腸内細菌は、母親からのプレゼント
私たちは朝・昼・晩に食事をすることで、生きていくための栄養を摂取します。
簡単に言うと、小腸で栄養を、大腸で水分を吸収します。そして、不要なものをうんちとして肛門から排泄します。
ここでよーく考えてみてください。
口→胃→小腸→大腸→肛門は一本の管になっていて、実は外界とつながっています。言い換えると、管の中は外なのです。
ということは、身体の中に取り込む本当の入口は「口」ではなく、「腸」だということがおわかりいただけるかと思います。
腸はものすごく優れたセンサーを備えていて、食べたものが身体に必要か、そうでないかをジャッジし、必要なもののみを身体の中に取り入れているのです。
もし食べ物と一緒に病原菌やウィルスなどが入り込んできた場合は、腸の中にいる免疫細胞と腸内細菌ががっちりガードして、菌の侵入を防いでくれます。
ちなみに、腸の内壁の表面は粘液でおおわれており、そこには1000種類以上の腸内細菌が合計100兆個以上も棲みついています。常在菌と呼ばれる彼らこそが、私たちの身体を外敵から守ってくれているボディガードなのです。
このボディガードたちは、どこからやってきて、どのように定着したのか気になりませんか?
筋トレして身につけたわけでもないし、特殊なサプリで補ったわけでもありません。
そこで、腸内環境に詳しい横浜市立大学大学院医学研究科主任教授の中島淳先生にお話をお聞きしてました。
まずは、母親の子宮の中にいたときまで遡ることが必要です。
なぜかというと、赤ちゃんの腸内細菌に大きな影響を与えるのは母親だからです。それどころか、多くの研究により、母親と赤ちゃんは同じ腸内細菌をもっていることがわかったのです。
赤ちゃんは子宮の中にいるときはほぼ無菌状態ですが、出産で産道をとおるときに母親の細菌をもらうと言われています。ここが細菌との最初の出会いです。
その後、母親と触れ合うことで常在菌をもらいます。また、母乳を飲むことで善玉菌の1つであるビフィズス菌が勢いよく増えます。他にも離乳食や家庭環境などから、天文学的な数の細菌が赤ちゃんにアプローチします。
とはいえ、何でもかんでも受け入れるわけではなく、腸の粘膜によってセレクトされます。腸内細菌のセレクトの仕方は遺伝によって決まるので、ここでも親の影響を受けることになります。
まとめると、赤ちゃんが最初に出会う細菌と、それを受け取る粘膜、いずれも母親からの大事なプレゼントです。ですから、赤ちゃんを産む前の母親の腸内環境がとても重要で、もし母親の腸内環境が悪いと、それが赤ちゃんにも受け継がれてしまう可能性があるのです!
また、腸内細菌は、腸疾患や肥満、ストレスだけでなく、自閉症や認知症、アルツハイマー病などとの関係性についても研究が進められているほど、その可能性と影響力に注目が集まっています。
腸内環境の良し悪しは、人生を左右するほど重要と言っても過言ではありません。
今、自分のうんちを思い出しながら心配になった方もいると思いますが、現状の腸内環境が悪くてもあきらめる必要はありません。食事や運動、睡眠などを改善することで、腸内環境はよくなります。
そして、腸内環境の状態を分かりやすく知らせてくれるのが、うんちです。まずは、いいうんちを目指して、できることから取り組んでみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?