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音楽に関する著作権について -Part2-

Introduction(導入)

音楽に関する著作権について -Part1-」では、著作権の基本的な知識や歴史などをまとめましたが、ここのPart2では、音楽著作権がどのようにビジネスに関わっているのかをまとめてみました。

キーワード

  • 日本音楽著作権協会(JASRAC)

  • 音楽著作権の管理業務

  • 管理手数料

  • 株式会社NexTone

  • 著作権等管理事業法

  • 包括的利用許諾契約

著作権事業者

日本音楽著作権協会(JASRAC)

一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の英語表記は、「Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers」です。 表記にありますようにJASRACは、国内の作詞者(Author)、作曲者(Composer)、音楽出版者(Publisher)などの権利者から著作権の管理委託を受けるとともに、海外の著作権管理団体とお互いのレパートリーを管理し合う契約を結んでいます。
JASRACの紹介:一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC

音楽著作権の管理業務

音楽著作権の管理をJASRACに委託しようとする作曲者、作詞者、音楽出版者は、自らが保有する音楽著作権の支分権の全部または一部をJASRACに移転する(信託契約約款3条1項)。
JASRACは、作曲者等から著作権の移転を受けて、自らが著作権を保有し、著作権の対象である著作物(楽曲、歌詞)の利用を希望する者に対して利用許諾を行う。著作物を利用した利用者からは使用料を対価として徴収し、5パーセント - 25パーセントの管理手数料を控除した上で、委託者に分配する。

このように、JASRACの著作権管理は「信託」によるものであり、
作曲者、作詞者、音楽出版者が「委託者」、
JASRACが「受託者」、
音楽の利用者が「受益者」に相当する。

著作物の利用には、著作権の効力が及ぶ利用形態で、喫茶店・レストラン・ダンス教室(1971年より社交ダンス教室、2015年より全てのダンス教室に対象拡大)・歌謡教室(2016年より)・カラオケ(1987年より、1997年からは通信カラオケにも対象拡大)・フィットネスクラブ(2011年より)・カルチャーセンター(2012年より)・音楽教室(2018年より)コンサート会場等における不特定または特定多数向けの音楽の演奏、CD・DVD・映画・オルゴールなどへの音楽の複製、テレビやラジオによる音楽の放送、インターネットによる音楽配信などがある。
 〜
近年はインターネット上で違法に配信されている歌詞や音声ファイルを発見するシステムである「J-MUSE」を2000年10月に導入し、違法配信をするウェブサイトの管理者には個別に警告の電子メールを送付している。
日本音楽著作権協会」:ウィキペディア日本語版

管理手数料

管理するコンテンツによって管理手数料が違うものの、JASRACよりNexToneのほうが、管理手数料を抑えられることがわかる。
事業成長における、もうひとつの要因として、デジタルコンテンツディストリビューション業務、キャスティング事業、その他事業を合わせた楽曲利用促進に関する売上が向上していることにある。
音楽コンテンツの未来を守る著作権エージェント「NexTone」のIPOサマリー
著作権管理手数料比較

株式会社NexTone

株式会社NexTone(ネクストーン、英語: NexTone Inc.)は、楽曲の著作権者と利用者との間に立ち、音楽著作物やコンテンツを管理することだけにとどまらず、デジタルコンテンツディストリビューション業務やキャスティング事業等による楽曲の利用促進や、システム開発、音楽出版社向けサービスを推進する著作権管理団体。本社は東京都渋谷区広尾にある。主な株主は、アミューズ、フェイスなどである。

来歴
・2001年の著作権等管理事業法の施行をうけて、それまで日本音楽著作権協会(JASRAC)が独占していた音楽著作権管理事業に参入した。
・2016年2月1日付で、ジャパン・ライツ・クリアランスと合併し、株式会社イーライセンスから株式会社NexToneに商号変更した。
・2020年3月30日付で、東京証券取引所マザーズに上場した。(コード:7094)
・2021年11月12日、デジタルコンテンツディストリビューション業務において、YouTubeの推奨配信会社パートナーとなる。
・2021年11月18日、NexToneは、
フランスの著作権管理団体である作家作曲家音楽出版社協会(英語版)(SACEM)、
録音複製権管理協会(フランス語版)(SDRM)およびIMPEL Collective Management Limited(IMPEL)
と、NexTone管理作品の日本国外での利用における著作権使用料の徴収に関する徴収代行契約を締結したことを発表した。
NexTone」:ウィキペディア日本語版

