
続々と人が集まってきて、気づくと人でいっぱいになっていた。
インドのヨガが始まる。
音楽に合わせて、話が始まる。
何を言っているのかは、分からない。今日の天気について話しているのか、この世の刹那について話しているのか、はたまた最近の時事ネタ・・・?
彼の言葉に合わせて、人々は、呼吸を整え、体を伸ばしたりする。
何がなんだか。斜め前の人がしている動きを真似して、一生懸命ついていく。
動きは、ヨガ教室で見るような太陽のポーズとかいうものではなく、ストレッチに近い。
時にはみんなが同じテンポで両手をあげたり下げたりする、息が切れる動きもある。
ここでのヨガは、ヨガ本来の、呼吸を意識しながら身体を動かすことで、心と身体の調和を保つもの、だと感じた。
一通りストレッチが終わりそうな頃に、笑いヨガなるものが始まった。
両手をあげて、ただ笑う。50人ほどの集団が、一斉に両手をあげて、腹から声を出しながら笑う。狂気、奇行、オカルト。
最初はためらいつつ、小さく両手をあげていたが、なかなか終わらない。
隣の人を見ると、アジア人が怪奇の眼差しを向けるからか、少し居心地が悪そうだった。
ここはインド。私を知るのは、一緒に旅をしている彼女しかいない。
両手をあげて、ただ笑う。おかしな気持ちになった。少し恥ずかしいけど、理由もなく楽しい。何も面白いことはない。でも、胸いっぱいに広がる愉快な気持ち。笑うことが体に与える作用は、莫大なようだ。
どのように終わったか、覚えていないくらい、あっけなくヨガは終わった。インドの人々の身近にあるヨガ。いいものだな、と思った。
彼に連れられ、朝のガートを歩く。
黄砂か排気ガスか。太陽の光がモヤで遮られ、心地よく日差しを浴びながら、1月3日の朝が始まった。
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