【後編】いじめっこが膝から崩れ落ちた



そして、私は小野寺に乳首を掴まれた。


とにかく今までの3人とは違うパターンでいくしかない。

そして、出来れば今まで築き上げた②の顔を捨てたくはなかった。



私は決死の覚悟を決めて一か八か小野寺の乳首を掴み返してこう言った。

私「何してんねん、“普通に”しばくぞ」

超ウルトラライジングサンダーマウンテンゴリゴリラグビー部の小野寺はこんな返しは絶対に予想していなかっただろう。

私はここでも「しばくぞ」の前に“普通に”をつける事によって“喧嘩慣れしてやがる感”ならびに“本気を出せば1番強い感”を演出したのだ。

これは完全に決まった。

小野寺がびっくりした表情をしている。

私はとどめと言わんばかりに小野寺の方を見てニヤリと笑った。

すると






小野寺「しばくぞて誰にぬかしてんのじゃー!」




その言葉が聞こえた瞬間、私は天井の蛍光灯を見ていた。

何が起きたのか分からなかった。

私の席は1番左端の列なのに今私は1番右端の列の机と一体化して天井の蛍光灯を見上げている。


そうです、私は5mぐらい投げ飛ばされたのだ。

何も決まっていなかった。

それどころか、もしかしたら1番間違えた選択をしてしまったのではないか?


何が起きたのかを理解した瞬間、私の視界に小野寺の姿が目に入った。


確実にこちらへ向かって来ている。


あれ?私は殺されるのか?

ここで死ぬのか?


命の危機を感じた私の脳みそは生きる為にフル回転していた。

そして私は生きる為に叫んだ。




私「痛ったー、痛い痛い痛い痛い、ヤバイヤバイヤバイヤバイ、つったつった、肉離れ?肉離れちゃうかこれ?痛い痛い痛い痛いヤバイヤバイヤバイヤバイあー、これは次の試合出られへん、俺が出られへんなったら勝たれへんぞー、監督に怒られるー、監督に怒られるヤツやぞこれは」

私はそう叫びながらワールドカップの時のネイマールばりに転がり回った。


この学校ではどんなにやんちゃで凶悪な人間も部活の監督にはビビり倒している。

理由は

1.監督の印象が悪くなると試合に出れなくなるうえにまともな練習に参加させてもらえず延々と走らされる

2.バリバリに体罰がある

この2つだ!

私は小野寺にサッカー部のエースを怪我させたという“罪悪感”、そして私が怪我をする事により

監督に理由を聞かれる

ラグビー部の小野寺にやられたと告げる

ラグビー部の監督に伝わる

小野寺が体罰を受ける上に練習干される

という“恐怖感”を植え付けたのだ。

私はこの哀しき闘いに終止符を打てる、そう確信した。



すると小野寺がこっちへやって来て私の足を掴んだ。


嘘だろ?これでもダメなのか?

「最善を尽くしましたが、、、御臨終です。」

この言葉は医者が患者の家族に使う言葉だと思っていた。まさかセルフで使う事になるとは、、、

そんな事を考えていると小野寺は私の膝を持って足を上げ、爪先を私の方へ押し込む、いわゆる足がつった人にするストレッチをしてきて、こう言った。




小野寺「ほんまごめん、ほんまごめん、大丈夫か?」






勝った、、、

ダメージ的には私は5m投げ飛ばされ、相手は無傷。

格闘技の試合の判定なら確実に私の負けである。

しかし、私はどんなやり方であれ、あの超ウルトラライジングサンダーゴリゴリラグビー部の小野寺を謝らせたのだ。

そして、この哀しき闘いに終止符を打ったのだ。

これは勝利だ!

値千金の勝利だ!

はっきりと言う!

私はサッカー部のエースどころかレギュラーでもない。

バリバリの補欠だ!

嘘とハッタリで勝利したのだ。

もしかしたらこの時に潜在的に嘘とハッタリが使える職業につこうと思い、芸人にたどり着いたのかもしれない。

命の危機から脱して値千金の勝利を掴み、自身に満ち溢れていた私はさらなる追撃をかました。



私「いや、別にええけど。“試合さえ出れたら”」



小野寺「ほんまごめん、ほんまごめん」







その日から小野寺は私に何もしてこないどころか、下手に出てへこへこしてくるようになった。

私は最強の右腕を手に入れたのだ。

ガハハハハ





次回

【小野寺暴走編】

絶対に見てくれよな💕
















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