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大震災後、あなたのトイレは使えなくなる

1995年1月17日は阪神淡路大震災、2011年3月11日は東日本大震災がありました。

先日、神戸市役所に勤めている方から聞いたのですが、役所で震災当時を知る人はかなり少なくなったということです。それもそのはず、阪神淡路大震災が起きてから23年もの月日が経ちます。震災当時、40代で現場を指揮されていた方々は、もう定年を迎えているわけですから。

とはいえ、私たちには被災者の経験に学び、つぎに活かすことが必要です。

そこで、今回は水洗トイレについて。

私たちが日々、当たり前のように使っている水洗トイレは、給水、電気、排水という設備や施設が機能してこそ成り立つシステムなのです。

そのため、地震でどれか一つでもダメージを受けると、ほとんどの水洗トイレは使えなくなり、ただの器になってしまいます。

阪神淡路大震災のときは、兵庫県内の90%以上にあたる125万世帯で断水し、水洗トイレが使用できなくなりました。このとき「トイレパニック」という言葉が生まれたほど、トイレは大変なことになりました。

災害時は、過度なストレスで体調を崩し、下痢やおう吐する人もいます。そうならなかったとしても、一般的に2~3時間ごとに1回はトイレに行きたくなるものです。調査の結果「地震発生後、6時間以内にトイレに行きたくなった人」が73%というデータもあります。

避難所等において、水が出ない、もしくは排水管の損傷で流せないトイレは、あっという間に、うんちやおしっこで満杯になってしまいます。

うんちやおしっこで満杯になったトイレは、とても不快だけでなく、このような状態は私たちの健康に深刻な被害を及ぼします。


不便なトイレが引き起こす2つの問題

主なものを2つ説明します。

1つ目は、エコノミークラス症候群などの命にかかわる病気を誘発する可能性があることです。

トイレが不便というのは、例えば、屋外の仮設トイレは怖い、トイレまで遠い、寒い、臭い、男女に分かれていない、段差がある、トイレ待ちの人が長蛇の列になっている、などなどです。

そうすると、意識的にも無意識的にも水を飲むことを控えがちになってしまいます。理由は簡単です。飲まなきゃトイレに行く回数を減らせるからです。

その、水を飲むことを控えてしまう行為が命取りになります。

私たちの体は、水分を摂らないと体調を崩しやすくなります。血圧は上がるし、脱水症も心配されます。エコノミークラス症候群、心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性肺炎で命を落とすことにもつながります。

2つ目は、感染症です。うんちには感染性胃腸炎等を引き起こす病原体が含まれています。停電で換気できない、掃除する水がない、手を洗う水がない、という状況で、うんちが山盛りのトイレは、まさに感染症の温床となってしまいます。

夜間は、真っ暗のなかでトイレを使わざるを得ないので、普段より汚れてしまうと思います。体が弱っているところに、このようなトイレ環境では、感染症が蔓延するリスクが高まります。

つまり、トイレ問題は、一人ひとりの健康と集団での衛生に関わる問題なのです。

震災関連死にもつながる深刻な問題として捉えるべきです。

繰り返しになりますが、大きな地震のときは、水洗トイレが使えなくなります

そのとき、トイレ対応は真っ先に行うべきです。

あれこれしている間に、誰かがトイレに行ってしまいます。

ここで、東日本大震災のときに岩手県釜石市白山小学校で避難所世話人をされた方からのメッセージを紹介します。

地震が起きたとき、真っ先に行うのは安全の確保と安否確認。避難所に行けば、場所の確保、つぎに食べものが心配になる。トイレのことは、そのあとぐらいに気になるのだけど、それでは遅い。トイレは命にかかわる。出来るだけ早く対応しなければならない。

トイレの備えがなければ、食事も生活も成り立たない、と肝に銘じてください。トイレ問題は命と尊厳にかかわります。


災害時のトイレに関するガイドライン

過去の震災の教訓をもとに、少しずつではありますが、日本のトイレ対策が動き始めています。

まず、内閣府(防災担当)は「避難所におけるトイレの確保・管理のガイドライン」を作成しました。避難所におけるトイレ対策の考え方を整理した初めてのガイドラインです。ここには、必要なトイレの数や、備えておくべきもの、災害時に水洗トイレが使えなくなった時に使用できる「災害用トイレ」などが紹介されています。

これ以外にも、国土交通省の下水道部は「マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン」を作成し、災害時においても安心して使用できるトイレ環境づくりを目指して、マンホールトイレの整備に取り組んでいます。

個人で出来るトイレの備え方やマンホールトイレがどのようなものなのかは、次回以降に紹介します。


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