著作権等管理事業法

我が国の著作権の管理事業は,60年以上にわたって,「昭和十四年法律第六十七号(著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律)」(仲介業務法)によって,その法的基盤が定められてきましたが,
1.業務実施の許可制により新規参入を制限していること
2.著作物の利用契約の媒介行為など,原権利者の利益が害されるおそれが低い形態までをも,「著作権ニ関スル仲介業務」として規制対象としていたこと
3.適用対象範囲が小説,脚本,楽曲を伴う場合における歌詞及び楽曲に制限されており,現在の著作物等の利用実態に適応していないこと
4.行政庁の裁量権を広範に認める一方で,委託者及び利用者の保護のために必要な業務運営に関する規定が不十分であること
など,IT時代における多様な社会的要請に適合していないという指摘がありました。

本法は,このような社会的要請に応えるため,仲介業務法を廃止し,新たな制度的基盤を確立するもので,
1.新規参入を容易にするため,許可制を登録制に改めること
2.「著作権ニ関スル仲介業務」の考え方を改め,委託者が著作権等を自ら管理している場合に準ずると考えられる形態を規制対象から外し,それ以外の管理形態のみを「著作権等管理事業」として規制対象とすること
3.利用実態の変化に対応して,適用対象範囲を著作権及び著作隣接権の及ぶ全ての分野(著作物一般,実演,レコード,放送,有線放送)に拡大すること
4.委託者及び利用者の保護のために最低限必要と考えられる業務運営に関する規定を設けるとともに,著作物等の使用料が円滑かつ適正に設定されるよう,使用料規程の認可制の廃止に併せて使用料規程に関する協議・裁定制度を整備すること
などを内容としています。
著作権等管理事業法の制定とその背景:文化庁

包括的利用許諾契約

包括的利用許諾契約とは、年間契約を結び一括して楽曲の使用を許可し、代わりに包括料金を受け取る仕組みです。 
YouTubeやTikTokなどは、株式会社NexToneという著作権管理会社と包括契約を結んでおり、原則的に楽曲や歌詞の利用について特別な許諾は必要ありませんが、市販されている音源を利用するなど、原盤権が関係する場合は、原盤権者からの許諾が必要となります。
楽曲の著作権、著作隣接権と包括的利用許諾契約:知財FAQ

Ending(まとめ)

  1. 著作権管理業者=JASRACじゃない
    2001年10月1日に著作権等管理事業法が施行されて、JASRACが独占していた著作権管理事業が自由化されて、参入した事業者が2016年に合併してできたのがNexToneということがわかりました。これは、今回調べるまで全く知りませんでした。
    最近のSNSで音楽を使用する際に、「包括的利用許諾契約」の言葉はよく出てきたので知っていましたが、NexToneが参入してきたことによって一括して利用できるようになったんですね。

  2. 収める管理手数料と管理業務の違い
    今まではJASRACの独壇場だったのですが、NexToneが参入している事によって、録音権等、出版権等、貸与権等、という著作権の管理範囲を委託者が選択できるようになったということですね。
    演奏権等はまだNexToneが参入していないのですが、2022年4月1日よりJASRACが演奏権等の管理区分を細分化されたため、これから参入してくることが予想されますね。

  3. 音楽著作権ビジネスの多様化と発展について
    音楽の著作権を意識したのは、坂本龍一さんが「クリエイティブ・コモンズ」を利用して音楽CDを販売しはじめたことがきっかけでした。
    下記動画は2005年頃ですので、執筆時点から数えて17年前で、よくコピーガードのCD販売されていたりした時期に、著作権フリーとまではいきませんが、著作権を放棄することなく音楽を広く利用する、という新しい概念が生まれたなあと思ってました。現在では動画をアップする際に、このクリエイティブ・コモンズが利用されていますね。
    ここでは書ききれませんでしたので、次回に改めて音楽を利用する、または発信する際の著作権の扱いについてまとめたいと思います。


参考文献:
よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 6th Edition
安藤 和宏(著)
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3121326001/

■ 著者 = so-ta ■ 発行 = 2022年11月1日 ■ 改訂 = 2022年11月11日 ■ Copyright©︎ so-ta


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